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飴玉

交互1人称です。

 01



「私の気にしすぎだと分かってるんだよー……」

 数日前にもらったたくさんのマシュマロをつつきながら、私はリカにぼやいた。

「当たり前じゃん。男の子だもん、知るわけ無いって」

 からからと他人事のように……いや実際他人事だけど。そう言うリカが少し憎い。

「付き合って1ヶ月でしょ? たったそれだけでそんなになっちゃうの? メンタル弱すぎ!」

 普段は頼もしいずばずばと心をえぐるような言葉が、今は私の心をえぐっている。友達だと言うのに、慰めのなの字も無いのかな?

 突っついていたマシュマロをプニっと押しつぶす。もちもちしているそれはつつくと楽しい。

 ひとしきり遊んだ後で口の中に放る。なかにはストロベリーやチョコが入っていて、とてもおいしい。きっとそこら辺で買ったものじゃなくて、ちゃんとしたお菓子屋さんで買ったものなのだろう。包装とかも綺麗だったし。

「メンタル弱くないもん。むしろ強いもん!」

 マシュマロの味については、全く問題ないのだ。味については。

「本人に直接言ってみたらどうなの?」

「無理……」

「ちっ。付き合いだした途端これだから!」



 02


 最近、ナナが少しそっけないような気がする。

 俺は引越しの荷物を片付けながらそう考えた。

 そっけないと言うのは、少し違う。そっけないと言うか、なんか微妙に悲しそうな顔をしていると言うか、なんというか。

 俺と一緒に居るのがいやなのだろうか。でもだったらきっとデートに誘っても断られるし。

 乙女心を理解して挙げられない俺が原因なのだろうか。

 素直に聞けばいい、なんて思われるかもしれないけれども、男のプライドが邪魔して聞けない。つーか、答えなんか聞かなくてもナナを理解できるようになりたいと言うのが本音だ。

 服が入っている箱を開けて、クローゼットにしまっていく。

 ともあれ。

 そんな風に考えている時間がないことくらい分かっている。だって社会人になったら余計に時間が合わなくてすれ違いになりそうだし。今まで散々と遠回りしてきた分、これからはナナといちゃつきたいし。

 会うたびになにか窺うような視線をもらうのはもう嫌だ。

 考えたら即実行。

 俺は荷解きをやめてケータイを出しナナに電話をかける。

『もしもし?』

「ナナ? 俺だけど」

『うん? どうしたの?』

「明日、暇?」

『……暇だよ』

 こたえるまでにわずかに間があった。予定を確認していたのかもしれないけれども、俺には会おうかどうか迷っているようにしか感じられなかった。

「じゃあさ、デートしよう?」

『いいけど。どこに行くの?』

「……決めてない。決めてないけど、明日までに決めておくから。10時に、駅の前で」

『わかった』

 あまり乗り気ではない声。なにか言おうとしたが、とっさに言葉は出てこない。何かを言う前にナナは電話を切ってしまった。

 むなしく機会音を鳴らすケータイを凝視して、思いっきりソファに投げつけた。


 ***


 遊園地に行くことにした。

 映画とか水族館とか、動物園とか。ほかにいろいろ考えたけれども、ナナとの曖昧な壁を壊すのには遊園地だとおもう。勿論、絶叫系とか怖がって抱きついてくれるといいななんて下心もあったけれど。

 行き先を告げなかった(と言うか決めてなかった)せいか、ナナはワンピースだった。絶叫系に乗ったときに、スカートが捲れてしまうかもしれない。

「どこ行くの?」

「遊園地」

 場所を変えたほうがいいかもしれないと考えたけれど、質問されて無意識に答えてしまった。

 けれど、ナナの目が輝いたのがわかる。

「遊園地、好きだよっ」

 さっきまで少し憂い顔だったナナが喜んでくれているのがわかって、俺の気分も向上した。


 ジェットコースター、コーヒーカップ、お化け屋敷、ゴーカート、ボート。ナナは遊園地が相当好きみたいで、乗り物を全制覇する勢いで乗っていった。逆に俺のほうが疲れるくらいで。

 何回目かのジェットコースターに乗った後、さすがに疲れて空いているベンチで休んでいると、ナナは買ってきたらしい飲み物を俺に手渡した。

「あの……、ごめんね?」

「いや。こっちこそ、すぐにばててごめん」

「ううん。友達と来てもみんなすぐにばてちゃうから、何回も一緒に乗ってくれて嬉しい」

 少しだけはにかみながら告白するナナ。それはとても可愛らしいのだが、いかんせん、彼女はタフだ。

「……お昼だね」

「だな」

「一応……お弁当作ってきたんだけど、食欲、ある?」

「ある!」

 本当はなかったけれど。いや、その言葉を聞いた途端に沸いたんだけど。

「良かった。……はい。どうぞ」

 バッグの中からナナは弁当と箸を渡す。

 中を広げると、食欲をそそる香りがした。から揚げにポテトサラダ。ご飯、ウインナ、卵。入っているのは一般的なものが多いのに、ナナが作ったと言うだけで、今まで食べたもののなによりもおいしいと感じる。

 弁当に喰らいつく俺を見てナナも安心したのか、ナナもちまちまと弁当を食べ始めた。


 その後もナナに振り回されながらも乗り物を乗っていく。ここまで付き合う人はなかなかいないらしく、乗り物を乗るたびにナナのテンションが上がっていった。

「もう夕方! 早いね。さっき来たばかりなのにっ」

 気がつけば日は傾きかけていた。

「時間的にもあとひとつしか乗れないね。なに乗る?」

「そうだな……」

 ナナが持つパンフレットを覗き込む。ほぼ乗り物を制覇したはずだから、ナナが好きなのを選ぼうか。

 と。何回も乗ったジェットコースターを選択しようとして、旗とパンフレットを見ていた目が留まる。

「観覧車のろうか?」

 唯一乗ってないの。観覧車。考えれば最後に乗るのにはうってつけかもしれない。まだ夜じゃないからロマンチックじゃないかとも思ったけど、多分それは俺の夢の見すぎだ。



 03


 観覧車。

 私が、もっとも苦手な乗り物。

 閉所恐怖症な私は、狭い箱の中のこの乗り物がものすごく苦手だ。出来れば乗りたくない。観覧車だけは乗らないように、提案しないようにしていたのに。

 でも彼の提案したときの照れた顔を見たらいやとは言えなくて。少しずつ並ぶ列は観覧車に近づいていく。

 赤いゴンドラに乗った私たちは、最初こそ会話があったけど、だんだん会話が少なくなっていって。なにか気を紛らわそうと話しかけようとしたけど、彼が真剣な顔をしているから声がかけにくい。

 だんだん時間が経つにつれ、私の恐怖心がマックスになっていく。

 沈黙にも密室にも耐えられなくなった私は、冷静さを失って目にいる彼に抱きついてしまった。

「うぉ? ナナ!?」

 彼は勢いよく飛びついた私を驚きながらも受け止めてくれた。

「ど、どうした?」

「せ、狭いところにがてでっ」

「あ、ああ。なるほど。だから観覧車一度も乗らなかったんだ」

 刻々と必死で首を振ると、あやすように背中を撫でられた。

「な、なにか話して……」

 抱きついたまま、私は彼にお願いする。

「えっと、じゃあ。今話すようなことじゃないんだけど」

「うん」

「最近、俺、ナナに避けられているような気がするんだけど……気のせい?」

 確かに今話すことじゃない。けれど、今の私にはなにか会話があるだけで安心した。受け応えはほぼ無意識だったけど。

「マ、マシュマロ」

「え?」

「ホワイトデーにマシュマロくれるから、き、嫌いなのかなって」

「……ごめん、ちょっと良くわかんないんだけど」

 彼が首をかしげたのがわかる。

「クッキーが友達でいようで、飴玉が好きです。マシュマロが、嫌い」

「なにそれ? 花言葉みたいな?」

「うん。チョコレートのお返しの、言葉。マシュマロ渡すから、嫌いなのかなって。男の人がそう言うの理解してないって思ってたけど、でも実は知っててあえて渡してるのかなぁみたいな」

 文脈ははちゃめちゃに私は言い募る。

「俺がマシュマロ渡したの、ナナのほっぺがぷにぷにだなって思ったからなんだけど……」

 そう言って、私の頬を軽く摘む。

「ぷにぷにじゃないにょ」

「はは。いつまでも触っていたくなる柔らかさだし。でも良かった。ナナに嫌われてなくて」

「私も嫌われてなくてよかったよ……」

「じゃあ。改めて言うけど。ナナ、好きです」

「……私も」


 いつの間にか恐怖心は消えていて、彼の上に座ったまま楽しくお喋りす続けるのだけれど。

 観覧車が地上に戻ってきたとき。扉を開けた係員さんがものすごく怪訝な顔してきて、わたしたちは自分たちの体勢を思い出して慌てて観覧車を降りた。


 その数日後、私の家に、色とりどりな飴が大量に届くのはまた別の話。


長らくお待たせして、やっとかけました。そして彼の名前が一度も出てこなかったという・・・。

ずっと書こう書こうと思ってて、なんとなく納得がいかなくなりそのまま書かなくなり・・・。危うくエタルところでしたがなんとか書ききる事が出来ました。その代わりにかけ足になってる感が否めませんが。

この話については、もう少し時期を置いて、修正と加執をする予定です(今やっても多分何も変わらないので)それでもちょこちょこと付け足すだけですが。


お気に入り登録して下さった方々、お待たせしてすみません。

読んで下さった方々、ありがとうございました。

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