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新ダークでエルフな吸血鬼  作者: 夕凪真潮
序章 異世界へ
3/24

3 生きていくには?

今回短めです。

そして序章の終わりとなります。



 俺の目の前に、ものすごく大きな白い犬が鎮座していた。

 時折、口から鋭い牙が見え隠れし、そして白い息が吐き出されている。


 あまりの出来事に脳が麻痺したのか、暫し呆然と大きな犬を眺めてしまった。

 そしてたっぷり三十秒ほど経過しただろうか。


「うひゃぁぁぁ!?」


 俺は思いっきり奇声を上げてしまった。

 だ、だって仕方ないじゃん!

 お前らだって、目が覚めたらいきなり目の前に家ほどもある巨大な犬が居たら、びびってしまうだろ?!


 俺の奇声に反応した犬が、その巨大な口を開いた。

 しまった! 我慢して奇声をあげていなければ、逃げ出せたかもしれないのに。

 これは俺の命終わったな。

 半場諦めて、目を塞ぐ。

 しかし次の瞬間その巨大な口から人間の、いや俺も知っている日本語が発せられた。


「いかがなされましたか、我が主よ」

「……へ?」


 塞いでいた目を恐る恐る開くと、すぐ側にでかい顔が近づいて、しきりに匂いを嗅いでいた。

 何気に尻尾が左右に振られているのが分かる。

 なんせ後ろで、びゅおんびゅおん風切り音が聞こえてくるからな。


 あ、こいつ、ただでかいだけの犬か?


「おや、なにやら雰囲気が変わられましたな。ダンピールという種族は、このように成長するものとは、これは勉強になり申した」

「ダンピール?? って、それ俺の事?」

「しかもいきなり共通語まで話せるようになるとは。ダンピールとは凄まじいものですな」

「共通語? 日本語じゃないのか?」

「日本語とは聞きなれぬ単語ですな。それより我が主よ、先ほど悲鳴を上げ申したが何かありましたか?」


 って、そうだ!

 俺トラックに撥ねられて……。

 た、館水さんは?!


 立ち上がって回りを見るが、そこはどうみても暗い洞窟の中だった。

 しかも暗いはずなのに、まるでカラー付きの赤外線スコープを覗いているかのように、くっきり鮮やかに見えている。


「な、なあ。俺トラックに撥ねられたと思ったんだが、お前が助けてくれたのか?」

「トラック? 聞いたことのない魔物の名ですな」

「女の子は知っているか? 俺と同じくらいの世代の」

「ははは、我が主と同世代の人族など、主以外ここには居り申せぬ」


 館水さんは居ないのか。無事だったのだろうか。

 身を挺して庇ったんだから、きっと無事で居てくれるはずだ。


 しかし……それにしてもどこなんだここは?


 周りを見ているとふと何となく違和感が襲った。


 なんか視点が低くないか?


 慌てて自分の身体を見ると、ものすごく小さくなっていた。

 しかも着ているものは服というより、単なる動物の毛皮を巻きつけただけの簡易なものである。

 一体どこの野生児だ。


「な、なんだこりゃぁ?!」

「どうなされた我が主よ、先ほどから挙動不審ですぞ?」

「だ、だって俺の身体小さくなってる! これってどう見ても子供じゃん!」


 手を見るものの、ものすごくぷにぷにしてる。

 そういえば、何となく頭が重い。髪が長いような気がする。

 後ろに手を回すと、腰の辺りまで髪が伸びていた。

 掴んで前に引っ張って見ると、綺麗な銀色の髪だった。


「ふむ、なにやら病魔にでも侵されてしまい申したか? 主に頭の」

「俺の頭は正常だよ! っていうか、何で俺はナチュラルに犬と会話しているんだよ!?」

「犬とはなんでしょうぞ? しかし何となく侮辱された気分ですな」


 後ろのほうから聞こえていた風切り音が止んだ。

 ま、まずい。


「そ、そんな事はない。犬というのは人間の愛玩動物で、ものすごく可愛いんだ」


 慌ててフォローする俺。でも番犬のような厳つい犬もいるけどな。


「可愛い? 我を可愛いと言った人族は、我が主で二人目ですぞ」


 再び尻尾の振る音が聞こえだした。

 何こいつ、案外かわいいんじゃね?


「そういやさっき……いやその前に、お前に名前あるの?」

「昔は色々な名を持っておりましたが、今はありませぬな」

「じゃあ名無しでは不便だし、何か名前つけてやろうか?」

「おお、是非お願いし申す」


 まるで、伏せ、のように頭を下げてくるでかい犬。

 そして、なにこの期待に満ちた目。

 犬だからラッキーとかチャッピーでいいか、と一瞬考えたんだけど、それじゃ申し訳ない気になったぞ。


「うーん、ジョンはありきたりだし、ポチという柄でもないし、チョッパーじゃ何かに引っかかりそうだし。いっそワンコってのは? いや冗談だk」

「ワンコ?! 何と言う勇ましく素晴らしい響き! 我が主よ、その名が気に入りましたぞ!!」

「お、おう。そ、そうか気に入ってくれたか」

「我が名はワンコ! 白銀の氷魔狼ワンコであるぞ!!」


 そのままでかい犬、いやワンコは喜びながら洞窟の外へと駆け出していった。

 外から、我はワンコである! という声が届いてくる。


 ……ま、まあ喜んでくれたし、いいか。


 それにしても、俺は一体どうなっちまったんだろう。

 トラックに轢かれて、次に気が付いたら子供の姿で、洞窟に居るとは。


 ん?

 トラック、轢かれる、死亡。

 もしかして、小説によくある異世界転生ってパターンか?


 それにしても、この身体の小さい頃の記憶がないな。

 それに日本語が共通語ってどういうことだ?

 そしてワンコはさっき俺の事をダンピールって言ってたけど、それはいったいなんだろうか。

 そもそもワンコは、なぜ俺の事を主なんて呼ぶんだ?


 考えれば考えるほど、疑問が浮かんでくる。

 が、まずは命が助かったことを喜ぼう。

 いや一回死んだけど。


 そして次は、俺の目標だ。

 まず生き抜いて、そして最終的には元の世界に戻って、館水さんに会う事だ。

 そして初デートからのキスを目指すんだ!


 おお、そう考えると燃えてきた!!

 でも、まずはワンコにこの世界の事を教えてもらわなきゃな。

 何も知らないこの世界において、ワンコは重要だ。


 外では、まだ、我が名はワンコである、お主ら覚えたか! と叫んでいる声が鳴り響いている。



 ……頼むぜ、ワンコ。



 お、なんかトイレ行きたくなった。

 ちょっと外でしてくるか。





………………。


…………。


……。


「無くなってるぅぅぅぅ?!」






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