表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残響と生きるR  作者: さっきーオズマ
9/11

過ぎた思い込み

この会社は残業が多い、というか残業しかしていない

会社の役員が足りないようでここ最近は毎日残業している、同僚もそうだ

俺の直属の上司は普通に帰れているが

だけど、文句は誰も言わない

だってそれが普通になってきたから


俺は正直恵まれてる方だとは思う

同僚の中には会社に住んでいるのかと思う人もいる

実際何人かは帰っているところを見たことがない

でも俺は帰れている


帰れているといっても終電を逃すか逃さないかというぎりぎりの時間に会社を出て

疲労困憊の状態で終電を逃すまいと全力ダッシュする、そんな毎日だ

実際終電を逃したこともある、そんな時はビジネスホテルに・・・

なんてお金はもったいないから会社に戻る


会社に戻ったらまた残業の開始だ

まだいる同僚を見て俺は悲しいというか、情けないというか・・・

同僚は残業をずっとしているのに俺はすぐに体調を崩しやすいから

24時に帰ることを許されている


後輩も同僚も一部の上司だって残業しているのに

俺だけ帰るというのは本当に悪いと思えた

悪いというのもそうだが、俺だけ努力が足りないような

負けたような気持になって余計に虚しくなる


残業時間が伸びたとしても別に残業代があまり上乗せされることはない

少しは上乗せられるが微々たるもので正直嬉しさはあまりない

ただ、やらないといけないんだ

俺が結婚するのかはわからないけど、そうなったとしたら家族を養わないといけない

俺の両親の仕送りも止めるわけにはいかない、俺を育ててくれた大切な人だから


友達や両親からは転職した方がいいんじゃないか?とか、やめてもいいと思うぞ

と言われたが、危ないことはできない

今よりも給料が高い会社に入れるとは限らないし

さぼってしまったら給料が入らなくなってしまう

給料が入らなくなったら、家賃だって食費だって払えなくなる


だから、ダメなんだ、俺は仕事をしないと

残業時間は100時間に達してからが戦いと同僚に言われた

同僚には悪いけど、もともと俺は体力があまりないから頑張って80時間ぐらいだった

だから今月は頑張って100時間を目指している

一回でも100時間に到達出来たらもしかしたらこれからも継続できるかもしれない


「皆今日は帰っていいぞ、明日にやり切れー・・・」

「わかりましたー」


クマのできている上司から帰っていいと言われた

今日はラッキーかもしれないな

だけど、帰宅できるかはこれからのダッシュ次第だ


会社を出た瞬間から全力で駅にダッシュだ

疲労のせいで走り方がおかしい気がするが、そんなことは気にしていられない

どうせ、外に出ている人は少ないのだし見られたとしてもどうせもう会わない人だ


駅に着く、改札をすぐに通過して急いで階段を上る

良し電車がつく1分前についたようだ

今日は無事に帰れそうだ


明日も会社か、今日残した仕事も全て明日終わらせないといけないのか

仕方ない、仕方のないことだが行きたくはない

もともと好きな仕事だから入ったはずだったのだが

何故か今ではもう見たくもなくなっている


電車が来たようだ、よし乗ろうか

あれ、でもまてよ

電車はそこそこのスピードで来ている

これは電車が来る前に踏みだせば、明日会社に行かなくていいんじゃないか?


すごい、すごいことに気づいてしまった

今一歩踏み出せば明日、というかこれからずっと仕事しなくていい!


「あはは・・・あはは」

「ちょ、ちょっと!」

「ぅっ・・・いた!」

「あ、ごめんなさい・・・って、危なかったですよ!」


???

何が起こったのだろう

この女性に腕を引っ張られたのだろうか

なんでこの女性は俺の腕を引いて・・・あ


「俺は、今何をしてたんだ?」

「あなた今落ちようとしてたんですよ!?どうしたんですか!」

「俺は、俺は・・・何しようとしてたんだ・・・」

「ちょ、もう電車行っちゃいますから!一回乗りましょう!」


今、何考えてたんだろう


「どうして、自殺しようとしてたんですか?」

「俺は・・・ただ、明日の仕事に行きたくなかっただけで、死のうとしてなくて・・・ぅうっ!うわぁぁああ!」

「わっ!?えーと・・・あなたは会社に行きたくなかっただけなんですか?」

「っうぅ、すいません・・・は、はい」


終電に乗っていることを初めて感謝した

大きな泣き声を上げても誰もいないのだから恥ずかしくはない

だけど、なんでこんなことになるまで俺は今の会社を続けていたんだろう


「私は、あなたの友人から相談を受けてきました」

「・・・え?」

「あなたの友人はとても心配してましたよ、転職も進めてたらしいですけど・・・」

「俺は、家賃とか仕送りとかしないといけなかったので」

「転職は別に怖いことではないですよ、今の仕事をそのまま続けている方が怖いことなのではないでしょうか」

「そうですね・・・確かに、ありがとうございます」

「私ではなくご友人に感謝してあげてください?」

「分かりました、それでもほんとにありがとうございました。では失礼します」


俺は、友人を持っていて良かったと思った


・・・ありがとな

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ