02:時が巻き戻ってる
一周目。
ステラは、自分が乙女ゲームの悪役キャラに転生したことを自覚した。
主人公のキャサリンが転入する前日にそれを思い出し、断罪後の悲惨な末路にビビりまくり、それからの一年を、それはもう必死で過ごした。
とにかくキャサリンをいじめない。
婚約者のフレンが彼女と仲良くしていても無視。
とにかく二人のことは無視、無視、無視……。
しかし努力虚しく、ステラの取り巻きが勝手に行った嫌がらせとかなんやらの犯人だと決めつけられ、クライマックスの卒業お祝い晩餐会で断罪された。
それでも一応、死刑イベント的なものは回避できた。
断罪された夜、ステラは自室で最悪のシナリオは回避できたと自分を納得させた。
努力が上手く実らなかったことは、ちょっと泣いたけど。
しかし、夜寝て、朝起きたら――。
キャサリンが入学する前日に時間が巻き戻っていた。
***
二周目。
ステラは、乙女ゲームの悪役キャラにただ転生しただけではないと気付いた。
時が巻き戻る? もっかい悪役やれってことか?
しかしさらに混乱する事態が起きた。
なんと、フレンにも巻き戻る前の記憶があったのだ。
自分は狂ったのか!? と混乱するフレンを見ていたら妙に落ち着いて、ステラは自分も一周目の記憶があることを彼に告げた。
その様子にフレンも落ち着き、落ち着いたついでにいろいろ話して、一周目のステラにかけた冤罪のことも理解してくれた。
ともかく、この巻き戻り現象がなんなのか。二人で様子を見るうちに時は過ぎ、クライマックスの卒業を祝う晩餐会の日がきた。
ちなみに二周目で主人公キャサリンはハリーと恋に落ちた。
巻き戻り現象にあたふたしていたら、フレンは出遅れてしまったらしい。気の毒だが、ステラは同情しない。
なぜならステラは、キャサリンへの嫌がらせとかなんやらの冤罪をまた着せられて断罪されたからだ。
今回フレンは味方だったが、それでも流れは変えられなかった。
断罪された夜、またちょっと泣いた。
そして、夜寝て、朝起きたら――。
キャサリンが入学する前日に時間が巻き戻っていた。
***
三周目。
今度はフレンだけでなく、ハリーにも前の記憶があった。
しかも、ハリーには一周目の記憶も蘇っていた。
武闘系キャラ・ハリーを仲間に加え、三人で戦々恐々しながら事態を見守る。
キャサリンはヘイズと恋に落ちた。
ステラは、よくわからないがまたキャサリンへの嫌がらせとかなんやらの冤罪をかけられ、断罪された。
ただ、今回は味方が二人に増えていた影響か、そこまで酷くなかった。
でも、断罪の夜はちょっと泣いた。
そして、夜寝て、朝起きたら――。
***
四周目。
今回はプレイボーイキャラ・ヘイズが新たに巻き戻り仲間に加わった。
キャサリンが入学する前日、春休みの最終日。
なんとなく察したステラ、フレン、ハリーがヘイズの家を尋ねると、彼はベッドに丸まって震えていた。
仲がよかった女性たちと、会話が軒並み合わないのが堪えたらしい。
ハリーが喝を入れてなんとかヘイズは立ち直った。
さすがに異常事態だ。
とりあえず、四人でキャサリンを見守った。
キャサリンは今回、ヒースと恋に落ちた。
これで巻き戻ったら、参謀キャラが仲間になるから心強いなあなんて斜め上の思考に飛んでいたのは、疲れていたせいだろう。
キャサリンとヒースの恋路を四人で見守る。
だが途中で、ステラは、あっと気付いた。
これ、ヒースがキャサリンとフレンの仲を疑って冷たくなって、キャサリンのほうは理由がわからず誤解も解けなくて上手くいかない、バッドエンドルートではないか?
おそらく今ごろバッドエンド確定イベントが起こったかも……。
そう思った日の夜。
寝て、朝起きたら――。