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季節がめぐる中で 15

「そう言えば、挨拶行かないの?」 

 機体を降りた誠の前で、さんざん要にプロレス技をかけられていたアイシャが、屈伸をしながらカウラの顔を見上げる。

「そうだな。久しぶりだから顔を見せておくのもいいかも知れないな」 

 そう言いながらエメラルドグリーンのポニーテールを秋の風になびかせるカウラ。だが、一人眉をひそめているのが要だった。

「おい、あの餓鬼のところに行くのかよ?」 

「餓鬼って……?」 

 ヘルメットを脱いで小脇に抱えながら、話題についていけずに呆然としていた誠が尋ねた。

「お前なあ。一応元東和のパイロットだろ?東和のエースと言えば……って戦争と無縁な軍隊じゃあしゃあねえか」 

 そう言うと要は頭を掻いた。それが数年前まで続いていた隣国遼南の動乱をさしていることは誠にも分かった。

 遼南内戦。大国の利権が入り乱れたその戦いの中、遼州の盟主を自認する東和は遼南北部の飛行禁止空域を設定した。そしてそれがただの脅しではないと宣言するように違反機を数機撃墜した記録もあった。だがそれ以外には東和軍の実戦の経験は零に等しいことを誠も知っていた。

「クバルカ・ラン中佐と言ってな。私達が保安隊に配属になる前に教導官として担当してもらった東和軍のエースだ……まあエースと言うのは遼南内戦で共和軍に属していた為に亡命を余儀なくされた方だからな。実際に隊長やシャムとはぶつかっているそうだからそれなりの腕だということになっている」 

 そう言うカウラの顔は、しかめっ面の要に比べて嬉しそうに誠には見えた。

「ありゃサド餓鬼だよ」 

 要はそう言うとタバコに火をつける。

「あの人には要ちゃんはいじられたからねえ。今でも恨んでるの?」 

 首をぐるぐると回して、要にかけられた関節技の痛みを散らしながらアイシャがにやけた顔を要に向ける。

「あの餓鬼、いつか……」 

「おう、元気そうじゃねーか!」 

 急にかけられた少女の声に誠が振り向いた。シャムより小柄で、身長は130センチあるかどうかと言う少女がそこに立っていた。

「あのー……」 

「オメーか、神前誠って言うへたくそパイロットは?」 

 急に偉そうな子供が現れたので誠は戸惑っていた。周りを見ると、アイシャとカウラが直立不動の姿勢で敬礼をしている。要でさえ、タバコを携帯灰皿でもみ消して、とってつけたように敬礼をした。

「そう硬くなるなよ。明石中佐の前じゃあもう少し楽にしているんだろ?」 

 余裕のある態度で少女は声をかける。三人の上司達が敬礼をする様を慌ててみながら、誠もようやく敬礼しながら少女の階級章を見た。

 少女の襟章に中佐の二つの星を見つけて、思わず誠は飛びのくようにして敬礼をした。

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