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月の婚約者〜私の運命の相手は誰?〜  作者: 紫桜みなと
5章

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第102話【譲れない覚悟】

「夜空君に鳳鞠君まで…わっ!」


「羽闇ちゃーん、会いたかったよぉ〜♪こうして抱きしめるのは久しぶりな気がするなぁ、今朝もちゃんと抱きしめた筈なのに。」


「ちょっと…!華弦!」


深刻な状況の最中にも関わらず、激しく頬ずりしてくる華弦。

この場にそぐわない猛烈な甘え方にどう反応していいか分からず戸惑っていると、夜空君と鳳鞠君が素早く彼の襟首を掴み、私から引き剥がした。


「藤鷹君、羽闇ちゃんが困ってるから…ね?」


「羽闇にくっつきすぎだよ、華弦!」


二人の連携プレーに、華弦は口を尖らせた。


「えぇー…よぞらんもほまりんも意地悪だなー。」


「空気読めよ、華弦!俺達はこんな事しに来てるんじゃないだから!」


不満げに抗議する彼に、鳳鞠君が呆れた様に溜め息を吐く。

私は此処に三人がいるという予想外の状況にハッとした。


「…どうして、華弦達が一葉さんの家にいるの?」


「羽闇ちゃんに危険が迫っているかもしれないと感じたんだ。…この感知のおかげでね。」


夜空君はポケットから小さな小瓶を取り出した。中にはキラキラと輝く黄金の砂が入っており、ぼんやりと光を帯びている。


「これは…?」


「この砂は近くにある能力を感知する事が出来るんだ。実は君が今つけているイヤリング…その中に入っている砂と小瓶の砂のパスを繋げておいたんだ。羽闇ちゃんの身に何かあった時に、すぐに駆け付けられるようにね。」


「……え、このイヤリングにはそういう…!?」


「うん、隠していてごめんね。」


今朝のプレゼントの意味をようやく理解する。

まさか、夜空君がそんな意図でイヤリングを贈ってくれたなんて思ってもいなかった。


「それはいいんだけど…一葉さんは貴方達が来てる事は知ってるの?」


よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、華弦が再び笑みを浮かべた。


「勿論だとも♪何せ一葉君から直接頼まれてたんだ、『何かあれば宜しく』ってね。君達が此処でデートをするのも予め聞いていたのさ。…ああ見えて彼は意外と仲間を頼るのが上手いんだよ?フフッ…」


「一葉さんが…。因みにどうやって屋敷に入ったの?外には敵がいるのに…」


「入り口は裏口から!本当は正面から入るつもりだったんだけど、敵が攻撃を仕掛けてたから入れなくて…。そこでタイミングよく舞久蕗に会えて、裏口まで案内して貰ったの!事情もその時に大体聞いた!」


鳳鞠君の言葉に、私は目を見開いた。


「えっ!ちょっと待って、一葉さんと会ったの!?あの人は無事だった!?」


「うん、僕達が遭遇した時の一葉君はまだ誰とも戦ってなかったよ。真犯人を探してる最中だったみたい。」


「そっか…。」


「それよりもさぁ…」


「…むぎゅっ!」


ホッとしたのも束の間、頬にひやりとした感触がした。指先で軽くつねられている。

顔を上げると、ニッコリと笑う華弦の顔があった。…笑顔が黒いです。


「羽闇ちゃん、君って子は本当に…。一葉君に『部屋から出るな』って言われてるのに、勝手に出ちゃ駄目じゃないか。ねぇ?」


込められた力はごく僅かで、痛いというよりも小動物をからかう様な優しい感触に近い。


「ご、ごめんごめんっ!一葉さんが心配でつい…!外から大きな音も聞こえてきたし、じっとしていられなくなったのよ!」


慌てて謝ると華弦はフッと笑い、指を離した。


「心配なのは分かるけど、使用人の人達まで困らせるのはよくないよ。それに、僕達は一葉君から君を守るように頼まれてたんだからね?勝手に飛び出されたら、僕達の立場がなくなっちゃうじゃないか。」


「ええと…そうかもしれないけど…!でも、どうして私が此処を通ってるのが分かったの?こんな広い屋敷の中で…しかも私、迷子になってたのに…。」


「アハハ♪それはね、僕の作った香水のおかげだよ。」


「香水……?」


「今朝、羽闇ちゃんにつけてあげた香水だよ。実はアレには僕の華の力をほんの少しだけ込めてあってさ。羽闇ちゃんが何処にいても、僕の華の石がその力の痕跡を辿って居場所を教えてくれたわけ。ハッキリ言えば、マーキング♪」


華弦はそう言いながら、悪戯っぽくウインクする。


「ええっ!?夜空君だけじゃなく、華弦まで…!?」


「あ、だけどちゃんと愛情も込めてあるから♪この香りで少しでも僕の事を思い出して欲しかったしね。」


今朝、彼が私につけてくれた甘く神秘的な香りが脳裏をよぎる。

イヤリングに続き、香水までそんな裏が…!いや、華弦ならやりかねないか。


「俺達、羽闇の事ずっと心配してたんだよ。華弦なんて、余裕ぶった顔しておいて月光邸を出る前から微妙にそわそわしてたし!なー?華弦!!」


「いたたた…!思い切り叩かないでよ、ほまりん。痛いじゃないか。」


鳳鞠君が華弦の背中をバシバシ叩いて熱弁した。その隣で夜空君も優しい笑みを浮かべながら、うんうんと頷いている。


「火燈君の言う通りだよ。藤鷹君はね、二人がデートに出掛けてからずっとスマホを気にしててね。羽闇ちゃんの事となると、彼は誰よりも真剣なんだ。僕も君の事が気掛かりだったよ。」


「…もう、よぞらんもほまりんもそんなに僕を褒めてどうするんだい?照れちゃうじゃないか。ま、確かに羽闇ちゃんの事となると、僕もちょっとばかり冷静さを欠いてしまうけどね。それは彼女の魅力のせいというものさ♪」


華弦は照れ臭そうに頬を掻いた。彼の仕草が普段の飄々とした態度とは違っていて、何だか可愛い。


「三人共、心配してくれて本当にありがとう。こんなに私の事思ってくれて凄く嬉しい…!」


彼等の真摯な思いが心にじんわりと染み渡る。すると、華弦が私の背中にそっと手を置いた。


「話は後さ。取り敢えず、一旦部屋に戻ろう。一葉君から羽闇ちゃんを外に出さないようにと厳命されてるんだ。」


「え、でも……!一葉さんが今、敵と戦ってる筈だよ!?」


「うん…結界の外から激しい音も聞こえるし、間違いなく一葉さんは交戦している。その音を聞く度に僕も胸が締め付けられる思いだよ。」


「だったら…!」


「だけど一葉さんが頑張ってくれている今、無闇に君を外には出せないんだ…。僕達としては、君が危険な目に遭う事だけは何としても避けたいんだよ。」


一葉さんの意志を尊重しようとする強い責任感からきているのか、夜空君の表情は引き締まっていた。


「夜空の言う通りだよ!結界の外に出て羽闇が敵に捕まりでもしたら、舞久蕗の努力が無駄になってしまう。」


鳳鞠君もまた真っ直ぐな瞳で私を見つめる。

いつも明るく、冗談を言い合う彼等がここまで厳しい口調で私を制止しようとしているのは本当に珍しい。


「でも、一葉さんに何かあったらどうするのよ!?華弦や夜空君だって、前に敵の攻撃を受けて瀕死の状態になったじゃない!それが今度は一葉さんだなんて、絶対に嫌だよ!」


あの日の光景がフラッシュバックして、私の心は恐怖でいっぱいになった。

大切な人が傷つくのは、もう二度と見たくない。


「問題ないよ、羽闇ちゃん♪一葉君は僕達より遥かに強いんだ。万が一の時は、僕が一葉君を助けに行くからさ。」


華弦は私を安心させようとするけれど、胸のざわめきは収まらない。


「さあ…戻ろうか、羽闇ちゃん。使用人さんも心配してるよ。」


「嫌っ!触らないで!」


背中を軽く押してくる華弦を思い切り突き飛ばしてしまった。幸い、彼は少し体勢を崩した程度で倒れる事はなかったけれど。


「もう何も出来ない自分なんて嫌なの!私は一葉さんを助けたい!役立たずになんて絶対ならないから行かせて!」


その時、華弦の表情が険しいものへと一変した。


「……ねえ、羽闇ちゃん。いい加減にしてくれるかい?」


「っ…!」


彼の口調は普段の飄々としたものからは想像もつかない程、明確な苛立ちを含んでいた。私を見つめる視線は鋭い刃物の様で、身体が硬直してしまう。


「君はもっと聞き分けのいい子だと思ってたんだけどな…。僕達が君の身を案じて、一葉君の願いを尊重している事がそんなにも理解出来ないのかい?これ以上、彼の邪魔をするのなら僕も容赦しない。君を無理やりにでもこの部屋に留める事になるけれど…いいのかな?」


あの華弦がこんなにも感情を露わにして、私を叱りつけるなんて…。


「いいよ…!だったら私も……華弦達を倒してでも押し進むだけだから!」


迷う事なく、首元のペンダントを強く握りしめた。石から伝わる微かな温もりが、私の決意を後押ししてくれているような気がする…。

この力をもう二度と無力なまま見過ごしたりしない。

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