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新ダークでエルフな吸血鬼  作者: 夕凪真潮
第一章 おばあちゃん編
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2 おばあさんとの出会い


 あれからは俺は周りの視線に居た堪れなくなり、逃げてしまった。

 すっげぇ痛い子見るような目つきなんだよ?!

 いや俺だって、一人でぶつぶつ言って、たまに意味不明な言葉を発している子供がいたら、可哀想にな、と思ってしまうんだが。


 ま、まあ過ぎたことは仕方ない。これからの事を考えよう。

 さて、ここはどこだ?

 ワンコから聞いたところによると、魔大陸から海を渡っていくと潮の関係で、イーヴァとファイトスという二つの町の間に着くらしいのだが。


 左右前を見ても広大な草原、そして後ろにはいくつかの小屋が建てられていた。

 あの小屋は、さっきいた漁師たちの住んでいるところかな。

 彼らだってずっとあの小屋に住んでいるわけじゃないだろう。

 きっとどこかの町か村から来て、何日かあそこに寝泊りして漁をしにきているはずだ。

 ということは、ここからさほど遠くない所に、町がある。


 でも草原が広がっているだけだなぁ。

 しかし、俺の今居る場所。正しくは俺の足元。

 そこは明らかに人の手で創られた道だった。

 単に地面を均しているだけの簡易的なものだが。


 漁師だって、大量の魚を取って運ばなければいけない。

 手押し車、或いは牛や馬などの動物を使って運んでいるはずだが、道がなきゃ引っ張るにしても難しい。

 となると、この道を行けばどこかの町につく可能性が非常に高いだろう。


 よし、じゃあ行ってみるか。

 せっかくだから俺は海からみて右側の方角を進んでいくぜ。



 ……そして三時間後。



 まだ着かないのか。

 いくら景色を眺めていても、変わることのない草原がずっと続いている。

 さすがに飽きてきた。

 大人ですら一時間歩いて四~五kmも進めば御の字。

 子供の足で一時間三kmくらいと仮定すると、九kmしか進んでいない。

 この世界の町がどの程度離れているのか分からないけど、人口少なそうだよな。

 これは夜になったら走ったほうがいいだろう。


 吸血鬼の身体能力は夜になると格段に上昇する。

 俺は三倍速って呼んでいるけどな。

 しかも体力は無尽蔵で、一晩中走り続けてもなくならないほど。


 じゃあ今夜走るとして、今は少し休憩しておくか。


 街道から少し離れたところに、俺は寝っ転がった。

 空は見事なまでのスカイブルー。レイリー散乱はこの世界でも生きているんだな。

 魔大陸に住んでいた時は基本森の中だったし、あまり空を拝んだことはなかったが、こうしてみると空が広い。

 これは夜になると、三百六十度天体が拝めそうだ。


 そんな事を考えていたら、いつの間にか睡魔に襲われていた。




「……嬢ちゃん、お嬢ちゃん」


 誰かが俺の身体をゆすっている。

 ワンコか?


「う、うん……。ワンコ、もう少し寝かせて」

「こんなところで寝ていたら風邪引くよ。ほら起きた起きた」


 ワンコじゃない。これは人間だ。


 目を大きく見開くと、そこには年老いた老婆がにこやかな笑顔で立っていた。

 ただし、片手には魔法使いが持つような杖、もう片方はランタン、そして背中には大きな麻袋を背負っている。

 その次に慌てて空を見るも、既に日も落ち、夜の帳が降りようとしていた。

 うわ、寝すぎた!


「やっと起きたかい。こんな子供がこんな危険なところで寝ているなんて、あんた命がいらないのかい?」

「あ、あの。起こしてくれてありがとうございます」

「おやまあ、礼儀正しい子だこと」


 咄嗟に出てきた言葉は、丁寧語だった。

 知らない人と会話すると丁寧語になるとは、やっぱ俺も日本人だな。

 それにしても、このおばあさん、魔術士か? 杖持っているし。

 いやもしかすると、単に足腰が弱いだけなのかも知れないけど。


「おやダークエルフ、いやハーフダークエルフ……それにその赤い目は。そうか、お嬢ちゃんはダンピールなんだねぇ」

「は、はい、そうです」

「となると、捨てられたという訳かい?」


 このおばあさんの口ぶりからすると、ダンピールは捨てられる事が多いのか?

 まあ事実俺も捨てられたわけだが。


「……はい」

「名は?」

「へ?」

「お嬢ちゃんの名は?」


 ……名前。そうか、俺の名か。

 そういえば全く考えていなかった。

 魔大陸で唯一会話してたワンコは、我が主、と呼ばれていたし。

 じゃあ生前の名前、ハタナカアオイでいいか。

 いやまて、ヨーロッパだと名が先だったよな。

 そもそもこの世界、家名がつくのは貴族のみ、という事もありえる。

 下手に家名なんかつけて、あとで色々と問題が起こるのも面倒だ。

 ならば、名だけにしよう。

 幸いな事に俺の名は女につけていても、不自然じゃないしな。


「アオイ……です」

「アオイというんだね、お嬢ちゃんの名は」

「はい」

「じゃあおばあちゃんと一緒にくるかい?」

「……へ?」

「アオイは住むところがないんだろう? ならあたしと一緒に住まないかい?」


 いきなり?! なにこのおばあさん。

 もしかして人攫い??

 正直なところ、俺の容姿はさすが半分エルフなだけあって格段に良い。

 子供の売り買いがあるのかは分からないが、なるべく関わらないほうが良い。


 それでもこの話しは魅力的だ。

 生活基盤のない土地だし、このおばあさんを通じて、この大陸の情報を得ることだって出来るだろう。


 なに、相手はおばあさんだ。いくら何でも古竜より強いってことはないだろう。

 万が一人攫いの類だったとしても、切り抜けられる。


「あの、いいんですか?」

「良いも悪いも、こんな所に子供を一人放っとけないよ。さ、おいで」


 ああ、この人いい人だ!

 じゃあ俺も何かしてあげないと。


「背中に背負っている荷物、持ちましょうか?」

「背負っているのは、単なる薬草よ。重い訳じゃないから大丈夫さ」

「じゃあお家はどっちの方角になりますか?」

「んーと、あっちかねぇ」


 俺はおばあさんが指を指した方角を見る。

 遠くに何かの明かりがついているのが見えた。

 夜だと分かりやすいな。

 そしてあの距離なら全力で走れば、一時間もかからないだろう。


「じゃあおばあさんごと、持ちますね」

「へ? アオイは何を言ってるうわわわわわわわっ?!」


 俺はおばあさんごと、両手で持ち上げた。

 魔大陸では巨大な魔物を狩って、その身体を洞窟まで持って帰っていたのだ。

 これくらいなんともない。


「では走りますよ! おばあさん、しゃべると舌噛むので黙っててくださいね!」

「ちょっ?! うひゃぁぁぁぁぁぁ!?」




 そしてきっかり一時間後、おばあさんの住む町へたどり着いた。

 持ち上げたおばあさんは泡を吹いて気絶していた。


 当然、後で怒られた。

 ……くすん。




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