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季節がめぐる中で 11

「神前曹長!安全装置解除の指示が出ました!」 

 誠の05式の足元の観測装置をいじっていた西の顔がモニターに広がる。

「了解!第一安全装置解除。続いてエネルギー接続段階一、開始」 

 次第に鼓動が高鳴るのを感じながら、誠はいつものシミュレータの時のように思った通りに動く自分の手を感心しながら見つめていた。

『これが昨日の投球でできたらなあ』 

 そんな雑念が頭をよぎる。考えてみれば試合途中で抜けてきたので、結果がどうなったのか知らない自分に気付いて苦笑した。

「法力チャージに入ります!」 

 西の声で再び誠の意識が引き戻された。体に一瞬脱力感のようなものが走った。モニターに表示されたエネルギーゲージは次第に上がっていく。それにつれて法力のゲージも急激に上がり始めた。

「範囲指定お願いします!」 

 甲高い西の声が頭に響く。誠は管制システムを起動し、自分の意識とそれをリンクさせる。これまでの実地で指定した範囲と比べて圧倒的に広い範囲である。だが、誠もこれまで何もせずにいたわけではない。ヨハンや吉田に言わせると『法術師としての能力だけは一流』な誠である。管制システムに模擬干渉空間を展開し、ほぼこの演習場一円をその範囲に指定する。

「それではその状態で待機してください!」 

 そんな西の言葉だが、この状態を維持するのは非常につらいものだった。模擬干渉空間の維持にはかなりの精神力が必要になる。少しでも法力の維持を怠ればはじめからやり直し。しかし、これを兵器として使用するためにはこの状態を維持しつつ、周囲に気をかけるくらいのことが出来なければ意味が無いことも誠は十分にわかっていた。

『いつも西園寺さんやカウラさんがいるとは限らないからな』 

 そう思いながら静かに西のいる野戦管制室を見る下ろした。三人の東和陸軍の作業服を着た女性が西と話をしているところだった。

『西園寺さん?カウラさん?それにアイシャさん?』 

「よう!元気にしとるか!」 

「駄目ですよ!今大変なところなんですから!」 

 西の制止を無視してモニターに飛び込んできたのは西園寺要のタレ目だった。

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