第二十章 最終決戦
作戦開始の日が来た。
夜明け前。連合軍主力部隊が、イグニス工廠に向けて進軍を開始した。
「全軍、前進!」
グレンの号令のもと、百五十機の甲型が一斉に動き出した。
「帝国軍、迎撃に出ました!」
「予定通りだ。陽動を続行!」
その頃、正義たち潜入部隊は、工廠の裏手にいた。
「ここから入る」
マルコが、岩壁の陰に隠された排水口を指さした。
「廃水を流す管だ。中は狭いが、人間なら通れる」
「よし、行こう」
三人は、排水口に身を滑り込ませた。
管の中は、悪臭に満ちていた。汚水と錆の匂い。
「……最悪だな」
エルザが、顔をしかめた。
「我慢してくれ」
正義は、先頭を進んだ。
マルコの情報通り、管は工廠の内部に繋がっていた。
「ここで上がれる」
梯子を登り、格子蓋を押し上げる。
そこは——
「倉庫、か」
薄暗い空間に、大量の部品が積み上げられていた。
「魔力炉は、どっちだ」
「こっちです」
マルコが、先導した。
三人は、警備の隙を縫って、工廠の奥へと進んだ。
「見張りが多いな」
「当然だ。ここは帝国の心臓部だからな」
やがて——
「あれだ」
正義の目の前に、巨大な構造物が現れた。
直径十メートルはあろうかという、球形の装置。青白い光を放ち、低い唸りを上げている。
「魔力炉……」
「あれを、破壊すればいいのか」
「ああ。だが——」
正義は、魔力炉の周囲を見回した。
「簡単には壊せそうにないな」
魔力炉は、厚い金属の壁に囲まれていた。普通の武器では、傷もつかないだろう。
「どうする」
「内部に入る」
正義は、魔力炉の基部にある小さな扉を指さした。
「あそこから入って、内部の制御装置を破壊する」
「危険すぎないか」
「他に方法がない」
正義は、扉に向かって歩き出した。
扉を開けると、強烈な魔力の波動が体を打った。
「うっ——」
「マサヨシ!」
「大丈夫だ……」
正義は、歯を食いしばって前進した。
内部は、複雑な配管と水晶の柱で満たされていた。青白い光が、脈打つように明滅している。
「制御装置は……」
中央に、一際大きな水晶柱があった。その根元に、操作盤のようなものが見える。
「あれだ」
正義は、操作盤に近づいた。
だが——
「ここまでだ」
背後から、声がした。
振り返ると——
黒いローブを纏った人物が、立っていた。
「よく来た、異世界の技術者よ」
「……誰だ」
「私は、この工廠の総技師長。そして——」
フードが外され、その下から——
白い髪の、老人の顔が現れた。だが、その目は——
「この世界に、『技術』をもたらした者だ」
「何……?」
「お前と同じだよ。私もまた、異世界から来た」
正義の全身に、衝撃が走った。




