酒場にて
偶然立ち寄った酒場で、幼馴染と出会った。
懐かしさのあまり会話が弾む。
「いやあ、久しぶりね、幼稚園の頃以来だっけ?元気してた?」
「私?私は、まあ、元気よ、今は」
幼馴染から差し出されたお酒を受け取り、そのまま呷る。
その様子を見て幼馴染は少し驚いているようだ。
「え、昔に比べてイメージが変わってるって?うーん、そりゃあ君が引っ越してから、まあ色々あったからねえ」
その一言は幼馴染の興味を引いたようだ。
再びお酒を勧め、話を催促してくる。
お酒のお陰で気持ち良くなっている私も、それに乗ってしまう。
「色々は色々だよ、まあ、大抵は悪い事ばかりだったけどね、あははは……一番最悪だったのは、誘拐された事かな」
幼馴染の表情が硬くなった。
話の真偽を図りかねているようだ。
「いやいや、ネタじゃなくて本当の話、死ぬ寸前まで行ったからね」
私は念押しとして呟く。
その様子を見て、幼馴染は話を信じてくれたようだ。
「え、生きてて良かったって?……まあ、確かにそうだけどね」
「けどさ、世の中には、死んだ方がマシだって思うような事だって、あるんだよ」
二人の間に沈黙が続く。
これは、話題選びを失敗してしまったかな。
久しぶりに会った相手とする話じゃなかったか。
少し後悔する私に、幼馴染は一つの質問をした。
「ん?私を誘拐した人がどうなったかって?そりゃ……」
天井を見上げ、私ははっきりと応えた。
「殺したよ、ちゃんと」




