季節がめぐる中で 131
「むー……」
「どうしたんだ?要。くしゃみでも出るのか?」
誠の05式はすでにすべての射出準備を終え、モニターで先発を切るカウラと後詰の要の二人の顔がモニターに浮かんでいる状態だった。
「噂話でもしてるのかねえ。ったくどこの馬鹿だ」
サイボーグ用の特殊なゴーグルのついたヘルメットの下で閉じた口と鼻を動かす要。笑みを浮かべながらそんな要をからかうカウラ。
『投下予定ポイントまで一分!』
菰田の叫び声と共に輸送機は大きく傾いた。
「このまま対空射撃でどかんは勘弁してくれよ」
ようやく落ち着いた要の口元にいつも戦線に立つ彼女特有の薄ら笑いが口元に浮かんでいるのが見える。誠は何度も操縦棹を握りなおした。手袋の中は汗で蒸れている。気が変わり右手で腰の拳銃に手をやる。
「落ち着けよ少しは」
そう言って笑う要に誠もただ苦笑する。
『レーダーに反応!9時の方向より飛行物体3!信号は東和陸軍です!』
パーラの鋭い声。誠のモニターに今度はパイロットのヘルメット姿のランが映った。
『どこの機体だろうがオメー等は落させねえよ!予定通り侵攻しろ!』
ランの言葉に合わせるようにして輸送機が再び大きく傾く。
『ハッチ開きます!』
それまで三体のアサルト・モジュールを眺めていた整備班員が次々に隣の加圧区画に消えていく。
『カウント!テン!ナイン!エイト!……』
パーラのカウントが始まるとカウラのヘルメットの中の顔が緊張して引き締まって見える。誠はその姿に目を奪われた。
『射出!』
『一号機!カウラ・ベルガー、出る!』
誠の機体が一号機のロックが外れた反動で大きく揺れる。そして一号機をロックしていた機器が移動して誠の機体が射出ブロックに押し込まれる。誠は自分の05式乙型が装備している長い非破壊広域制圧砲を眺めた。
『大丈夫だって。そいつを入れての飛行制御システムは完璧なんだ。自信を持てよ』
そんな要の言葉を背に受けた誠は黙って操縦棹を握りなおした。
『カウント!テン!……』
『私は信じているから』
パーラのカウントの声にかぶせるようにアイシャの一言が聞こえた。誠は呼吸が早くなるのを感じる。手のひらだけでなく背中にも汗が染みてきていた。
『ゼロ!』
「神前誠!出ます!」
パーラのカウントに合わせて誠が叫ぶ。
がくんと何かが外れるような音がした後、レールをすべるようにして05式乙型は輸送機から空中へと放り出された。シートに固定されていた体に浮遊感のような感覚が走った後、すぐさま重力がのしかかる。誠はそのまま機体の平行を保ちつつ、予定ルートへと反重力エンジンを吹かす。要の言ったとおり、長くて重い法術兵器を抱えていると言うのに誠の乙式はいつもと同じようなバランスで降下していくカウラ機のルートをなぞって誠の機体は高度を落して行った。




