第十話「しゅうきょう」
私には前世の記憶がある
今は遥か昔、人類がまだ争いが無く幸せに暮らしていた頃
私たち家族も同じく幸せに暮らしていた
家族の総数は親を合わせると二十二名
大家族だった
私たちは幸せだった
食料は木にいっぱい宿っているし
小鳥は私の手のひらで踊り鳴き
美しい動物たちが私たちを取り囲む
そんな幸せな毎日だった
だけどある日、家族が動物を殺しているのを目撃した
私は動物たちの前に立ちはだかった
「動物は食べ物じゃない!」
私は必死に訴えた
しかし、皆
「何言ってるんだ! 動物はとても美味しいじゃないか」
と言って聞かなかった
「エリナ、そこをどきなさい」
「どきません!!」
「そう、残念ね」
母は私に近づいてきた
「エリナ」
母が私を抱きしめる
「お母さん? うっ!!」
「ごめんね……」
私はそのまま意識を失った
死後の世界で私が母に殺されたことを知った
「おめでとう、君は勇敢に戦ったよ」
声が聞こえた
聞いてて心地よい声だった
「ここは……?」
「ここは霊界、幸福な世界だ」
「……」
確かにこの世界は幸福な世界だった
動物を食料にする人たちがいない
でも私は元にいた世界のほうが心配だった
これ以上私の家族が動物たちを殺すのをやめさせないと!!
「そんなに生まれ変わりたいのかね?」
その声の主は私の心を読んでいるかの如く話しかけた
「はい、生まれ変わってあの悲劇を止めたいです!」
「君はもう生まれ変わる必要がない」
「それでも私の家族をほっとく訳にはいきません!」
それとこの世界に来て分かったことがある
この世界では悪いことをする人は苦しい思いをすることが
「私の母は罪が重いんですよね」
「そうなる」
「何とか私の母の罪を軽くしてはもらえないでしょうか?」
私は声の主に懇願した
「残念ながらそれは出来ない、摂理だからだ」
「そう……ですか……」
「君は生まれ変わって悲劇を止めたいのだね」
「はい」
「今はそれは出来ないがいつかその使命を君に授けよう」
「あ、ありがとうございます」
私の母は死後苦しい思いをする
それは残念だけど
生まれ変わって悲劇を止めることが出来るのは素直に嬉しい
現在私は同じ世界に生まれ変わり悲劇を止める活動をしている
周りの皆は私を神と崇めた
私は崇められることに反対だったが
声の主に”そのほうが都合が良い”と言われたので私はその通りにした
私はある教えを説いた
「動物の肉を食べるのはやめなさい、彼らは友達であり食べ物ではありません」
周りの人々はそれに了承した
それは後に”しゅうきょう”と呼ばれるようになる




