第九話「てんせい」
さて、私は様々な世界を見て悲しい思いをした
世界は繁栄している
繁栄しているのだがその分人間の悪い部分が目立つようになった
些細なことで争い、殺し合い、奪い合う
人間とは何と愚かなものだろう
それを止める勇敢な者たちもいるがそれはほんの一部だ
「こんなことなら無の世界のほうがマシだ……」
私は次第にそう思うようになった
いっそこのまま全ての世界を消して無の世界にしてしまおうか
「ダメだ!!」
これはまたとないチャンス
また無の世界に戻ってしまえば
私は後悔してしまうだろう
あれから時が過ぎ霊界にも複数の魂が現れるようになった
私は霊界の上位の位のものに
「低い世界にいる魂たちを救済せよ」
と命じた
皆、分かりましたと応じてくれた
やはり生前勇敢だったものたちは霊界に来てからも勇敢だった
「さて」
私は初めの世界へ目を移す
その世界も繁栄しているのだが派閥が広がっていた
初めは一つだったのが
二つ
四つ
八つ
と
彼らの中には呑気に生きている魂がいる中で
絶望を感じている魂も幾つかあった
まあ無理も無い
そういった魂達は悪行を働いてきて死後後悔し、反省をして生まれ変わってきた魂たちなのだ
そこで私は霊界に一番初めに来た少女に話しかけた
「君の出番だ」
「なんでしょう?」
「君は最初にいた世界に生まれ変わることが出来る」
「本当ですか!?」
「ああ、君には力も授けておこう」
「ありがとうございます!!」
「だが肝に命じておくといい、もし君がその力を使い誤るなら」
「……}
「君もこの霊界で苦しむことになるだろう」
「大丈夫です、私は絶対に間違えません!」
その言葉に私は自分を重ねた
思えば私も最初聞いた声に同じようなことを言われたものだ
私はこの力を使い誤っていないだろうか?
それが心配でたまらなかった
というのも人という業の深い生き物を作り出してしまったからだ
「それでは行くがいい」
「はい!」
少女は元気よく返事をした
まだだ!! まだ絶望するには早すぎる
人間の中にはいるじゃないか……
世界を平和、幸福、安寧へと導かんとする者たちが
私は初めの世界で妊娠したとある人物の中に少女の魂を入れた
彼女は上手くやってくれるだろうか?
彼女にとって初めての転生
やはり心配だった
そう思いつつ私は少女の行く末を見守る




