季節がめぐる中で 169
「嵯峨少佐、部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
カウラの言葉にあからさまに誠に向けていた敵意をほぐす楓。そしてその手は当然のようにカウラの胸に向かった。
「あの……」
「大丈夫、自信を持って……」
そう言うと静かに平らなカウラの胸をさする楓。それを見ている誠は次第に顔が赤くなるのを感じていた。
「うん、ベルガー大尉。飾らない胸も素敵だよ」
楓はそう言うと笑みを浮かべて部屋に入っていく。そう言われたカウラはほうけたような顔で誠を見つめた。いつもの緊張感で支えられているような鋭い視線はそのエメラルドグリーンの瞳にはもはやなかった。
「神前……」
「大丈夫ですか?」
誠の声にすぐに自分を取り戻したカウラは東和軍教導隊から運ばれてきたばかりの執務机に向かった。誠も隣の自分の席に向かう。そして机の上に花が置いてあるのを見つけた。
「これは誰ですか?」
そう言った誠の視界の隅でそっと手を上げるのはアンだった。誠の背筋に寒いものが走る。
「神前曹長。人の好意は受けておくものだな」
楓の言葉に仕方なくぎこちない笑みを浮かべる誠。そんな彼が入り口で中の様子を伺っている要を見つけた。
「西園寺!とっとと席に着け!」
カウラの言葉に仕方なく部屋に入った要は、楓の方をびくびくしながらうかがった。楓はまじめに通信端末の設定をしており、安心したように要は自分の席に座る。
「ああ、お姉さまの机の設定は僕がしておきましたから!」
そんな楓の一言に要はあわててモニターを開いた。大写しされる楓の凛々しい新撰組のような段だら袴に剣を振るう姿。
「楓様素敵です!」
思わず叫ぶ渡辺。ただ黙って感心する吉田とカウラ。
「ちょっとこれは……」
誠がそうつぶやくと再び楓の鋭い視線が誠に向けられる。
「わかったよ!これを使えばいいんだろ!」
そう言ってそのまま自分用にモニターの仕様を変更する要。楓はその姿を確認すると笑みを浮かべながら自分の作業を続けた。
「誠ちゃん!今度のコミケのネームなんだけど!」
大声を張り上げて入ってくるアイシャ。誠にとってこのときほど彼女の存在がいとしいと思える瞬間はなかった。




