親友〜由里〜
由里ちゃん目線のお話です。
では、どーぞ!!
うちには、友達なんていない。
『由里ちゃん、あたし達親友だねっ』
吐き気がする。虫ずが走る。
親友?なにそれ。
うちに得でもあんの?
本気で言ってんの?
本気で言ってるとしたら、あんた愚かだな。
「うん、そうだね」
しかし、思っていることとは反対の言葉を口にする。
内心とは全く裏腹なことを言っている自分に、嫌気がさした。
自分はもしかしたら、人を好きになることができない人間なのかもしれない。
由里はいつからか、そう思うようになっていた。
実際、それ以降も人を好きになることなんてなかったし、心のどこかで他人を見下していた。
だから、これから先もずっと″そう″なのだと思っていた。
りさと会うまではーー。
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りさと初めて言葉を交わしたのは、高校に入ってすぐの頃だった。
その頃、由里は他人を信頼することもなく疲れ果てていた。
けれど、ずっと見せかけだけでも笑顔でいたし、人には優しく接していたつもりだから、自分が
″そう″なのだとばれない自信はあった。
その日は、日直でたまたま学校に残っていた。
そこで、同じく先生からの課題を残ってしていたりさと会ったのだ。
「あれ?由里ちゃん。
残ってなにしてるの?」
・・・・ちゃん。うちに、ちゃんづけするのはあんただけだよ。
と、密かに思う。
なんたって、カッコイイと騒がれることはあれど、可愛いなんて言われることはなかった。
みんなうちのことは苗字か呼びすてだった。
だから、ちゃんづけで呼んでくるりさは新鮮だった。
今思えば、それがりさに
興味を持ち始めたきっかけなのかもしれない。
「由里ちゃんは、可愛いよ」
「・・・・・・」
いつの間にやら目の前に来ていたりさが言った。
不意を打たれて、つい黙ってしまった。
なにもかも見透かすかのような、真っ直ぐな瞳をしていた。
由里が″そう″だということも見透かされているような気がした。
「・・・そんなわけ、ないよ」
ようやく口から出てきた言葉は、小さく、かすれていた。
「可愛いよ。今の由里ちゃんはそう思えなくても。ーーー由里ちゃんならきっと大丈夫」
ーー大丈夫。
なぜだか、その言葉に泣きたくなった。
この子なら理解してくれるかもしれない、不思議とそう思った。
そんな出会いから、数日後。
うちらは、よく話すようになった。
何故かはわからないけれど、りさの傍にいるとほっとした。
素の自分を隠さないですむような、そんな気がした。
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今うちの前で泣いて話しているりさがいる。
どうやら、昔の幼馴染みとやらに迫られたらしい。
どう声をかければ正解なのか、由里にはわからなかった。
普通の親友なら、抱きしめて、大丈夫だよ、って声をかけるものなのかもしれない。
けど、うちは・・・。
話を聞いていてイライラした。
自分以外の人がりさに触れたということが、許せなかった。
その思いからか、今まで隠してきた思いが溢れ出てきた。
「じゃあ、うちがその人を殺してあげる」
口から自然と出てきた言葉に自分でも驚いた。
あぁ、うちはこんなにもりさが好きだったんだ。
改めて自分の思いを実感したような気がした。
それからはもう、止まらなかった。
「うちはずっと前から、りさが好きだったよ」
言ってしまってから後悔する。
ずっと隠してきたのに・・・・。ただ、りさの傍にいられれば、それで充分だったはずなのにーーー。
親友失格、だよね?
自分がどんな表情をしているのかもわからなかった。
声をあげて泣いてしまいたいのに、天の邪鬼な自分がいて、笑顔の仮面を被る。
もう親友には戻れない。
それだけはわかったから、由里は思いのたけをりさにぶつけた。
深くキスをして、自分だけのものにしようとした。
りさの怯えた顔が見える。
その顔を見て可愛いと思う自分はやっぱり異常なのかもしれない。
このまま、りさをめちゃくちゃにして、傷つけて傷つけてうちのことを忘れられないようにしたい。
由里はそう思った。
好きだよ、りさ。
好きで好きで好きで。
どうしようもないんだよ、りさ。
うちはどうすればいい?
最初から、りさを傷つけたい訳じゃなかった。
それは本当なのに。
りさ、助けてーー。
由里ちゃん、どーでしたでしょうか。
抑えられない気持ちって、だれにでもありますよね?
まぁ、暴走具合にもよるかもですが・・・。