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第十三章 試作一号機

セキュリティを強化してから、一か月が経った。


ついに——


「完成だ」


正義は、工房の中央に佇む巨大な影を見上げた。


高さ、約六メートル。人型の機械。


カルダニア初の国産魔導兵器、試作一号機だった。


「……すごい」


エルザが、息を飲んだ。


「本当に、できたんだ」


「ああ」


正義は、機体の表面を撫でた。


帝国の兵器とは、全く異なるデザイン。無駄を削ぎ落とした、機能美を追求したフォルム。


「帝国の兵器は、『力』で押すタイプだ。でかくて、重くて、強い」


正義は、説明した。


「対して、こいつは『速さ』と『効率』で勝負する。軽くて、速くて、燃費がいい」


「勝てるのか、これで」


グレンが、真剣な顔で聞いた。


「わからない」


正義は、正直に答えた。


「だが——試してみる価値はある」




試験稼働の日。


リリアナが、王国から数名の技術者を連れてきた。


「この機体を、評価させていただきます」


「お願いします」


正義は、コックピットに乗り込んだ。


「まず、基本動作から」


操縦桿を握る。魔力を流し込むと、機体が「うなり」を上げた。


「起動、確認」


正義は、ゆっくりと操縦桿を動かした。


機体の右腕が、上がった。


「右腕、動作確認」


続いて、左腕。両脚。頭部の旋回。


全ての動作が、スムーズに行われた。


「……基本動作、問題なし」


正義は、次の段階に進んだ。


「歩行テスト、開始」


機体が、一歩を踏み出した。


ガシャン。


重い足音が、工房の外に響いた。


「二歩目……三歩目……」


機体は、ゆっくりだが確実に前進していた。


「歩行、安定」


外で見ていたエルザが、歓声を上げた。


「やった! 動いてる!」


だが——


「待て」


グレンが、険しい顔で機体を見つめていた。


「左膝関節に、異音がある」


正義も、気づいていた。


ギリギリギリ……という、金属がこすれる音。


「……停止する」


正義は、機体を止めた。


そして、コックピットから降り、左膝を確認した。


「……軸受けに、焼き付きの兆候がある」


「焼き付き?」


「潤滑が不十分だったんだ。このまま動かし続けたら、関節が動かなくなる」


正義は、眉をひそめた。


「設計ミスだ。俺の」


「どうするんだ」


「一度、分解して修正する。二、三日かかる」


リリアナが、近づいてきた。


「……問題が、発生したのですね」


「ええ。すみません」


「いいえ」


リリアナは、首を振った。


「これが、試作の意味です。問題を見つけて、直す。それを繰り返して、完成に近づける」


「……お言葉、ありがたいです」


正義は、頭を下げた。


「必ず、直します」




三日後。


膝関節の設計を見直し、潤滑システムを改良した。


「再試験、開始」


今度は、異音は発生しなかった。


機体は、スムーズに歩行を続けた。そして——


「走行テスト」


正義は、出力を上げた。


機体が、走り始めた。


「おおおお!」


エルザが、歓声を上げた。


「速い! めっちゃ速い!」


帝国の兵器より、明らかに速かった。軽量化が、功を奏していた。


「最高速度、時速四十キロメートル」


正義は、計測結果を確認した。


「目標値を、クリア」


だが——


「まだだ」


正義は、機体を止めた。


「武装テストが、残っている」




武装テスト。


機体の右手に、巨大な剣を装備させた。


「斬撃テスト、開始」


正義は、剣を振り下ろした。


ズガァン!


地面に、深い溝が刻まれた。


「威力、問題なし」


だが——


「バランスが悪い」


グレンが、指摘した。


「剣を振った後、機体がふらついている」


「ああ、気づいていた」


正義は、頷いた。


「重心補正のプログラムが、追いついていない。これも、修正が必要だ」


「いつまでかかる」


「一週間……いや、二週間」


リリアナの顔が、曇った。


「二週間……」


「何か、問題が?」


「……実は、帝国が動き出しているという情報があります」


正義の目が、鋭くなった。


「どういうことですか」


「国境付近に、帝国軍の動きが見られるそうです。偵察部隊かもしれませんが……」


「本格的な侵攻の、前兆かもしれない」


「はい」


正義は、機体を見上げた。


「……急がなければ」



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