季節がめぐる中で 13
「干渉空間展開率30……40……50……」
小さなウィンドウに記された演習場の地図が次第に赤く染まる。目の前を見ると、干渉済みの空間がゆらゆらと陽炎のように誠の目に見えた。
「法術エネルギーブースト開始。最終安全装置の解除を確認」
そう言うと誠は火器管制モードになった画面を見つめる。さすがにこの状況ではふざけるつもりが無いようで、足元で観測機器をいじっている西を要達三人は黙ってみているようだった。
「周囲に識別反応無し!発射よろし!」
ヨハンの指示が下される。誠はトリガーに指をかけた。
「発射!」
誠がトリガーを引いた。薄い桃色の光線が揺らめく干渉空間を飲み込む。反動や爆風が起こることも無く、目の前が桃色の光で満たされた。その光景が見えたのは一秒にも満たない瞬間だろう。
戻った視界の中に見えるのは発砲前とまるで変わらない演習場の景色だった。
「なんだよ。こりゃ?」
はじめに口を開いたのは要だった。誠も、干渉空間を解除する脱力感の中で非常に手ごたえのなさを感じていた。
「これはですねえ、広域犯罪やテロなどの非常事態に被疑者の意識を奪うことで事件解決の……」
「んなことはわかってんだよ!だけどなんだ?こんなでかくて強そうな武器だっつうのに、なあ!」
まじめに説明しようとする西を押さえつけて要が話題をアイシャに振った。
「確かに。カタルシスと言うものが無いわね」
そう言って頷く紺色のロングヘアーをかきあげるアイシャ。
「貴様等何がしたくて軍に入ったんだ?」
呆れ顔のカウラ。
一方、観測機器のデータをスタッフに収集させているヨハンはそれどころではないようで、モニターには渋い表情とその二重顎が映っている。誠は砲の安全装置を設定し、軽く伸びをした。
確かに四十キロ四方に干渉空間を展開し、その内部に法術系攻撃をかけると言う内容を聞けば恐ろしく疲れそうな武器と思っていたが、意識ははっきりしているし、前もって聞かされていた予想に比べれば疲労度はたいしたことではなかった。




