季節がめぐる中で 39
誠もすでに保安隊に来て四ヶ月、作戦開始時には状況の把握を優先するだけの余裕ができていた。
『近くにデブリは無し。機影も無し。決闘のつもりか?』
アイシャ機が後ろにいる以外、レーダーもセンサーにも反応は無かった。
「油断しちゃ駄目よ!05式のステルス性能は天下一品だから。おそらく索敵範囲ぎりぎりに……!」
そう言った瞬間、長距離レールガンの狙撃でアイシャの機体の右腕が吹き飛んでいた。
「嘘だろ!レーダー……!」
誠はようやく気付いた。ランはレーダーやセンサーなどあてにはしていない。法術師の干渉空間展開能力をフルに活動させ空間に干渉を開始、同時にこちらの精神反応を確認してマニュアルで望遠射撃をしてきている。
「ならこちらも!」
誠も感覚を集中させる。展開する干渉空間。
「ビンゴ!アイシャさん!感覚データそちらに送ります!」
そう言うとそのまま誠は異質な干渉空間の発生源へと進撃した。
「片手が無くても支援ぐらいはできるわよ」
そう言いながら誠に付き従うアイシャの目は笑っている。シャムにロックオンされた時のような痛みにも似た感覚が、誠があたりをつけた宙域から感じられた。
『感覚を掴むんだよ、理屈じゃあ説明できないから』
いつも模擬戦が終わった後、一方的に誠の虐殺ショーを展開したシャムの言葉が誠の心に響く。閃光、そして弾道。すべてが誠の思い通りに進むかに見えた。もうレーダーもランの機体を確認している。オートでロックオンすることも可能だが、ランは動かない。
そして有視界。ランの機体はレールガンを背中に背負い、サーベルを抜く格好をしていた。
「切削空間反応!飛ぶつもりよ!」
アイシャの声が響く。銀色の壁がランの機体を隠した。だが、誠は動じることなくレールガンを構えたままランの機体へ突入する。
「そして上!」
銀色の壁の直前で誠は機体に急制動をかけるとレールガンの銃口を真上に向けた。壁、切削空間は消え、誠の撃ったレールガンの先に切削空間を展開するランの機体が現れる。
「アイシャさん!」
誠の叫びを聞いて、残った左腕のレーザーキャノンを発射するアイシャ機。しかし、誠の弾は切削空間に飲み込まれ、アイシャの攻撃はすべて紙一重でかわされた。
「全弾回避?」
そう誠がつぶやいた時、今度は誠の真下に銀色の平面が現れ、伸びたサーベルが誠機の左足を切り落とした。




