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「.........でこの地域だが、魔獣の数は約300〜400で、師団長殿、聞いておられるか」
総司令部に着いて、アリアは延々と元帥と打ち合わせを熟すがそろそろ眠気が限界に近づきつつあった。
ワイットとなら多少の冗談も言えて、目も覚めたが、この男とはそんな親交もない。
「元帥閣下、私はつまり当日何をすればよいのです?それだけ伺えたら帰ります。」
どうせたった一人で国軍に加わるのだ、指揮などすることはない。やることさえ教えてくれれば、これでも国一番の魔術師だ。なんでもやってやろうではないか。アリアはあくびをしながら元帥に聞く。
「師団長殿、今回陛下は我々に溝を埋めるために協力せよと仰った。ただ熟せば良いというわけでは無いといい加減気づいてほしい」
「私は溝を埋める必要性を感じません。あなたとも気が合わない」
「気が合わないとどうして決めつける。そもそも師団長殿と私は会議以外で話したことすらないだろう」
「会議だけでお分かりでしょう。貴方と私の仕事に関する考え方の違いは大きい、そして国軍と魔術師団の違いも」
私と彼会議以外ではろくに話したこともない。魔術師団と国軍が共に動くことも基本ない為その関わりもない。しかし元帥の言った通り、長い付き合いの中でわかってくるものもある。元帥はとても公明正大で理不尽なことは決して言わない。貴族らしく国の未来のことを考えてる。対して師団長であるアリアは異なる。アリアの大事なものは国などではない。自分を育ててくれた魔術師団のみなのだ。魔術師団を守るために行動することはあっても決して国ではない同郷の魔術師のためだ。その違いは大きい。
「私が大事なのは魔術師で国ではありません。嫌な思いをしてまで貴方方と協力すらメリットはない」
自分には珍しく強い口調で言い切るが、鉄仮面元帥の表情は変わらない。しかし、ひとつ大きくため息をついた。
「師団長の軍人嫌いは相当だな」
「なんです、軍人嫌いとは」
自分は四権の長であり、一応は師団の外で国軍に対する鬱憤は言わないように徹底している。にも関わらず、アリアの軍人嫌いが定説のような言われ方は不本意だった。
「師団長は外では国軍の批判など口にしないが、国軍の話になると厳しい口調になる。それにその体でも軍人と話す時の機嫌の悪さは伝わるものだ」
「出しているつもりはなかったんですがね」
複数名が言う通り、煙の体はアリアの気分を反映しやすいらしい。しかし、軍人と話す機会などほとんどないに等しいし、実際に見てるのは元帥くらいだろう。
「我々国軍の一部は、たしかに戦時中魔導師団に非道なことをした。それは国軍の長として何度で謝罪し、二度と繰り返さないと誓う。しかし、私も師団長も終戦の年それぞれ若輩ながら各権のトップとなった。その意味は憎み合うためのものではない」
元帥の言っていることは最もである。私と元帥は共に終戦の13年前、人を率いる立場になった。若かった私たちがなったのは、戦争によりそれより上の人間が多く死んだこともある。しかし、一番の理由は、新しい時代を始めるためだった。それを頭分かっていても、アリアの心は固く閉じたままだった。
「そうですね、元帥」
一言だけそう言って、黙り込んだアリアを元帥も黙って見ていた。重い沈黙が総司令部を包む。そんな空気に耐えられず、もう今日は帰ろうと声を上げようとしたアリアより先に言葉を発したのは元帥だった。
「師団長、貴方が国軍も私も嫌っているのは十分分かっている。急には改善されないことも分かった。だから、国とか立場は一旦忘れてくれ。ただのギレット・ロウとして、同年代の友人として関係を築いてみないか」
「はい?」