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季節がめぐる中で 27

「おい、シャム。嫌いって聞くか?普通……」 

 要が引きつった笑顔のままじりじりとシャムに迫る。だが、要の手がシャムに届くことは無かった。顔面めざし突き出されたグレゴリウスの一撃が、要を後方五メートル先に吹き飛ばす。

「西園寺さん!」 

 さすがに誠も飛ばされた要の下に駆け寄った。

「ふっ、いい度胸だ」 

 そう言って口元から流れる血を拭う要。

「あのー、そんな格闘漫画みたいなことしなくても良いんじゃないの?」 

 呆れたようにアイシャがつぶやく。立ち上がった要の前では、ファイティングポーズのシャムがグレゴリウスと一緒に立っている。

「ふっ。運が良かったな。神前!行くぞ」 

 そう言うと要はそのまま隊舎を目指す。

「珍しいじゃないか、西園寺がやられるだけなんて」 

 ニヤつきながらエメラルドグリーンの髪を手でかき上げるカウラ。

「アタシもあいつと違って餓鬼じゃねえからな」 

「私が止めなきゃそのまま第二ラウンドまでやってたんじゃないの?」 

 要はアイシャの言葉をごまかすように口笛を吹く。そんな彼らの前に金属バットやバールで武装した整備班の面々が顔を出した。

「お帰りなさい!」 

 そこにレベッカの声が響いた時、再び要の顔が明らかに不機嫌そうになり、誠は一歩遅れて歩くことにした。レベッカ・シンプソン中尉。アメリカ海軍から出向してきている技術将校である。今では本来の整備班長の島田正人准尉が第四小隊の担当としてベルルカン大陸に派遣されている為に彼の変わりに整備班長の代理を務めていた。

「なんだか今日は会いたくねえ奴ばかりに会うな」 

 そう言ってレベッカの隣をすり抜けようとする要。しかし、レベッカはその明らかに邪魔な大きさの胸を見せ付けるようにして手に持ったかごを要に差し出した。明らかにそれを見て青筋を立てている要に冷や汗を流す誠とアイシャだが、レベッカはまるで要の表情には気にかけていないというようにそこから卵を一つ取り出した。

「シャムさんが連れてきた遼央地鶏の茹で卵ですよ。食べませんか?」 

 そこですぐさま誠とアイシャはレベッカからかごを奪い取って卵を手に取る。

「ああ、私大好物なの!卵。はあ……」 

「僕も大好物で……もう殻ごと塩もかけずに食べちゃうくらい!」 

 とりあえずレベッカの間に二人で入って要が切れないようにする。 

「ああ、そうですねお塩が無いと。取ってきますね!」 

 そう言うとレベッカは整備班の控え室に消えていった。

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