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季節がめぐる中で 25

 要が腰の愛銃スプリングフィールドXD−40に手を伸ばす。

「止めとけ!怪我させたらシャムが泣くぞ」 

 カウラのその言葉に、アイシャを押しのけようとした手を止める要。車と同じくらいの巨大な物体が動いた。誠は目を凝らす。

「ウーウー」 

 顔がこちらに向く。それは巨大な熊だった。

「コンロンオオヒグマか?面倒なもの持込みやがって」 

 要はそう言うと銃を手にしたままヒグマを見つめた。ヒグマは自分が邪魔になっているのがわかったのか、のそのそと起き上がるとそのまま隣の空いていたところに移動してそのまま座り込む。

「アイシャ、シャムを呼べ。要はこのまま待機だ」 

 カウラの言葉に二人は頷く。熊は車中の一人ひとりを眺めながら、くりくりとした瞳を輝かせている。

「舐めてんじゃねえのか?」 

 そう言って銃を握り締める要。アイシャは携帯を取り出している。 

「駄目だよ!撃っちゃ!」 

 彼らの前に駆け込んできたのはナンバルゲニア・シャムラード中尉だった。いつもどおり東和陸軍と同じ規格の勤務服を着ているので隊員と分かるような小さな手を広げてシャムはそのまま車と熊の間に立つ。

「おい!テメエ何考えてんだ?部隊にペットを持ち込むのは厳禁だろ?」 

 要の言葉にシャムは少し悲しいような顔をすると熊の方に近づいていく。熊はわかっているのか、甘えるような声を出すと、シャムの手をぺろぺろと舐め始めた。

「シャムちゃん、降りて大丈夫かな?」 

「大丈夫だよ!アイシャもすぐに友達になれるから!」 

 そう言うと嬉しそうに扉を開けて助手席から降りるアイシャを見つめていた。

「一応、猛獣だぞ。ちゃんと警備部の連中に謝っておけ」 

 カウラはそう言うと熊に手を差し伸べた。熊はカウラの顔を一瞥した後、伸ばした手をぺろぺろと舐める。

「脅かしやがって。誠も撫でてや……」 

 車から降りて熊に手を伸ばした要だが、その手に熊が噛み付いた。

「んーだ!コラッ!ぶっ殺されてえのか!この馬鹿が!」 

 手を引き抜くとすぐさま銃を熊に向ける要。

「駄目だよ苛めちゃ!」 

 シャムが驚いたようにその前に立ちはだかる。

「苛めたのはそっちじゃねえか!どけ!蜂の巣にしてやる!」 

「要!何をしているんだ!」 

 銃を持ってアイシャに羽交い絞めにされている要に声をかけたのは、警備部部長、マリア・シュバーキナ少佐だった。

「姐御!コイツ!噛みやがった!」 

 アイシャの腕を力任せに引き剥がす要を、マリアについて来た警備部員と技術部の面々が取り押さえた。

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