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新ダークでエルフな吸血鬼  作者: 夕凪真潮
第二章 学園編
20/24

10 温泉?!


 学校初日もつつがなく終了し、特に特記することもなく俺はアリスさんと一緒に下校していた。


「今日はアオイさんの初登校でしたけど、学校はどうでしたか?」

「思ったよりクラスのみなさんに、話しかけられました!」


 俺が答えた途端、アリスさんが可哀想な子を見るような目で俺を見てきた。

 そんなに俺はダメだったか?!


「今までお友達はいなかったのですか?」

「私はダンピールですから、友達は一人だけでしたよ。……あ、いえ二人にしておきましょう」


 友達と聞かれて真っ先にテンペさんが思い浮かんだが、一応レイアードさんも友達カテゴリに入れておいてやるか。

 これも武士の情けだ。


「……二人ですか」

「で、でも今は三人ですよ!」


 俺が答えた途端、またもやアリスさんに可哀想な子を見るような目で俺を見てきた。

 そんな俺は、救いの女神を見るようにアリスさんを見つめ返す。


「え? 一人増えたのですか、どなたです?」

「ア、アリスさぁぁぁぁんっ!」

「ふふっ、私を含めて三人ですね」


 ああ、この人Sだ。絶対Sだ。


「アリスさんは意地悪ですよね」

「そんなことないですよ?」


 と俺とアリスさんが楽しい会話をしていると、後ろからついてきている二人の会話が耳に届いた。


「……あんなに仲がいいとは」

「アリスさま、よほどかれんなびしょうじょを気に入ってるにゅ」

「あいつ昨日きたばかりだろ? アリスがあれほど他人に話してる所なんて初めて見たぜ」

「アリスさまは、えるはんどですら相手しないにゅ」

「……一応、俺は幼馴染なんだけどな」

「おやが知り合いなだけの、あかのたにんにゅ」

「がーんがーんがーん……」


 何やらエルハンドが、果てしなきショックを受けているようだ。

 俺には関係ないからいいけどさ。


「ところでアオイさん」

「はい、どうしました?」

「実は温泉が近くにあるのですが、今夜にでもいきませんか?」


 おん……せん……だと?!

 魔大陸にいたときは、風呂なんて当然ないから川で適当に洗っていた。

 おばあさんの家も、一般家庭に風呂はないので井戸水で流す程度だった。

 シャワー派の俺だが、やはりたまには熱い湯に浸かりたいものだ。


「いくっ!! ぜひアリスと混浴し……」

「エルハンドさんには聞いていません」


 突如復活したエルハンドがいきなり会話を割って入ってきたけど、アリスさんによって一刀両断にされた。

 残念だったな!

 こういう時、同性同士は強い!


「はい! 是非いきましょう! あ、でも……」

「何かありましたか?」

「温泉ということは、魔物も出るんですよね」


 町の中に温泉はないと思うし、あるなら山のほうだよな。

 町を離れれば、街道を除けば魔物はあちこちにいる。

 そんなところへ子供だけで行くのは危険じゃないのか。


「大丈夫です。お風呂自体は結界の中にありますから。山のほうからお湯をこの町の近くまでひいてきたのです」

「それは大変だったでしょうね」

「はい、確か二十年くらいかけたそうですよ?」

「二十年……。それは長いですね」


 かなりの大事業だな。

 何十人、何百人もの冒険者が苦労して掘っていったのだろう。

 とても大変だよな。でもよくそんなにお金あったな。


「計画自体はもっと昔からありまして、元々は水の確保のためだったそうですけど、地下水を掘る技術が発達したので、暫く眠っていたそうです」

「そうなんですか? じゃあ何でまた引いてきたんでしょう?」

「水の予備はいくらあっても良い、となったみたいです」

「でも温泉を飲み水にですか」

「効用に良いらしいですしね」


 確かに温泉の水を飲むと、身体に良いとは聞く。

 これは楽しみだ。


 しかし……温泉かぁ……。


 ふとアリスさんを見る。

 温泉ということは、もちろん裸の付き合いだよな?

 五年後くらいならば是非裸のお付き合いをしたいところだが、さすがに子供じゃ見てもつまらないよな。


 …………。


「ノーラさんもいかがですか?」


 ノーラさんは十五~十六歳。ぜひ堪能したい。

 振り返って聞くものの、なぜかノーラさんが両腕で胸のところを隠した。


「かれんなびしょうじょから、よこしまな気をかんじたにゅ」

「と、とんでもないですっ! ノーラさんは私たちの護衛ですよね? ならば私たちが行くのであればノーラさんも温泉に行くべきです! いや是が非でも!!」

「しごとなのでいくしかないにゅ。でも身のふあんをかんじるにゅ……」


 よっし!

 温泉も入れるし目の保養もできる!

 もういう事無いよな!

 それに他にもお客さんがいるだろうし。


「なぁ、俺は?」

「一緒に来ていただいてもいいですけど、別々ですよ?」


 ネコミミメイドのノーラさんと一緒に温泉というところが重要なのだ。

 もはやエルハンドなどどうでもいい。


「一応混浴もあるんだぜ?!」

「お一人で堪能してください」

「がーん……」


 ワンコよ。やはり新大陸来てよかった!

 パラダイスじゃねぇか!


「では今夜お伺いしますね」

「はいっ! お待ちしております!」




 ……そしてその日の夜。




「やっぱこうなる気がしたんだよな」


 俺は女湯に来ていた。

 周りは当然、子供からお年寄りまで全員女性。

 しかし……。


 ここは水着必須だったのだ。

 がっくり。

 しかも全身を覆うような、まるで水泳競技用の水着である。

 もちろん、元の世界のようにスピードを争うようなものではないので、水の抵抗を極限に減らしたような水着ではなく、普通のワンピースをそのまま水着にしたようなものだ。

 ぜんっぜん目の保養にすらならねぇよ。

 涙が血のように流れてくる。


「どうかしましたか、アオイさん。そんなに肩を落として」

「温泉だから裸だと思ったんですけど、水着着用だったんですね……」

「? はい、山から直接お湯を引いていますし、万が一水路に魔物の毒などが紛れても安全なように、毒抵抗の高い水着を着用するのは当たり前ですけど」


 毒物?!

 そんな罠があったのか!

 くそっ、今から俺が行って水路近辺の魔物を全滅させてきてやろうか!


「それにしても、アオイさんは水着持ってなかったんですね」

「ダンピールですし、毒は殆ど無効化されますから」

「かれんなびしょうじょは、べんりなたいしつにゅ」


 ノーラさんも全く透けそうにない、ごわごわした水着だ。

 もっとぴったり張り付いてくれれば、多少なりとも目の保養になったのに。


「またかれんなびしょうじょから、よこしまな気がするにゅ」

「そ、そんなことないですよっ! ……はぁ」



 俺は夜空に輝く月を見ながら、大きなため息をついた。





暫く仕事が忙しくなるため、更新遅れます・・・

活動報告をご参照くださいませ><


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