執着
話が、暗い方にいってしまった気が・・・。
如何にもな雰囲気に腰が自然と引けてくる。
「お化けなんてないさ・・・・・。ひゃっ・・・!!」
怖さをごまかそうと歌っていると、矢が刺さったお侍さんがいた。
「ごきげんよう、お侍さん。今日の調子はどう?」
「いや、侍の人形に調子もどーもないだろ・・・」
いきなりのお侍さん登場に動揺しつつ言うと、もう何度目かの康介の呆れ顔が返ってきた。
「・・・もう一度言うけど、怖いなら、素直に怖いって言りゃいいのに」
「先輩、なにか言いましたか?」
「・・・・・・・」
危機に陥ったかのような形相だ。
「まぁ、行こうぜ。ーーあ、このお化けすげえ」
ごまかそうとしてそのお化けを指差し、康介は目を奪われた。
そこにいたのは、人の半分の大きさしかないが、精巧に作られた、ひとつ目小僧だった。
着ているものはもちろん、目や指一本一本に及ぶまで見事な作りだった。
りさもその人形を夢中になって見ていると、
ーーかさっ。
視界の隅で、何か黒い影が動いた気がした。
「・・・・・・・・?」
りさは気になって、まるで誘われているかのように、その音の方へ歩きだした。
「・・・・・・・手?」
そこには、手があった。白く滑らかな手。
リアルで、今にも動きだしそうな手である。手首から腕の部分は、暗さと覆い被さっている布のせいで、よく見えない。
「これも、驚かすための置物かなにかかな?」
りさは呟きながら、その手をなおも眺めた。
本当に動きだしそうな手・・・・・。
りさはその精巧な手に触れてみたくて、そっと手を伸ばした。
りさの手と、その白い手が後少しで触れそうなその瞬間・・・・。
「見ーつけた」
「・・・・・ひゃっ」
誰もいないと思っていた方角から声がして、りさは後退った。
そんなりさに、今まで置物だと思っていた精巧な手が、手首を掴まえてきた。
「・・・・・・っ!!」
悲鳴をあげそうになると、伸びてきたもう一本の手がりさの口を塞いだ。
「しー。・・・静かに、僕だよ」
聞き慣れた声だ。
りさは横目で相手を見ると、予想どうり悠の姿があった。
「悠?・・・・なんでこんなところに?」
口を塞いでいた手を離してもらい、そう声をかける。
「りさ、わからない?」
そう話す悠は、怒っているようである。
「・・・・・わからない」
りさは素直に(小さい声で)そう言うと、悠の機嫌がさらに悪くなった。
「わからないなら、りさ来て」
「えっ、悠ーー?」
悠は強くりさの手首を掴んで、歩きだした。
「悠、痛い。康介がまだあっちに・・・・・」
「うるさいっ!!
僕と一緒にいるのに、他の奴の名前なんか呼ぶなよ」
「・・・・・・」
本気で怒っている様子にりさは驚いた。
今まで見てきた悠は、りさの前ではすごく優しかったからだ。
「・・・ごめん」
その横顔が冷ややかなのが怖くて、なにを怒られているのかわからないけれど、りさは謝った。
「ーーー許さない」
「え?」
先程の場所から結構離れた場所で立ち止まると、悠はそう口にした。
その予期せぬ言葉に、りさは黙るしかなかった。
「なんで、あいつの誘いになんかのってこんな所に来てるの?
・・・・約束、したよね。ずっと傍にいてくれるって。
あれ、嘘だったの?」
「ち、違う!
嘘なんかじゃない」
悠はりさにゆっくり近づいてきた。
りさもその分後退ると、後ろの壁に背中があたった。
悠は手を伸ばして、りさを挟むように、壁に手をつけた。
それはまるで、一生逃がさないとするかのようだった。
「じゃあさ、他の男と遊びになんか行かないでよ。・・・・りさは僕だけを見てればいいんだから」
執着。その言葉の意味を、本当にわかったような気がした。
怖い。
誰かを好きになるのは、もっとキラキラしたものなんじゃないのか。
りさはそう思った。
「ねぇ、聞いてる?」
「う、うん」
小首を傾げて尋ねる悠に、りさは頷くことしかできなかった。
「へぇ、僕に嘘を吐くんだ」
悠はりさの手首を強くつかんだ。
爪が食い込むほど強く握られて、りさの口から短い悲鳴が出た。
「ーーーっ。悠、痛い」
「ん?
もっと痛くしてほしいの?」
「ーーーっ!!」
さらに強く握られた手首に、りさは顔を歪ませた。
もう、指に血が行き届いていないかもしれない。
ドンっ。
りさは精一杯の力を振り絞って、悠を突き飛ばした。
「ご、ごめんーー」
それだけ言うと、りさは駆け出した。
ともかく、一刻も速くここから離れたい。
りさはそう思った。
暗く時折現れるお化けに怯えながらもりさは出口に向かった。
ーー悠は、一体どうしてしまったの?
その疑問だけが、りさの心をうめつくしていた。
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悠は先程までりさに触れていた手を握りしめた。
「りさの香りだーー」
鼻に寄せ、顔を緩める。
しかし、さっきのりさの様子を思い出して顔をしかめた。
「りさは僕のものだ」
揺るぎない決意を、悠は誓った。
どうでしたでしょうか?
悠の本性が出てきた話だったのですが。
キャラ達が絶賛暴走中です。
これからどうしましょう・・・・。




