魔法のクロスワード
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おや?いったい……。
「あれ? なにを探していたんだっけ?」
この子は、すっかり、忘れてしまったようですね。
テーブルの上には、クロスワードパズルの雑誌が、置いてあります。
『なにかを思い出したい人にオススメです!』
探していたものがなにか、思い出すかもしれませんよ。
「やってみよう!」
◇たてのかぎ:1
小銭入れとも言う。
「財布、かな。」
さいふ、と書き込みました。
◆よこのかぎ:1
四字熟語。苦心、苦労を重ね、チャンスの到来を待つこと。
「臥薪嘗胆。」
ちょっと、難しかったかな?
◇たてのかぎ:3
本のページに、付ける目印。
「しおり。雑誌にもあれば便利なのに。」
まあそう言わず。
◆よこのかぎ:8
妖怪の別の言い方。四文字。
「物の怪、かな?」
ものぐさ、ではないですよ。
◇たてのかぎ:13
夜曲のこと。
「ノクターン?」
それそれ。
順番に、さ、が、し、も、の、ときましたね。
残ったマスを、埋めていきます。
「答えは……ルビーの指輪。……どんぐり……黄色いハンカチ……虫眼鏡?」
そうです、大ヒントです。
「あれ? 目の前が、チカチカする。」
さあ、答えを並べ替えましょう!
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『きおくのようせい』
「記憶の妖精?」
「せいか〜い♪」
「わぁっ!」
「はあ、よかったよかった〜。
まさかね、あのね、ニンゲンにね、見られるとはね、思ってなかったのね〜。」
「なんか、見たこと……ある……?」
「ん〜とね、君がね、虫眼鏡で、“さがしもの”をしてたのね。
でね、まれにね、見えちゃうタイプのニンゲンがいるのね〜。
そうするとね、タブーだからね、認識した記憶ごと、消去するんだけど、ウッカリ、消しすぎちゃってね〜。
これは、アフターケア?サービスってやつ〜。」
ぼくの目の前には、ハムスターのような生き物が、宙に浮かんで、何やら一気にまくし立てる。
「そんなわけでね、今度こそ、記憶がね、うまいこと消えるからね〜。
クロスワードの魔法が、うまく作動してよかったね〜。
それじゃあね〜!」
………。
そうか、そうだった、ぼくのさがしものは、あった、これだ!
机の上から、コロンと転がった消しゴム!
◼️◻︎◼️◻︎◼️◻︎◼️◻︎◼️◻︎◼️◻︎
消しゴムを拾って、椅子に腰掛ける。
虫眼鏡でクロスワードの紙面を眺める。
はて、どこの問題と勘違いしたのだろうか、間違えてばかりじゃないか。
答えの欄には、
『き の せい』と書かれている。
全く、何をどうしたのだろう。
わしは、虫眼鏡を置いて、老眼鏡を取り出し、再び、クロスワードを解き始めた。
(了)
※参考資料:新明解国語辞典 第五版より。