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季節がめぐる中で 26

 マリアは要と熊を見比べていた。軍用義体のナノマシンの修復機能で、要の噛まれた腕から流れていた血はもう止まっている。

「なるほど、賢そうな熊だな。ちゃんと噛むべき奴を噛んでいる」 

「姐御!そいつは無いでしょ?まるでアタシが噛まれるのが当然みたいに……」 

 泣き言を言い出す要に微笑みかけるマリア。

「捕獲成功だ、各自持ち場に戻れ」 

 そう言うと重武装の警備部隊員は愚痴をこぼしながら本部に向かって歩き始める。

「こいつが熊太郎の子供か?」 

 マリアが笑顔でシャムに尋ねる。

「そうだよ、名前はねえ『グレゴリウス13世』って言うの」 

 熊の頭を撫でるマリアにシャムは嬉しそうに答えた。

「おい、そのローマ法王みたいな名前誰が付けたんだ?」 

 手ぬぐいで止血をしながら要が尋ねる。

「隊長!」 

 元気良く答えるシャムにカウラとマリアが頭を抱える。

「グレゴリウス君か。じゃあ女の子だね!」 

「アイシャさん。それはおかしくないですか?どう見ても男性の名前なんですけど……」 

 突っ込みを入れる誠に笑いかけるアイシャ。

「やっぱり誠ちゃんはまだまだね。この子の母親の名前は『熊太郎』よ。命名したのも同じ隊長。つまり隊長は……」 

「違うよアイシャ。この子は男の子」 

 シャムはそう言ってグレゴリウス13世の首を撫でてやる。嬉しそうにグレゴリウス13世は甘えた声を上げながら目を細めている。

「でもまあ、なんで連れて来たんだ?」 

 カウラの声にシャムの目に涙が浮かぶ。

「この子のお母さんの熊太郎ね、大怪我しちゃったの。今年は雪解けが早かったから、冬眠から覚めたらなだれにあったみたいで自然保護官に助けられてリハビリしてるの。そのお見舞いに行ったらこの子を頼むって熊太郎が言うからそれで……」 

 シャムはそう言うと泣き出した。ぼんやりとその場にいた面々は顔を見合わせる。

「オメエ熊と話せるのか?」 

 血を拭い終わった要がシャムに尋ねた。

「お話はできないけど、どうして欲しいかはわかるよ。グレゴリウス。この人嫌いだよね」 

「ワウー!」 

 シャムの言葉に合わせるようにうなり声を上げるグレゴリウス13世。

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