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4話


家に帰って来ると、久しぶりに三人で夜ご飯を食べた。元々両親は葬儀帰りに友達と食べてくる予定だったらしく、久しぶりの三人での夕食は出前になってしまったけど、二人とも嬉しそうだった。やっぱり子どもと一緒にご飯を食べるというのはうれしいものなんだろうか。私にはまだよくわからなかった。

 夕食を食べ終えると、私は部屋に戻った。

 そしていつものように机に座った時、ふと手紙が置いてあるのが目に入った。

 私は直感であの人の手紙だと思った。

 四つ折りになっていたその紙を広げると、上から読んでいった。とても見覚えのある字が並んでいた。


『ひーちゃんへ。 

 結果から言っちゃうと、私は未来のあなたです。だからこうして未来の私が過去の自分に手紙を書くっていうのはなんだか斬新で新鮮だけど、直接言うのは恥ずかしいしい理解してくれないだろうから、こうして手紙で残すことにしました。まぁこれも未来で書いたものなんですけどね。

 多分もうわかってるとは思うけど、私はいとこじゃないです。嘘ついてごめんなさい。

 どうして私がこうして過去に来たかと言うと、私とあなたの両親を救うためです。

 本当ならあの葬儀のあとに行った食事の帰りに、交通事故で死んでしまうんです。でも私はそんな過去を変えてくれた未来の私、つまり未来の私を救ってくれた未来の私。ちょっとややこしいな。あなたにとって私がお母さんなら、私のお母さん、つまりあなたのおばあちゃんって感じかな。その人も未来の私に助けてもらって、そうやって繰り返して繰り返して今の私がいるみたいです。

 だからこれからのあなたは両親がいる生活を送れるけれど、あなたが私と同じ年齢になった時の過去の私は、両親がいないかもしれません。

 いくら私に関係ないことだといっても、未来なり過去なりの自分が不幸な目に会うのは放っておけない。だから私はタイムスリップして過去の私に会いに行きました。

 だからこれは私からのお願いであって、一生のお願いはもうつかえないから、聞くだけ聞いて頭の片隅にでも入れておいてくれたら嬉しい。

 過去の私を助けてあげてほしい。


                              未来の私より。過去の私へ。


 追伸  私は今でも趣味で特殊メイクを続けてます。』



「フフフ……」

 未来? 過去? なんだこの手紙は?

 私は心の中でバカにした。非現実的すぎて全然信用できない。

 でもこれであのいとこに抱いていた疑念の数々がハッキリした。

 自分なんだもん。誰かに似てるとかじゃなくて自分なんだ。そりゃあ似てるわけだ。考え方も似てるわけだ。

「それに……お願い? 一生のお願いはもう使えない?」

 この人は何を言ってるんだ? いくら私でもわかる。これは挑発されている、と。私ならこうやって言えばムキになるっていうのがわかってる。自分自身からの挑戦状だ。

「はぁ……」

 私はどこまでも私なんだ、と自分自身に再確認させられた。

 それでも私は自分の中に小さな、本当に小さな火種がくすぶり始めたのを感じた。

 まぁやってみるか。そんな程度だったけど、なんの目標もない私にとっては、それだけで十分だった。うまいこと自分自身の口車に乗せられてしまったと言えばそれまでだけど、こんな話誰が信じるというのか。

 これは私と未来の私だけの秘密である。

 私は、過去の自分を助けるために、一歩だけ踏み出したのだった。




おしまい。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


また時々書きますので、その時はまたよろしくお願いします

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