季節がめぐる中で 161
「グレゴリウス!だめだよ……ああ、なんだ誠ちゃんか。ならいいや」
誠の体に乗っかって生ぬるい息を吐くのはシャムの愛熊グレゴリウス13世だった。明らかに相手が誠と知って安心しているシャムを恨めしそうに見ながら誠は頭をさする。
「痛い?」
「痛いに決まってるじゃないですか!」
よろよろと立ち上がる誠。ぶつけた額を触ってみるが特に血が出ているようなことは無かった。
「シャムさん。グレゴリウスはつなげって隊長に言われませんでした?」
誠は目の前で小山のようにも見える熊グレゴリウス13世の頭をなでているシャムを恨みがましい目で見つめた。
「だってこの子はちゃんと攻撃するべき相手を選んでるから。ほらね、今回も誠ちゃんは怪我してないし」
あっけらかんと答えるシャムに誠は何も言葉が無かった。
「そこで静かにしていてくださいよ!」
そう念を押しながら誠は公用車管理の担当者が詰めている小屋に向かった。
「ああ、誰もいないよ。警備部はお休みを取ってるから」
誠はそんなシャムの言葉に肩を落とす。そして誰もいない小屋の中の鍵もかかっていない公用車のキーを集めたボックスからライトバンのキーを取り出す。
「大丈夫なんですか?盗まれたりしても知りませんよ」
「大丈夫だよ。グレゴリウスがちゃんと見張ってるもんね!」
見詰め合うシャムとグレゴリウス13世を無視して誠はダークグリーンのライトバンのドアを開ける。
「それじゃあ行ってきますね」
じっと誠の車を眺めているシャム達を置いて車を出す誠。そのまま閑散としたゲートをくぐって菱川の工場に車を出す。次々と流れていく巨大なトレーラーの群れ。それを縫うようにして車を走らせる。
まだ10時を過ぎたところと言う微妙な時間帯。営業車が一斉に出かけるのか工場の正門にはそれなりの車の列ができていた。誠はとりあえずそのまま産業道路と呼ばれる工業地帯に向かう営業車とは反対側にハンドルを切り、豊川の駅に車を走らせた。
豊川市は同盟成立以降の好景気の影響による再開発が始まったばかりで工事中の看板が目立つ。誠はいつものカウラの運転を思い出し、裏路地を通って駅へと向かう。
気分は悪くは無かった。とりあえず待機ばかりの部隊にいるよりは外で車を走らせているほうが仕事をしているような気分になるのが心地よかった。南口は大きな百貨店が軒を並べる北口とは違って駐車場や工事中の看板が目立つ再開発が進行中の地区。今日もクレーンを搬送するトレーラーに十分近く行く手をふさがれて、どうにか南口ロータリーに車を止めて周りを見回した。
すぐに二人の女性士官の姿を見つけることができた。相手も誠の保安隊の制服が目に付いたらしくゆっくりと誠に向かって歩いてくる。




