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妄想を愛せ  作者: 大山ヒカル


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8/10

 気持ちのいい朝日が、カーテンの隙間から差し込んでいた。

 柔らかな光に瞼を撫でられ、結生はゆっくりと目を覚ます。


 寝癖を直し、私服に着替える。鏡の前に立つと、無意識に髪を整えた。

 鏡越しに自分と目が合う。

 そして、少しだけ口角を上げてみた。


「よし!」


 自分を鼓舞するように声を出すと、隣の部屋へと向かった。

 ドアの前で立ち止まり、一度息を吐く。

 咳払いをして、喉の奥にこもる緊張を飲み込む。


 そして、静かにノックをした。


 ――コンコン。


「愛、起きてるか?」


 すぐに、明るい声が返ってきた。

「うん、いま開けるね」


 ドアが開くと、白いワンピース姿の愛が立っていた。

 柔らかな布地が朝の光を受け、ほのかに透けて見える。

 髪を軽く結び、ほほ笑む彼女の姿は、まるで春の風景そのものだった。


「そ、その服。似合ってるな」

「そうかな?えへへ、ありがとう」


 不器用に褒めながらも、胸の奥があたたかくなる。

 結生は少し目を逸らし、言葉を探すように続けた。


「その、今日。よかったら一緒に出かけないか?」

「うん、一緒にお出かけか。うれしいな」


 満面の笑み。

 その笑顔を見ていると、結生は思わず息を忘れそうになる。


「どこか行きたいところはあるか?」

「結生と一緒ならどこでもいいよ」

「どこでもって言われると難しいな」

「だったら、一緒にお買い物に行きたい」


「そんなのでいいのか?」

「うん」

「それじゃあ下で待ってるから、準備できたら声かけてくれ」

「わかった!」


 元気よく返事をすると、愛はドアを閉めた。

 その音を背に、結生は大きく息を吐く。


「ふぅー……よし」


 リビングに入ると、トーストの焼ける香ばしい匂いとテレビの音が混ざり合っていた。

 母親がソファに腰を下ろし、ニュース番組を眺めながらパンをかじっている。


 彼女の視線が結生に向けられる。

 次の瞬間、からかうような笑みが浮かんだ。


「あら、なに。どうしたの、朝早くからそんなオシャレしちゃって」


 結生は苦笑しながら椅子に座る。

「べつにオシャレとかしてないけど」

「だってその髪の毛とか、アイドルみたいにしちゃって」


――この絡み、面倒くさいなぁ……。


「べつに、いつもと変わらないし」

「そう?カッコイイじゃない」


 母親の言葉に苦笑いを浮かべながら、結生はトーストの欠片を指先でつついた。

 そのとき、廊下から軽やかな足音が響いてくる。

 まるで風の音が近づいてくるように――。


 ドアが開き、愛がリビングに入ってきた。


「結生、準備できたよ」


 その瞬間、空気が変わった。

 いつもの学生服とはまるで違う印象だった。

 白いワンピースが柔らかな光を反射し、襟には小さなフリルがついている。

 それは幼さを感じさせるどころか、愛の清らかさをいっそう引き立てていた。


 髪は後ろでひとつに結ばれ、首筋をなぞるように細い髪が数本こぼれている。

 その仕草一つひとつが自然で、息を呑むほど綺麗だった。

 いつもは無邪気な少女に見えた彼女が、その日だけは少し大人びて見えた。


 結生は言葉を失い、ただその姿を見つめた。

 何かを言おうとして、喉の奥で声が詰まる。


 そんな二人の様子を見て、母親は口元を押さえきれずに笑みをこぼした。


「あら、あらあら。あらあらあらあら。あらあらあら」


 まるで芝居がかった台詞のように繰り返す声。

 リビングの空気が一気に照れくさくなる。


 結生は顔を赤くしながら立ち上がると、逃げるように愛の手を引いた。

 愛は驚きつつも嬉しそうに微笑んで、結生の後をついていく。


「あれ、ちょっと結生?」


 母親の呼びかけを背中で聞きながら、二人は玄関を出た。

 ドアが閉まる音の直後、明るい声が追いかけてくる。


「いってらっしゃい、楽しんでくるのよ!」

「はーい!おばさん、行ってきます!」


 外の空気はひんやりとしていた。

 朝の光が白く街を包み、どこか遠い世界のように静かだった。

 家を出てすぐ、二人の手が自然に触れ合う。

 そのまま、ためらいもなく指が絡んだ。


 愛の手は温かく、小さくて柔らかい。

 結生はその温もりを確かめるように指を軽く握った。

 自分が生きているという実感が、ようやく少しだけ戻ってくる。


「どこか行きたいお店とかあるのか?」

「うーん」

「とりあえず繁華街まで行ってみるか」

「うん!」


 並んで歩き出す二人の影が、朝の石畳に長く伸びていく。

 鳥の声、車の音、遠くの笑い声。

 どの音も、今日という一日の始まりを祝福しているようだった。




 石畳の歩道がどこまでも続いていた。

 両側には雑貨屋やカフェ、ブティックが軒を連ね、通りには焼き菓子の甘い香りが漂っている。

 休日の街は賑やかで、家族連れやカップルの笑い声が絶えなかった。


 そんな喧騒の中で、結生と愛は自然と手を繋いで歩いていた。

 時折すれ違う人の肩がかすめても、不思議と二人の歩調は乱れない。

 ただ指先の温もりを確かめるように、互いの存在を感じながら前へ進む。


「わあ、あそこ見たい」


 愛が指さした先には、ガラス張りのアクセサリーショップがあった。

 陽の光を受けて、ショーウィンドウの中の装飾品たちが宝石のように瞬いている。

 愛は子供のような笑顔を浮かべると、結生の手をぐいと引いた。


 一歩店内に入ると、冷たい空気と香水の甘い香りが迎えてくれた。

 壁一面に吊るされたピアスやネックレスが、光を反射してきらめいている。

 愛は目を輝かせながら一つひとつ覗き込んだ。


「へぇー、かわいいのがいっぱいあるね」

「確かに、いろんなのがあるんだな」


 結生も並んだ棚を眺めながら、そんな彼女の横顔に目を向ける。

 愛の瞳にはガラス越しの光が映り込んでいて、まるで星を閉じ込めたようだった。


 ふと、彼女の視線がある一点で止まる。

 小さなブレスレット。シンプルなデザインの中に、ひとつだけハートの飾りがついている。

 結生はその視線を追い、そっと言った。


「それ、愛に似合うな」

「えへへ、そうかな?」


 声のトーンが少しだけ弾む。

 愛は頬を染めながら、指先でそっとブレスレットを触れた。


 結生はそのまま商品を手に取り、迷いなくレジへ向かう。

 会計を済ませて戻ると、袋を差し出した。


「記念にプレゼントするよ」

 そして愛に手渡した。


「えええ!いいの?」

「ああ、もちろん」

「えへへ、ありがとう結生」


 照れながらも、愛の笑顔はまぶしかった。

 その笑みを見ているだけで、胸の奥がくすぐったくなる。


「つけてみたら?」

「いいかな?」


 愛は丁寧に袋を開け、ブレスレットを取り出す。

 細いシルバーのチェーンが光を受けて揺れ、小さなハートがその中心で輝いた。

 彼女は腕にそれをそっとつけ、手首を掲げてみせる。


 太陽の光が窓から差し込み、ブレスレットの金属がきらりと反射した。

 その光が愛の頬に当たり、一瞬だけ、天使の輪のように見えた。


「結生、ありがとう」

「お、おう」


 笑顔の愛に、結生は一瞬息を呑んだ。

 喉が乾いて、言葉が出ない。

 それでも、どうにか絞り出すように返事をする。




 それから二人は、街をゆっくりと巡った。

 ビルの上階にある都市型の小さな水族館では、青白い光に包まれながら、ガラス越しに泳ぐ魚たちを眺めた。

 水槽の中でゆらめく光が、愛の頬に反射して、まるで波の模様のように踊っている。

 その横顔を見ていると、呼吸を忘れそうになっる。


 次に立ち寄ったゲームセンターでは、色とりどりのネオンが絶え間なく点滅し、電子音が反響していた。

 明るすぎる照明の中、愛はクレーンゲームの前に立ち、夢中でレバーを握っている。


「あと少し! あっ、惜しいっ!」


 透明なケースの中で、ぬいぐるみが爪に引っかかっては、ゆっくりと落ちていく。

 そのたびに愛は両手を合わせて小さく悔しがった。

 結生はそんな姿を見て、思わず笑ってしまう。


「……そんなに欲しいのか?」

「うん、これ、結生に似てるんだもん!」


 愛が指差したのは、眠たそうな顔をした小さなぬいぐるみだった。

 たれ目で、どこか気の抜けた顔をしている。


「絶対、似てない」

「そうかなぁ」


 愛が身をかがめて覗き込んでくる。

 ほんの数センチの距離まで近づいた顔。

 その瞳の中に自分の姿が映っているのが分かる。


 心臓の鼓動が早くなり、耳の奥でその音が響く。

 自分でも分かるほど、顔が熱くなっていた。


 結生は慌てて視線を逸らし、無理に笑みを作る。

「ほら、次行こう」

「待ってよ、結生~」


 愛の明るい声が背中に追いかけてくる。

 その声が妙にくすぐったくて、結生はわざと歩幅を速めた。

 小走りで追いかけてくる愛の足音が、軽やかに響く。


 昼食は商店街の奥にあるドライカレー専門店。

 扉を開けた瞬間、香ばしいスパイスの香りが二人を包み込む。

 店内は落ち着いた照明で、木のテーブルにはスパイスの瓶が並べられていた。


 料理が運ばれてくると、皿の上から立ちのぼる湯気がほんのりと黄色く照らされる。

 スプーンを手に取り、愛が一口食べると、口を尖らせた。


「少し辛いかも」

「どれ?」


 結生は自分の皿にまだ口をつけていないスプーンを手に取る。

 愛のカレー皿の中央に置かれた卵の黄身をそっと割ると、濃い金色が流れ出した。


「黄身を混ぜて食べると、辛さが弱まるかも」

「ありがとう、結生」


 愛が嬉しそうに微笑む。

 スプーンでそっと混ぜながら、ほんの少し赤くなった頬が可愛らしかった。


 結生はそんな彼女を見つめたまま、店員を呼び止める。

「すみません、ラッシーひとつ下さい」

「はい、お持ちしますね」


 注文を終えると、結生は自然に愛の方へ微笑みかけた。

 その笑顔は、どこか不器用で、けれど確かに優しかった。


 愛は小さくうなずき、目を細めて笑う。

 スパイスの香りの中、二人の間に流れる空気は、ほんのりと甘かった。




 昼下がりの太陽が傾き始めた頃、大きな映画館の前に出た。

 その前には円形の広場があり、中央で噴水が静かに水を弾いていた。

 周囲の椅子には買い物袋を抱えた人々や、肩を寄せ合う恋人たちの姿がある。

 二人もその一角に腰を下ろした。


 水の音が、都会のざわめきを柔らかく包み込む。

 風に乗って、噴水の霧が頬をくすぐった。

 愛はベンチに座りながら、両手で紙袋を抱き、ぼんやりと噴水を見つめている。

 結生も同じ方向を見つめながら、胸の奥で言葉を探していた。


 そして、ふと、口をついて言葉が漏れた。


「愛、いつもありがとうな」


 愛は瞬きをして、ゆっくりと結生の方に顔を向けた。

 穏やかな風が二人の間を通り抜ける。


「どうしたの、急に」

「いや、愛が一緒に居てくれると、ほんと楽しいよ」


 そう言う結生の声には、照れと、ほんの少しの震えが混じっていた。

 愛は柔らかく微笑む。

「えへへ、今日はなんだか結生がいっぱい褒めてくれるね」

「本当にそう思ってるんだ」


 愛の笑顔が、午後の日差しの中で揺れる。

 噴水の水しぶきが光を散らし、二人の足元に虹を作った。


 ――桐井の告白を聞いてから、結生の世界は変わっていた。

 みんなの存在が、自分の命よりも大切だと、心の底から思えた。

 それは、言葉ではなく“感覚”として確かにあった。


 結生は立ち上がると、そっと愛に手を差し出した。


「愛、行きたい場所があるんだけど。いいかな?」

「うん!」


 愛が立ち上がり、結生の手を握る。

 二人の影が、噴水の水面に重なり、ひとつになって揺れていた。




 二人は繁華街を抜け、住宅地の奥へと歩いていった。

 夕方の風は少し冷たく、昼間の熱気を静かに押し流していく。

 やがて、人気の少ない小さな公園にたどり着いた。


 ブランコと鉄棒しかない、小さな公園。

 公園の片隅に置かれた街灯が、まだ灯っていない。

 空はオレンジ色に染まり、遠くの屋根の向こうでは太陽がゆっくりと沈もうとしていた。


 ブランコの周りを囲む低い鉄の柵。

 二人はその柵に並んで腰を掛けた。

 金属の冷たさがジンと太ももに伝わる。

 風が、どこか懐かしい匂いを運んできた。


「愛……」

「なあに?」


 結生は立ち上がり、愛に向き直る。

 その言葉は想像していたよりも自然に、容易く声に出ていた。


「俺、愛のことが大好きだ」


 夕焼けの光が、愛の瞳に映り込む。

 その瞳の奥で、小さく笑みが揺れた。


 愛は立ち上がると、優しい笑みを向けた。

「私も結生のこと、大好きだよ」


 二人は自然とお互いの身体を抱きしめた。

 細い腕の中に、温もりが確かにあった。

 風も音も止まり、世界が二人だけになったようだった。


 ――その様子を、少し離れた場所で桐井が見ていた。

 夕日に染まった空の下、桐井は拳を強く握りしめて微笑む。


「よっし……お前なら出来ると思ってた」


 結生の背中が、橙色の光を浴びている。

 けれど、その背中が小刻みに震えていることに、桐井はすぐに気付いた。


「結生……?」


 静寂の中、嗚咽が聞こえる。

 結生の肩が震え、愛の肩口に顔を埋めたまま、泣いていた。


「どうした、結生……」


 桐井はゆっくりと近づきながら声を掛ける。

 結生の喉から、押し殺したような声が漏れた。


「ごめんな、愛。……俺が、愛を創ったんだ……」


 結生の声は震えていた。

 その背中を、愛がそっと撫でる。掌から伝わる温もりが、涙の熱を静かに受け止めていく。


「もういいんだよ、大丈夫だからね」


 その声は、まるで子守唄のように柔らかかった。

 言葉に含まれた優しさが、結生の胸の奥に滲み込む。


 桐井は二人の背を見つめながら、恐る恐る結生の肩に手を置いた。

「結生、どうした?」


 結生はゆっくりと顔を上げた。

 涙が頬を伝い、目の奥が赤く染まっている。


「桐井、違ったんだ。最初から間違ってたんだ……」


 結生の声は、嗚咽の合間に掠れていた。

 桐井は立ち尽くす。

 何かを言おうと口を開くが、声が出なかった。


 その時、愛が両腕を伸ばし、結生と桐井を包み込むように抱きしめた。

 三人の影が夕陽の中で一つに溶ける。


 桐井はその瞬間、理解した。

 結生の理想の女性だったはずの愛――

 その存在理由を、ずっと“恋愛”だと思い込んでいた自分の過ちを。


 桐井の胸の奥で、長く固まっていた何かが静かに解けていく。

 自分はずっと誤解していた。結生の“理想の女性”を恋愛の象徴としてしか見ていなかった。


 けれど、いま目の前にいるこの少女――彼女は“恋”ではなく、“母性”そのものだった。

 結生が心の奥で渇望していた「優しく抱きしめてくれる存在」。

 それが、この“愛”という人格だったのだ。


「これは慈愛……母性愛か……」


 桐井の唇から、思わず言葉が漏れた。

 その瞬間、愛は静かに笑みを浮かべ、結生を抱く腕にもう一度力を込めた。


「もういいんだよ。分かってるから」

「でも、愛……」

「大丈夫。私が傷つけたりしないのは分かるよね」

「ああ……でも、ごめん、愛……」

「ほら、謝っちゃダメ。結生は何も悪くないでしょ」

「でも……愛が……」


 結生の声が震える。

 その震えを包み込むように、愛はそっと微笑んだ。

 そして桐井の方を向き、まっすぐに目を合わせた。


「桐井くん、あとはお願いね」


 たった一言で、すべてを託されたと分かった。

 桐井は唇を噛み締め、堪えていた感情が決壊する。

 それでも声を詰まらせながら答えた。


「うっ……わかった、まかせろ……」


 愛はその言葉を聞くと、まるで安心したように微笑んだ。

「うん!」


 その瞬間、愛の手首のブレスレットが淡く光を放った。

 小さな光はゆっくりと彼女の腕を伝い、身体全体を包み込んでいく。

 柔らかな光は風に溶け、周囲の空気まで暖かく照らした。


 愛は幸福感に包まれながら、以前の記憶が蘇る。



********************



 愛は深いソファーに腰を下ろし、向かいの女性を静かに見つめていた。

 部屋は静かで、薄いカーテン越しに柔らかな光が差し込んでいる。

 壁際の照明が穏やかに灯り、外の音はほとんど聞こえない。


 その女性は落ち着いた声で尋ねた。

「本当にいいのね?」


 愛は一瞬だけ視線を落とし、そして小さく頷いた。

「はい。結生は強い男の子ですから。きっと大丈夫です」


 女性は少しだけ目を細め、頷く。

「そう……分かったわ」


 愛は膝の上で手を重ねながら、静かに言葉を続けた。

「ひとつだけお願いがあります」


「ええ、もちろん聞くわ」


「私はきっと見届けられない。だから、あとはあなたに託してもいいですか?」


 その声は穏やかだったが、どこか遠くを見ているようでもあった。

 女性はわずかに息をのむと、口元に微笑を浮かべる。


「分かったわ。本当にあなたって人は……」


 その言葉の続きを飲み込み、静寂が二人の間に落ちた。

 秒針の音が小さく響く。

 愛は微笑んだまま、そっと瞳を閉じる。


 まるで、すべてを受け入れるように。

 それは誰かの未来に託す者の、優しい微笑だった。



********************



 光が風に溶けていく。

 空気がやわらかく震え、耳の奥で鈴のような音が鳴った気がした。


 自分の身体が崩れていく感覚の中で、愛は声を張り上げた。


「大好きだよ、結生!」


 その言葉が空に響いた瞬間、光は一気に弾けて消えた。

 まるで夕日の残光を吸い込むように、世界から彼女の姿が静かに溶けていった。


 残されたのは、穏やかな風と、夜のはじまりを告げる街の音だけ。

 沈んだ太陽の代わりに、公園の街路灯がぽつりと灯る。

 その頼りない明かりが、結生と桐井を包み込んでいた。

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