季節がめぐる中で 24
そのまま戦闘機のエンジンを製造している建物を抜けて、見慣れた保安隊の壁に沿って車は進む。だが、ゲートの前には完全武装した警備部の面々が立っていた。
「どうしたんだ?」
「ベルガー大尉!実は……」
スキンヘッドの男が青い目をこすりながら車内を覗き込んだ。
「ニコノフ曹長。事件ですか?」
誠を見て少し安心したようにニコノフは大きく息をした。
「それがいなくなりまして……」
歯切れの悪い調子で話を切り出そうとするニコノフに切れた要がアイシャの座る助手席を蹴り上げる。
「わかったわよ!降りればいいんでしょ?」
そう言って扉を開き降り立つアイシャ。ニコノフの後ろから出てきたGIカットの軍曹が彼女に敬礼する。
「いなくなったって何がいなくなったのよ。ライフル持って警備部の面々が走り回るような事件なの?」
いらだたしげにそう言うアイシャに頭を掻くニコノフ。
「それが、ナンバルゲニア中尉の『お友達』らしいんで……」
その言葉を聞いて、車を降りようとした要はそのまま誠の隣に座りなおした。
「アイシャも乗れよ。車に乗ってれば大丈夫だ」
要の言葉に引かれるようにしてアイシャも車に乗り込む。開いたゲートを抜けてカウラは徐行したまま敷地に車を乗り入れる。辺りを徘徊している警備部の面々は完全武装しており、その後ろにはバットやバールを持った技術部の隊員が続いて走り回っている。
「シャムさんのお友達?」
誠はそう言うと要の顔を見つめた。
「どうせ遼南の猛獣かなんか連れてきたんだろ?先週まで遼南に出張してたからな」
要の言葉に頷くアイシャ。
「猛獣?」
誠はあの動物大好きなシャムの顔を思い出した。
「部隊には吉田に言われて黙ってたんだろ?あの馬鹿はこう言う騒動になることも計算のうちだろうからな」
投げやりにそう言った要は、突然ブレーキをかけたカウラをにらみつけた。
「なんだ?あれは」
カウラはそう言って駐車場の方を指差した。そこには茶色の巨大な塊が置いてあった。




