1 新大陸へ
今回も短めです
口調って難しいですよね
後半、何となく前作っぽいノリになってしまいました。
俺がこの地に生を受けてから七年、記憶が戻ってから四年が過ぎ去った。
そして、今俺は新たな旅立ちをしている。
大海原をイカダに揺られて、吐きそうになりながら……。
う、うぇぇぇぇぇ。
吸血鬼って流れる水が弱点と聞いてはいたが、まさかこれほどの吐き気に襲われるとは思いも寄らなかった。
なぜ俺はこんな目に合いながら海を渡っているのか?
数日前の出来事を思い出しながら、少しだけ目を塞いだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「我が主よ、そろそろ人族の居る場所へ行く時期がやってまいりましたな」
「な、なんだ唐突に? どこか旅行にでも連れてってくれるのか?」
ワイバーンを片手で殴殺した帰り道、ワンコが不意に真面目な口調で言ってきた。
「我が主は人族です。人族は人族らしい生活をすべきかと愚考いたします」
「つまり魔大陸を出て、人族が住んでいる新大陸へ行けと?」
「いくざくりぃ」
「いや無理して英語使わなくてもいいから」
ここの暮らしも慣れれば悪くないんだがな。
定期的に獲物を狩って、あとは洞窟でのんびり寝てたり、ワンコと戦闘訓練したり。
でも、俺には元の世界へ戻るという目標がある。
それにはここにいるより、人が住む大陸へと渡ったほうが、情報は集まるだろう。
「うん、わかったよ。で、ワンコはついてくるんだろ?」
「いや、我の姿は人族には恐れられるものです。それに我はこの魔大陸生まれの魔大陸育ち。生粋の魔大陸っ子ですし、一応我はこの辺りを仕切る群れの長です。ここから出て行く訳には参りませぬ」
「ワンコが付いてきてくれないと、寂しいじゃん」
「なに、我が主ならきっと新大陸でもやっていけますぞ? やはり人は同族同士のコミュニケーションが必要なのです」
コ、コミュニケーション。
ワンコってば本当に何者なんだよ。
「……そうか、確かにそうだよな。わかった。長い間だったが世話になったな、ありがとう」
「いえいえ、我が主よ。ところでどこへ行くのですか?」
俺が海の方向へ行くのをワンコが引き止めた。
「え? 早速海を渡ろうかと思ったんだけど」
「その前に、人前に出しても恥ずかしくない強さを測りましょう」
「強さ? 俺ってそれなりに強いと思ってるんだけど」
この四年間、ワンコと狩りをしながら暮らしたのは伊達ではない。
ワイバーン程度なら、昼間でも片手で殴殺できるし、ドラゴンも何とか倒せる。
これだけ強ければ、新大陸に行っても、魔物に殺されるような事はないだろう。
「卒業試験というものです。我等の縄張りの隣の長、知っておりますか?」
「ああ、古竜だろ?」
「最近ちょっと、そ奴が目ざわ……ごほん、古竜を倒すことが卒業試験となります」
「ちょっ?! まじで?!」
普通のドラゴンが千年以上生きると、古竜となる。
その強さは計り知れない。
「我と古竜は同じくらいの強さです。しかし我は氷に強いが火に弱くて、古竜のやつは目の上のタンコブ状態なのです。そこでぜひとも我が主には、古竜を倒していただきたく」
「まあワンコには世話になったし、この辺で恩を返さないといけないのは分かってるけど……古竜かよ」
ドラゴンなら何匹も倒したことがある。
しかし流石に古竜はない。
「それに我の前の主も、一人で古竜を倒しましたぞ?」
「まじで?! ワンコの前の主って、単なる魔術士だよな?」
「はい、たまに剣も使っておりましたが基本は魔術だけでしたな」
古竜を一人で倒せるほどの魔術士がいるのかよ。
もしかして新大陸って、ここよりも修羅か?
俺程度じゃ向こうへ行っても大きな顔できないんじゃないのか?
じゃあ俺も古竜を倒して、少しでも箔をつけなきゃ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして何とか古竜を倒した俺はワンコと別れ、イカダで海を渡っているのだ。
しかし古竜との戦い、いやマジで人間だったら二十回くらい致命傷を負ったわ。
俺、ダンピールで良かった。
しかし……気持ち悪い、うぇぇぇぇぇぇ。
もしこれが純粋な吸血鬼だったら、どれだけ海を渡るという行為が自殺行動なのだろうか。
本当に俺、ダンピールで良かった。
そして魔大陸を出て四日目、遥か遠くに陸の影が見えてきた。
よし、あと一息だ。
ダンピールの俺は体力が人間と比べ遥かに多い。
一週間くらい徹夜しても平気なのだ。
ここまでくればあと少しだ。
このまま一気に新大陸へ渡るぜ!
と、その前にまずは心を落ち着かせよう。
出発前、ワンコに言われたことだ。
新大陸にいる人族は、吸血鬼を怖がっております。
我が主はダンピールですが、血を吸う事に変わりはありませぬ。
しかしながら、我が主は見た目は小さな子供です。
そこをうまく利用してやりましょうぞ。
ワンコ怖い。何その悪知恵。
でも確かに子供の姿ならば、大人から見れば油断するだろう。
実際俺だって、小学生低学年くらいの子供が笑いながら遊んでいるところを見れば、ほっこりする。
よし、ならば口調を変えなきゃいけない。
俺口調なんて子供が使っていたら不自然どころか、何だこのガキ、と思われる。
生意気ではいけない、あくまで子供のように純粋で可愛らしく……。
そして、例えおっさんだろうが、お兄さんと呼べば相手は喜ぶだろう。
その油断を突いて殺す!
違う、殺してどうするんだ俺! 俺は暗殺者か?!
そうじゃなくて、もっと相手をほっこり気分にさせるんだ。
もっと可憐に、一緒に遊んでくれと言えば良いんだ。
「おにーさん、ちょっと私とあそんでいかない?」
……何かが違う。
これじゃ男を誘っているだけじゃん!
っつーか、七歳の幼女がこんな事いう訳ないじゃん!
もっと自然に可愛く言えばいいだけなんだよ!
「きゃはっ☆ミ おにーちゃん、一緒にあそぼーよぉー、きゃぴっ☆」
…………死にたくなった。
何が楽しくて、こんな口調にしなきゃいけないんだよ。
そうじゃなくって!
普通の一般的なご家庭にいるお子様の口調をすればいいんだよ!
国民的某アニメの子供のまねをすればいいんだ。
「はーい、ちゃーん」
………………既にそれは子供じゃなく赤子だろ。
こうして俺は口調を必死で、身振り手振りをしながら考えていた。
既に新大陸の海辺について、周りにいた漁師の方々に可哀想な子扱いされていることも知らずに。
「ホモが嫌いな女子なんかいません!!!」
だから違うってば! こうじゃなくって!