偽物の《強欲》
現在。
「君は諦めが悪いなぁ」レオニスが剣聖に対して呟く。
「君のような怪物を倒すのが僕の仕事なんだ。諦める訳にはいかないな」
「そうかいそうかい。そこの人間にとって君は命の恩人になる訳だ」
「そうなるね」そう言いつつ剣聖が自分が《強欲》を相手にしているうちに逃げるよう当主に言った。
「逃がすとでも?」
「君の相手は僕だよ?よそ見しないでくれ」そう言って《強欲》を強く蹴り上げると屋根を貫き、空へと飛ばされた。
「少し強く蹴りすぎたか」
「敵はどこだ!?」剣聖が部屋を出ようとした時、騎士団がやってきた。
「敵の主将は私が相手します。皆さんは住人の避難をお願いしてもいいですか?」
「あなたは?」騎士団代表にそう問われる。
「僕は《剣聖》です」
「《剣聖》様でしたか!それは安心だ」
「敵は僕に任せてください」騎士団代表は分かりましたといい住人の避難に向かった。
「僕も行くか」そう言い《強欲》が飛ばされたことにより空いてしまった穴から外へ出る。
「さて、どこに飛んだかな」しばらく見ていなかったためどこに落下したのか分からない。
「よし、まずは気配察知からかな」敵の主将だ。すぐ見つかるだろう。
「なるほど、そこか」赫焉塔。赫焉
そこに《強欲》はいる。そう思いすぐ塔へ向かった。
「まさか、こんなすぐに見つかるとは思わなかったよ」
「そうだろうね。僕も見つけるのには苦労したよ」
「まさか、君。ボクを葬れるとか思ってないだろうな?」
「僕は君を葬るために来た」
「やれるものならやってみろ!」そう言った直後、《強欲》が襲いかかってきた。
「君、弱いね?」
「そうだ、ボクは強い方ではない。弱いんだ。僕"1人だと"」
「つまり、仲間がいると?」
「君、あそこで何を見ていたんだい?」笑いながらそう言ってくる。
「そういえば、あと9人ほどいたように思えるが仲間はどこにいる?」
「さぁ、どこだろうね。ただ、ボクとこんなことしてていいのかな?騎士団がいるとはいえすぐに崩れるだろう。ボクを相手にしながら住人を守りきれるかな?」
「守ってみせるさ。それに君は今までたくさんの人を殺してきた。そろそろ報いを受けるべきだと思うよ」
「さっきから、偉そうに。ボクが何をしたって言うんだ」
「たくさんの、人を、殺してきただろ?」
「人間なんて、いつかは天命をまっとうする。ただ寿命が縮んだだけだと、なぜそう言う風に考えられない?」
「確かに人間の寿命は短い」《強欲》を殴りながらそう話す。
「君、さっきから全然というか。攻撃効いてるのかな」
「今頃気付いたのか。やっぱり君はバカだ」
「どういうことかな?」
「なんでわざわざ攻撃受けてたと思うの?なんで、こんなところでいると思う?」
「言ってる意味がよく分からないな」
「ボクには心臓がないのさ。心臓もそうだが、他の臓器もないんだよ?分かったか?だから君に勝ち目はないんだ」笑いながらそう話す
「臓器がない?じゃあ君はどうやって」魔法でこんなことができるはずが無い。考えられるとすれば加護か権能。しかし今目の前にいるのは司教だ。自分で権能を使える、、はずーー。
「そういうことか」少し考えすぎてしまったがまとまった。
「なに?分かったような顔してさぁ」
「分かったようなじゃない。分かったんだ」
「はぁ!何言ってるわけ?」
「君は司教じゃない」僕がそう話すと《強欲》の様子が変わった。
「ボクが《強欲》だ!それ以上もそれ以下もない」
「君は、僕が《強欲》を倒せないと思っているようだけど、司教じゃないなら話は変わってくる」
「なんだと?」《剣聖》は魔法を使い高次元の結界を構築する。
「こんな、馬鹿げたこと、ありえないだろ〜!」
「確かに君には心臓が無い。真の心臓はないだろう。だけど、偽りの心臓ならあるだろ?」
「何を言ってるのかな?」
「これで終わりだよ」そう言って代用していた剣で身体を切った。
「そんな、、ばかなぁ」
「これで一段落かな」《剣聖》結界を解き地上波に戻る。
しかし、トドメを刺したか確認しなかったことが後の人類にとって恐怖となることを今はまだ誰も知らなかった。
「皆さん、ひとまず脅威は去りました」
「それじゃあ!《強欲》を倒したんですか!?」
「その事なんだけど、どうやらここにいた《強欲》は本物の《強欲》では無かったんだよ」
「どういうことですか?」《剣聖》は《強欲》レオニス・アルファードが偽物の司教であったことを話す。
次の瞬間、氷の柱が立った。
「今度はなんだ?」
「皆さん、はじめまして。私は《強欲》の枢要司教。エメラダ・ノアと申します。それでは、さようなら」次の瞬間見えていた空が氷により見えなくなった。
「これは、やられたね」明かりも無いため周りが見えない。
「まさか、仲間を見捨てる気か?」
「《剣聖》っていいますか、少しはやるじゃないですかぁ。また今度遊んであげますね」そう言うと彼女はこの城塞都市から去っていった。
「次こそは必ず狩るよ」そう《剣聖》に覚悟させてから。