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新ダークでエルフな吸血鬼  作者: 夕凪真潮
第二章 学園編
24/24

14 原っぱへ

更新遅れてすみません……


「よーし、準備は整ったか?」

「「「はーい」」」


 とある晴れた休みの日の朝、六人くらいの子供と三人の冒険者がギルド前に揃っていた。

 しかし六名の子供のうち、半数は俺の知っている人で占められている。

 アリスさん、俺、ついでにエルハンド。あれだけスルーされていたのに、ちゃんと来る根性は素晴らしい。

 他にはノーラさんが少し離れたところで俺たちを見守っている。


 そして三人の冒険者だけど、剣士、魔術師、盗賊とそれなりにバランスの取れたパーティで構成されている。

 いざという時は子供のお守りをしながら戦う必要があるから、ベテランなんだろうけど、でもこの三人、どこかで見たことがあるんだよな。

 どこだっけ?


「じゃあ今日はベール側の街道沿いから少し離れた場所にある平原、通称原っぱにいく。ここは基本的に最低ランクの魔物しか出ない。主にねずみやイモムシ、クモやムカデだな。まあ少々でかいけど」


 最低ランクの魔物しか沸かない平原か、なんかゲームみたいだな。

 それにしてもクモとかムカデって気色悪い奴らばかりだ。

 でも周りの反応を見ると、驚いている子供はいない。逆にほっとしているような顔つきの方が多い。

 この町だとクモとかムカデは、危険な奴らじゃないのか。噛まれたらやばそうなんだけど。


 そんな子供たちの反応を見た剣士風の男は、ニヤリと笑うと付け足した。


「が、たまにそれらの魔物をエサとして山から高ランクの魔物が下りてくる事があるから、油断は禁物だぜ」


 なるほど、高ランクの魔物からすれば丁度良いエサ場なんだ。

 でもその高ランク魔物をフィールドボスに例えると本当にゲームっぽいなぁ。


「はい! 質問!」


 俺の後ろにいた子供が突然手をあげて大声で叫んだ。

 ちょっとびっくりしたじゃないか。


「おお、何でもいいぜ」

「その山から下りてくる高ランクの魔物って具体的には?」

「主にCランクくらいだな。ロックイーターやフライボア、ワータイガーなんかが多いが、まれにAランクのワイバーンなんかも来るから上には気をつけな。毎年よく初心者がそいつらに食われてるからな」


 ワイバーンか。あいつら、突然上から足で掴んでくるからびびるんだよな。

 あれだけ図体でかいくせして、飛んでいるときの音があまり聞こえないし。


「他に質問は無いな? じゃあいくぜ」

「「「はーい」」」





 その原っぱまでは徒歩一時間くらいの距離だそうだ。

 その距離なら一日で稼いで戻ってこれるし、初心者向きな場所だな。


「アオイさん、緊張しますね」

「大丈夫ですよアリスさん。三人も高ランクの冒険者がいるし、それにノーラさんも後ろで控えていますし」

「俺だっているしな!」

「エルハンドさんは魔物と戦った経験はありますか?」

「うっ……でも親父にいくつか魔術を教えてもらっているし、多少は役に立つ!」


 あー、実戦は初めてか。

 初めてだと焦って魔術失敗するんだよな。

 俺も昔通った道だ。代償は片腕一本で済んだが、普通の人間だと致命的だ。

 でもさっきも言ったとおり高ランク冒険者三人もいるんだ。

 たとえワイバーンが来ても大丈夫だろう。


「よう、お嬢ちゃん。今日はそんな装備で大丈夫か?」

「一番良いのを頼む」


 十分ほど歩いた頃、後ろを歩いていた剣士の冒険者が俺に声をかけてきた。

 つい反射的に答えてしまったが、爆笑されてしまった。


「ははははは、今日の返しはそれかよ。俺は鍛冶屋じゃねーよ」

「あれ? もしかして以前ベールの近くでお会いした方ですか?」

「何だよ、気がついてなかったのか。ひでーな」

「ふふふ、可憐な美少女のアオイちゃん、だったっけ?」

「そ、その通りですよ!」


 剣士の隣にいた魔法使いのおねーさんが突っ込みを入れてきた。

 確かこの人って氷結の魔女とかいう二つ名持ってたな。

 しかしこのセリフって他人に言われるのは恥ずかしいものだな。

 でも、恥をこれを乗り越えてこそ、向こうが見える!


 恥も外聞もない性格になったらどうしよ。


「アオイさん、お知り合いですか?」


 アリスさんに首を少し傾げならが尋ねられた。


「ラルツに来る前、すれ違った時に少しお話した程度ですよ」


 酔った勢いでベールの司令官を殴ったっけ。

 まだ一月くらいしか経ってないのに、遥か昔の事のように感じるなぁ。


「そういえばファイトスからここまで歩いてきたんですよね。よく子供一人でここまで無事にこれましたよね」

「ファイトス? あんな遠くから一人で?」

「結局半月ほどかかりました」

「子供の足じゃそれくらいかかるか」


 うち半分はベールで小間使いしてたけどな。

 もう酒は飲まない。

 酒といえば確かこのおねーさん、そのうち血を吸わせてくれるとか言ってたっけ。


「そういえばおねーさん、私に血を吸われる気は向きましたか?」

「? ああ、そういえばそんな事言ったっけ。すっかり忘れてたわ」

「がーん、ショックです! 私ってその程度の存在だったのですね! しょんぼり」

「まだ気は向かないから十年後くらいに来てね」

「じゅ、十年……遠いです」


 わざと肩をがっくり落としながら、とぼとぼ歩く俺にアリスさんが冷たい声を発した。


「血って何ですかアオイさん?」

「ちょっとした大人の事情ですよ」

「へぇ……」


 やめてその目! 何だかぞくっとくるよ!



 そしてラルツを出発して一時間半。

 さすがに子供が多いせいか少し時間がかかったけど、無事原っぱとかいうところに着いた。

 何やら微かにあんぎゃーとか声が聞こえてくる。

 そして先頭を歩いていた盗賊風の男が、小声で鋭く「伏せろ」とささやいた。

 途端、俺の後ろにいた剣士の男と魔法使いのおねーさんが腰をかがめながら、まごついている俺ら子供の頭を次々と地面に押さえつける。


「いいかお前ら、そのままの姿勢でいろ。どうしたリーン」

「ワイバーンでもいたの?」

「いや……あれを見てくれ」


 盗賊の男が原っぱの中央辺りを指差した。

 それに釣られて俺もそちらを見ると、遠くて分かり難いけどなにやら赤い物体が、動いているのが分かる。

 しかも長い首っぽいのを地面近くに降ろしたと思ったら、上にあげている。

 んー、お食事中か?

 あれだけ見るとワイバーンっぽいけど、少し太っている気がするし妙に迫力というか威圧感を感じる。

 魔大陸じゃ周りが強力すぎてワイバーンといえど捕食される側だったから強くなりようがないけど、こっちだとワイバーンでも結構上位の方の強さを持っているだろうし、強くなった歴戦のワイバーンかも知れないよな。


「ここのワイバーンって迫力あるんですねー」


 なんてのんびりした口調で俺が言うと、盗賊の男が顔をしかめて呟いた。


「なんでファイヤドラゴンがこんなところにいるんだよ……」





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