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化け物?いや、神様?

恐る恐る声がした方向へ目線をうつす。

そしてそこで見た光景に私は驚き目を見張った。



猫!さっきの猫が喋ってる!?!?



周りに人影はない。いるのは私と、さっきの黒猫だけ。その黒猫が「おい、聞いているのか」「無視するな」と文句を言い続けているのだから、犯人は一匹しかいない。


信じがたい光景に頭がぐらりと揺れ、声が出ない。口を開いても「あ、あ……」と情けない息が漏れるばかり。人間、驚きすぎると舌が固まるらしい。


さらによく見ると――


猫の尻尾が、三本に増えていた。



なんで!?!?どういうこと⁇⁇⁇



先程までは確かに、確かに普通の猫だった。

それなのに今は喋る上に尻尾が増えて2本プラスで増えていやがる。



もう何がなんだがわからない。



脳が情報過多でショートし始める。三徹明けのキャパシティでは到底処理しきれない。


バターン



人生初めての気絶だった。








***


ほっぺをぷにぷにと何かで押されている感覚がある。

なんだろう?程よい弾力があり、気持ち良い。

なんだかクセになりそうだ…


そのときふと、あれ?と思い出す。

そういえば私こんなところで何してるんだっけ?

確か学校からの帰りに寄り道して…


そうだった!私は謎の生き物を見てぶっ倒れたんだった!


ハッとして目を覚ます。


するとそこには目の前には月光をまとった黒猫――いや、三本尾の化け物が鎮座していた。

淡い月光に照らされた毛並みが美しく輝く。

その神々しさにまるでここが“現実のくせに夢”なのか、“夢のくせに現実”なのか、わからなくなる——。


「やっと起きたか。頬を叩いても目を覚まさぬから、てっきり昇天したかと――」

「縁起でもないこと言わないで!」

「我の姿を見ただけで気絶するとは、なんとかよわい人間なのか。それとも姿を見せただけで、人間を倒せる我が偉大なだけなのだろうか。」



なんなんだこの失礼な生き物は。

無駄に上から目線である。

私はまじまじと黒猫らしきものを見つめる。


先程は驚いて気絶してしまったが、改めて冷静になってみてみるとただただ尻尾が増え、喋っているだけの猫だ。

一応ギリギリ猫のフォルム……いや、尻尾が三本増量の時点でアウトか。



「あの、あなたはなんなの?猫…いやもしかして化け猫?」

思い切って話しかけてみる。


「化け猫!?何を言っているんだこの人間は、そんな低俗なものと一緒にするな!」

謎の生き物は渋い顔をしながら「心外だ!」というように叫ぶ。







「私は化け猫なんかよりも高貴な存在である猫魈(ねこしょう)であるぞ!」









ドドンっと大きく胸をはりながら、猫魈なるものは誇らしげいった。ドヤ顔で胸を張る姿はちょっと可愛い。いや、騙されるな。


私は思考を切り替える。


ねこしょう‥なんなんだそれは

この世に生を受けて17年、一度も聞いたことがない言葉だ





「あのー、ねこしょうってなに?初耳なんだけど」

私が恐る恐るそう尋ねるとねこしょうはぎょっとした顔をしたのち、

「はー、そんなことも知らぬのか」とそれはそれは大きなため息をついた。



「いいか、猫魈というのは数多いる妖怪の中でも上位の存在のことを指す。

ふつう猫が妖怪に転ずると化け猫となるが、年数を重ねていくといずれ猫又となることができる。

そしてそこからさらに長い長い年月をかけ修行を行うことで猫魈という高貴なる存在となれるのだ。」


なるほど…ポ○モンでいう進化みたいなものか。

なんとなくわかってきた。


「そして!」と猫魈は続ける。

「我はその中でも、人間から祀られ敬われている!そのため妖怪といえど神格化し、より高貴で唯一無二の存在になっているというわけだ!」



ん?じゃあもしかして…


「この祠はあなたのものなの?」


猫魈はこくこくとうなずく。

「そのとおりだ、もう神としてここに祀られて長い。」





私はサーと血の気が引いていくのを感じた。


これはまずいっ


よりにもよって神格化した妖怪に対し、狐の窓で正体を暴こうとした上に先ほどから結構失礼な態度をとってしまっている。「無礼者!」と、いつ天罰がくだってもおかしくない状況だ。

どうしようどうしよう…私は必死に頭を回すが、まったくいい案が思いつかない。


このポンコツ脳みそっ…!!


自分自身に対し悪態をついてみるが、そんなことをしても事態は一向に良くならない。


もうこうなったら、こうなったら仕方がない…


――逃げよう。




「神だろうが妖怪だろうが、関わったら負けだ!!」

そんな叫びとともに、私は踵を返し全力で駆け出す。

振り返る余裕なんてない。


だけど、背後で小さく笑う声がした気がした――。









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