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新ダークでエルフな吸血鬼  作者: 夕凪真潮
第一章 おばあちゃん編
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4 上を目指して


「さあ、俺のちょー強い魔法をくらえぇぇぇぇぇ!」

「お兄ちゃん、バカ?」

「…………」


 十二歳くらいの男の子が空に向かって手を上げ、なにやら呪文っぽいのを唱えた。

 でも魔力も何も感じない。

 それに対して冷静な突っ込みをする、十歳くらいの女の子。


 俺がおばあさんに拾われてから今日で一週間が過ぎた。

 そろそろ町のみんなと顔を合わせてきな、と言われたのでまずは隣の家にいた子供たちに挨拶をしにいったのだが、いきなり喧嘩を売られてしまったのだった。


「お、俺の魔法を無効化しただとぉ?! さ、さすがダンピール、お前やるな!」

「いえ、私何もしてませんが……」

「なっ?! 無意識的に魔法無効化の能力を発揮しやがったのか! こ、この俺史上最大のライバルだな!」


 えっと、どうしよう。

 取りあえず、軽くでこピンでもしておこうかな。

 一応は喧嘩売られたわけだし。


「えいっ」

「ぐはぁぁぁぁ!? ちょっ、まじで痛い!」

「あ、ごめんなさい。ほんの軽くやったつもりだったのですが」


 のた打ち回る男の子。

 それに対して冷たい目で男の子を見る女の子。


「アオイちゃん、お兄ちゃんは放っといて、町の中を案内しようか?」

「本当に? ありがとうございます。ぜひお願いします。でもテンペさんのお兄さん大丈夫かな」

「問題ないよ。それにお兄ちゃんと一緒だとうるさいし、正直邪魔」

「そ、そうですか。クールですねテンペさんって」


 彼女は俺の手をとって、町の中へと歩き出した。

 そんな俺たちの背後から悲しい叫び声が届いた。


「のぉぉぉぉ、テンペよ! お前は俺を、兄を見捨てるのかぁぁぁぁぁ」

「バカ」


 さて、隣に住むこの兄妹。

 兄の名がレイアードで十二歳、妹がテンペという名で十歳だ。

 二人とも金髪で茶色の目をしている。

 おばあさんは、この二人、特に兄が意外と抜け目のない可愛げのない奴、と言っていたけど、どちらかと言えば妹のほうが抜け目なさそうだ。


「で、ここがメインストリートだよ。夕方にいくとたくさんの人が買い物してるよ」

「へぇ、意外と活気がありますね」


 それなりに大きな通り沿い。

 時間はまだ朝だが、結構人通りが多い。


「えっと、アオイちゃんの話し方って何だか硬いね」

「テンペさんは私より年上ですし、礼儀は必要です」


 砕けた口調にすると、男口調になってしまうしな。

 やっぱり、ですます調が楽だな。


「別にいいのに」

「お、テンペちゃん、朝早くから散歩かい?」


 そんな時、店に居た気のよさそうなおっさんから声をかけられた。

 それに対して丁寧に挨拶を返すテンペさん。


「ハルスおじさん、おはようございます!」

「おや、隣にいるのは……ダンピールか」


 が、そのおっさんは俺の赤い目を見た瞬間、いきなり雰囲気が変わった。

 まるで危険な生き物を見るかのような目に。

 吸血鬼、ダンピールは嫌われているとワンコに聞いていたけど、こうまであからさまだとキツイな。


「テンペちゃん、そいつは?」

「隣のおばあちゃんのところにいる子ですよ、ハルスおじさん」

「ラトゥールのばあさんのところに? あのばあさんも何考えているのやら。まあともかく、そいつは血を吸う奴だからテンペちゃん気をつけろよ。それとお前、もしこの町で悪さをしたら、即たたき出すからな!」

「ハルスのおじさん! そんな事言っちゃだめだよ!」

「テンペさん、いいのですよ。えっとハルスさん、はい分かっておりますので」

「お、おう。わかってりゃいいんだよ」


 そしてテンペさんと俺はメインストリートを歩き出した。


「ハルスおじさんも酷いこと言うよね」

「仕方ないですよ。吸血鬼やダンピールは嫌われ者ですし」


 俺だって人の血を吸うような魔物がいたら怖いと思う。

 だから仕方ない。

 仕方ない。

 けど……やっぱり辛いなぁ。


「テンペさんは私の事、怖くないのですか?」

「怖いって? そんな事ないよ、アオイちゃん可愛いし」

「あはは。別に可愛くないと思いますけど」

「そんなことないよ? うちのお兄ちゃんが、いきなりアオイちゃんに喧嘩売ったのも、アオイちゃんが可愛かったからだしね」


 何その好きな子にはいじわるする、という小学生脳は?

 でもこの子たちは小学生くらいだから仕方ないのか。

 そういやここ何年か自分の姿って見てないな。

 半分ダークエルフだし、確かに整った顔立ちしているのは間違いないとは思うけど。

 帰ったら鏡で見てみよう。


 しかし、男に惚れられるのは嫌だな。

 変な顔でもしておこうか。


「……どうしたの? いきなりしかめっ面して」

「あ、いえ、なんでもありません」

「でもうちのお兄ちゃんはバカだし、やめておいたほうがいいと思うよ? アオイちゃんなら、もっと素敵な男性見つかるよ」

「テンペさんって、結構言う事辛辣ですね」

「そうかなぁ。正しい判断だと思うんだけど」


 十歳にしてこの悟りよう。

 将来が怖い少女である。


「あたしね、将来は冒険者になって色々な町を旅して回るのが夢なんだ」

「冒険者になりたいのですか」

「うん、たまに隣のおばあちゃんに魔法を教えてもらっているけど、中々筋が良いって言われているんだよ!」

「では後で見せてもらえますか?」

「うん、いいよ!」

「レイアードさんも、おばあさんに魔法を習っているのですか?」

「バカが習っているのは剣のほう。あいつああ見えて、剣の腕は意外とあるんだよね」

「じゃあなぜあの時、私に魔法を使おうとしていたのでしょうか」

「妹分析によると、アオイちゃんの気を惹こうと頑張った結果だよ」


 妹分析って……。

 でも、テンペさんも兄の事は嫌いじゃないのか。

 何だかんだ言いつつ、しっかり見てるしな。


「アオイちゃんは将来何になりたいの?」

「私は……そうですね。生き抜くことが出来れば、何だってやります」

「うわっ、何だか難しいこと考えているね。具体的には?」

「やはり手っ取り早いのは冒険者でしょうか。強ければなれますしね」

「あたしと同じだね。じゃあ冒険者になったら、一緒にパーティを組む?」

「はい、そのときはお願いします」

「約束だからね! じゃあそろそろ帰ろっか」

「はい」


 一通りテンペさんと町の中を歩き回りながら話していると、時間もお昼過ぎになっていた。

 そしておばあさんの家が見えてきた時だ。


「待っていたぞ、我が妹とダンピールよ!」


 レイアードさんが剣を持って、おばあさんの家の前に立っていた。

 しかも隣にはおばあさんも居る。


「どうしたのですか?」

「アオイ、お前ちょっとレイアードと戦ってみてくれんか?」

「え? でも……」

「おばあちゃん、バカに剣なんか持たせると危ないよ!」


 戸惑う私にテンペさんの辛辣な言葉が飛んだ。

 なんとかに刃物かよ。

 しかしおばあさんは、そんなテンペの事など無視して、淡々と述べた。


「さあ、アオイ、遠慮なくレイアードを殴ってやりなさい」

「ほ、本当にいいんですか?」

「だめだよ! バカは剣の腕は本当にいいんだから、アオイちゃんじゃ勝てないよ!」


 うーん、どうしよう。

 つい先日の盗賊の戦いを思い出した。

 俺が本気で殴ったら、人間の頭など簡単に破裂させてしまう。

 でも、おばあさんは遠慮なく殴れって言ってるしな。

 きっとこのレイアードさんも修羅勢なのだろう。


「遠慮するなダンピール! 俺がお前の全てを受け止めてみせる!!」

「あ、はい。じゃあいきます」


 まずは様子見だ。

 手に軽く魔力を乗せ、一気にレイアードさんの側に近寄り、殴りかかった。

 するとレイアードさんの剣が、まるでおばあさんの杖のように動く。


 これは?!


 そして彼の剣が俺の拳を受け流し……。


「なんだこりゃぁぁ?! めっちゃ重い一撃じゃん!」


 きれなかった。

 何とか俺の拳を流したものの、彼の体制が崩れる。

 その隙を逃さず、左足を彼の足の甲に乗せ逃げられなくし、背中を彼の全身へとぶつけた。


「てつざんこー」

「ぐはぁぁぁぁぁぁ」


 衝撃をモロに喰らったレイアードさんは、泡を吹いて気絶した。


「なんだレイアード、根性のない奴だねぇ」

「うそ……バカが負けた? もしかしてアオイちゃんって、ものすごく強い?」

「ど、どうなんでしょうか」


 でもレイアードさんが俺の拳を受け流した技。

 あれは一体何なんだ。

 そんな俺に向かっておばあさんが、しわくちゃの顔に意地悪気な笑みを浮かべた。


「アオイ、お前は強い。おそらく魔物相手ならば、あたしよりもずっと強いだろうね。でも、アオイの戦い方を見ている限り、どうも対人戦はド素人に思えるんだよ」


 ……その通りだ。

 魔大陸では魔物との戦いばかりだった。

 そもそも人族がいなかったしな。


 彼が、おばあさんがやった俺の拳を受け流した技、あれも対人戦の技術の一つなのだろう。


「だからお前が学ぶべき戦いは、人との戦い方さね。レイアードは未熟だし、お前にはちょうど良い相手さ。これからレイアードと戦い方を学んでいくことだね」

「はい、わかりました!」

「人との戦いを覚えれば、お前は今よりももっと強くなるさ、このあたしよりもね。他でもないあたしが保証するね」

「う、うそ……あの守り姫がそんな事を言うなんて」


 テンペさんが妙な事を口にしたな。

 守り姫って何だろう。姫ねぇ……。

 でもここには、姫っぽい人なんていないよな。


「う、うーん」


 と、そこでレイアードさんがようやく目を覚ました。


「あ、あれ? 俺ひょっとして気絶していた?」


 しかし……俺はまだまだ強くなれるのか。

 これは、楽しくなってきた。

 早速起き上がってきたレイアードさんに対して、お願いする。


「レイアードさん、もう一本お願いします!」

「え? へ? ま、まじで?! ちょ、ちょっとたんま!」

「先ほど、俺がお前の全てを受け止めてみせる、とおっしゃっていましたよね」

「あ、あれは言葉の綾でして」

「男に二言はないはずです。いきますよ!」

「いや、お前の拳めちゃ重くて、ちょっと受けきれな……ぐはぁぁぁぁ!?」


 俺が強くなるまで、レイアードさんには悪いが、サンドバッグになってもらうか。




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