雨上がりのアスファルトには水たまりが,いくつか出来ていて、そこには水銀灯の光りが写り込んでいた
雨上がりのアスファルトには水たまりが、
いくつか出来ていて、
そこには水銀灯の光りが写り込んでいた。
夜の街へ出たのは、
用事があったわけではなくて、
ただ眠れなかったから。
眠れない?そうでもない気がする。
眠らないのが必要だったような気がする。
散歩する並木道は、嵐の去った風情に彩られて、落ち葉が歩道に溜まっていた。
好きになってしまった。
そういう気持ちを、私は伝えようとしてはいない。
ひっそりと、
ただ心の中に仕舞い込んで、
私は街を歩いていく。
あの人は、微笑んでいる。
心の中の。気持ちと憧れと夜の風。
ただの水銀灯が、
あやしく美しく感じられるのは、
あの人の微笑みのせい。
この世界は、
美しくて生きていくに足る世界だと、
そう思えるのは、
あなたのせい。
恋をする。
誰かを愛することは、
世界を好きになること。
こんなに目に写るものが美しいのは、
愛するあなたがいるから。