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季節がめぐる中で 31

「マジかよ……」 

 要はそう言いながら一人、肉に箸を伸ばさない。

「嘘ついてどうするの?」 

 それだけ言うと明華は牛タンを口に放り込む。誠は要を見つめた。ようやく肉に箸を伸ばすが、どこかしら躊躇しているところがある。

「迷い箸は縁起が悪いな」 

 そう言う嵯峨は彼女が取ろうとした肉を奪って七輪に乗せる。

「でも、本当においしいわよ。要ちゃんも早く食べないと!」 

 そう言って肉をひっくり返すリアナ。

「そう言えば許大佐はクバルカ中佐とは旧知ということですが……」 

 カウラが水を向けると、肉をかみ締めていた明華が微笑みながら箸を置く。

「まあね、あの娘には何度か煮え湯を飲まされたこともあるから。遼南内戦の央都攻防戦の頃からの付き合いだから、もう十四年の付き合いってことになるわね」 

「え?十四年って……許大佐はさんじゅっ……」 

 誠が口を開いたとたんに腹部に要の拳がめり込んだ。それを見て明華は要に親指を立てて見せる。

「おい、誠よ。女性に年の話をするんじゃねえよ」 

 嵯峨はむせる誠に冷ややかな視線を向ける。

「でも殴ることは……」 

「昔から言うじゃねえか、愛ゆえに殴るって」 

 得意げな要のタレ目が腹を押さえて前かがみの誠の目の中に映る。

「愛?」 

 嬉しそうにリアナが要を見つめた。そしてカウラが皿から七輪に移そうとした肉を取り落とす。

「誤解だ!こいつのことなんて何にも思ってねえからな!」 

 顔を真っ赤にして手を振る要を、生暖かい視線で見つめるリアナ。その時、隊長室の扉が開いた。

「失礼します!」 

 そう言って入ってきたのはアイシャと仲間達。運用艦『高雄』の管制官、パーラ・ラビロフ中尉と副長就任で正操舵長に出世したエダ・ラクール少尉の二人と、なぜか居る技術部火器整備担当のキム・ジュンヒ少尉の三人が皿と箸を持って入ってきた。

「なんであんた等が来るのよ?」 

 肉をかみ締めながらあからさまに嫌な顔をする明華。

「ああ、キムは俺が呼んだ。どうだい?やっぱりファクトリーロードのカートリッジは相性悪りいか?」 

 嵯峨は立ち上がると、執務机の後ろから七輪を取り出す。炭は十分におきている。

「まあ何社か試したんですが、胡州造兵工廠のが最適ですかね」 

 そう言うとまっすぐ歩いてきたキムは手馴れた調子で七輪の上に次々と肉をのせていく。

「今度は誰の拳銃、見繕ってるんだ?」 

 明らかにごまかそうとしている要にリアナが相変わらず生暖かい視線を送っているが、嵯峨は机の上から一丁の拳銃を取り上げた。

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