人生の交差点 28年前の彼女
人生は、交差点を通過し、行先が変わることの繰り返しかもしれない。
行先は未来に向かっている。
車には、一人で乗っているか、同乗者がいるか、その時々で違っているかもしれない。
同乗者との話し合いで、方向が決まってくるだろう。
私は、遥か昔に、同乗者をさがしていた。
平成4年9月下旬の祝日、私はある女性とお見合いをした。
2歳年下の彼女、私は彼女に一目惚れをした。
ショートカットで、丸顔の女性、笑顔が可愛かった。
何とか、お付き合いすることが出来た。
私は、丁寧に彼女に接してきた。
しっかり者で、少し気が強く、女性的な恥じらいもある彼女。
私は、付き合い始めてから2か月後の、彼女の誕生日にプロポーズをした。
彼女から、はっきりとした返事はもらえなかった。
しかし、二人は結婚に向けて、付き合いを続けて行った。
彼女は、手編みのセーターを作ってくれるなど、結婚に向けて、私に向き合ってくれていた。
だが、春が近づいてきた3月のはじめ、雪が降る寒い日に、私は彼女の期待を裏切る行いをしてしまった。
私は、彼女を乗せた車で、交差点を直進することが出来なかった。彼女との話では、車は直進する予定だった。
彼女のいなくなった車は、右折した。
その後、私は2度の結婚をした。最初の結婚が破綻した時に、更に車は右折した。
車は最初の彼女と進んできた道を引き返す方向に進んでいた。
しかし、その道は途中で枝分かれして右向きに旋回していた。
最初の彼女と進んできた道のそばに近づいた。
歳月は28年も経っていた。
その時、私は車内から、最初の彼女を見かけた。
私は、懸命に彼女をさがした。
しかし、彼女が今いることは考えられない。私はまぼろしを見たのだ。
今、私はあての無いまま、まぼろしをさがしている。
次に見えてくる交差点で、私はどの方向に向かって進んでいくのだろう。
(完)