やあ(´・ω・`) ようこそ51話へ。 うん「また」なんだ済まない。 でも、この(´・ω・`)を見たとき、きっと言い表せない 「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。じゃあ、本編を始めようか。
ピッグミーの熱い口づけは(´・ω・`)の愛らしいωを捉えており、誓いのキスは散華したのだ。
「ぷ、ぷぎー! オレぴっぴのファーストキスがあああああああ!」
驚き恐れて後ろに下がるピッグミー。
ぐるりと振り返って団員たちに吼える。
「なななななんで誰も止めなかったぷぎーか!」
団員たちはその場でお腹を抱えてしゃがみ込んでいた。
叫び声とうめき声が響く。ちょうど薬効が出始めたらしい。
「幸運のクッキーと降ウンのクッキーのレシピを間違えてしまいました。すべて私のミスです」
うっかりなのだ。
うっかり特製下剤入りクッキーが配られてしまったのは事故なのだ。
いいねみんな。配った幼女に罪は無いからね。というか、幼女は“下剤入り”の意味すらわかってないんだ。
仮面をつけたまま、俺はピッグミー海賊団一同に告げる。
「不幸にも間違って配布されたクッキー型下剤ですが、服用した者は極端に振動に弱くなるので、その場から一歩でも歩こうとすると……ドカン! ですよ」
「うぐおああああああ!」
「じぬ! じぬううううう!」
「いやだいやだいやだ! だずげでピニキィィッ!」
「トイレにいがぜでええええ!」
「お、俺は行くぞ騙されるも……あ……」
団員一名死亡。合掌である。
ニーナが近くで冷や汗をかいてうずくまる獣人に「だ、だいじょぶ?」と、心配そうにハンカチで額の汗を拭いてあげていた。
「ふっへっへ……天使の顔をした……悪魔め……ああ、けどこの感じ……た、たまらん」
「がんばるのです。きっとお腹いたいのよくなるのです」
「ぐはっ! なんてプレイだ! ねえお母さんって呼んでいい?」
ドMが一人見つかったようだな。
華やかな結婚式は一転、惨劇の場と化した。
男たちは団長を除いてみな腹を抱えてうずくまり、立っているのは女子供に(´・ω・`)仮面の神官だけだ。
ピッグミーが再びこちらに顔を向け直す。
やつの唾液が(´・ω・`)のωからたらりと落ちて、赤絨毯に染みをつくった。
いや、本当に仮面が無かったら相打ちだったなこれは。危ない危ない。
「お、おまえはまさか……」
「どーもピッグミー=サン……上級魔族デストロイヤーです」
「騙したぷぎーかああああああッ!?」
「騙したのではありません。貴方が本当の愛をお持ちかどうか、確認したのです」
ピッグミーは目を丸くしながら新婦の顔をのぞき込む。
「あ、愛してるぷぎーよ! ほら指輪も用意したぷぎー! ラヴィぴっぴの大好きなゴールドぷぎーよ」
「……好きなのはシルバー」
言いながら新婦はスカートの下から片手に収まる水晶玉を取り出した。
ピッグミーが固まる。
「え、ええ!? だって髪型違うぷぎーよ! ラヴィぴっぴは短めで妹の方は長いぷぎー!」
「……決意した少女は髪を切るもの……シャーイニーング」
「はっ!? ぷぎいいいいいいッ!?」
「クリスタール!」
少女の手の中で光が爆ぜると、輝く水晶玉が豚男の顔面にめり込んだ。
ドガンッ!
と、衝撃が走ってピッグミーが船首方向に吹き飛ぶ。
そこには嫁入り道具を入れた棺桶があった。
が、すでにその蓋は開いており、かすかに中から白い冷気が溢れているばかりだ。
大神樹管理局:設備開発部謹製――ヒンヤリ棺桶~!
そこから出た少女は、舞剣士の姿をしていた。
逆光で顔に影を落としつつ、吹っ飛ばされて倒れたピッグミーを見下ろしながら、新婦そっくりの少女が告げる。
「豚ヤンさぁ……アタシだけの輝きが見えるんだってね」
「ひ、ひいい!? それはその……違うぷぎー! 誤解ぷぎーよ!」
ようやくピッグミーも理解したようだ。理解して顔真っ赤である。
なにせあれだけラヴィーナだと思い込んで、愛を語り誓い自分にしか輝きは見えないと言ってのけたのを、部下たちに訊かれたのだからかっこ悪ッ。
今はまあ、その部下たちも襲い来る便の意に、それどころではないだろうが。
ヒラヒラと風に揺れる踊り子の装束姿で、白無垢ドレスと同じ顔の少女はニンマリ笑った。
「間違うのはしょーがないよ。だってアタシと同じくらい、妹も……ルルーナも輝いてるんだもんね。だけどさぁ……結局豚ヤンって魔王? だっけ、それになるためにアタシをお嫁さんにしたかったんでしょ?」
「愛してるぷぎーよ! 本当ぷぎー!」
「ええぇ……でもぉ、たった今ルルーナに愛を誓ったじゃん? 約束守んないやつは大っキライなんですけどー」
ルルーナが「フッ」と口元を緩ませた。
「……わたしはそもそも誓ってない。誓いますじゃなくて……(ぶちのめし)ますって神に誓った」
このセイクリッドもしかと聞き届けました。まあ、小声すぎてピッグミーの耳に入らなかったのは残念だが。
ラヴィーナが胸を張る。
「ってことだから婚約破棄ね。そっちの契約不履行? みたいな。だってアタシをさしおいてルルーナと浮気したんだしぃ」
裏切られた方が復讐する物語なら、主役のピッグミーは「絶対綺麗になってやる!」と意気込んで、是非ラヴィーナに挑んで、どうぞ。
「騙したぷぎーか! 騙したぷぎーね! 人が悪いぷぎーよ!」
「ほんとの愛があったら入れ替わってるってちゃんとわかったはずじゃん? 豚ヤンさぁ、ちゃんと誰かを愛したことないんだよ。アタシのこと好きなんじゃなくて、誰かを好きになってる自分が好きなだけなんでしょ」
豚顔が引きつった。
「はうあッ!? ぷぎー! そんなことないぷぎー! 純粋な愛ぷぎー! 前魔王みたいに二人も娶るのは不純ぷぎー! ラヴィぴっぴ一筋ぷぎー!! 現魔王を倒して新世界の王になるぷぎー!!」
おっと、この発言は前魔王ディス&現魔王への挑戦状だ。姉妹の怒りだけでなく現魔王の怒りも有頂天。メイン火力きたこれで勝つる。
焼豚で済めばマシだったが、この分だと消し炭確定である。
わめく豚顔にラヴィーナが引導を渡した。
「アタシもルルーナも一緒に面倒みるくらいの度量のおっきいとこ見せてほしかったなぁ」
ルルーナが首をそっと左右に振る。
「……お断り」
「ざーんねん。フラれちゃったね豚ヤン。ちなみにアタシも最初っから“ないな”って思ってたから」
ルルーナが白無垢ドレスのスカートの下から、仮面を二つ取り出して、姉に一枚渡す。
(・∀・)がラヴィーナで(・A・)がルルーナだ。
装着しながらラヴィーナは棺桶から鋼の剣に騎士の剣、それに神官見習いの短杖を取り出すと、それぞれの持ち主に投げる。
アコとベリアルが剣を手にした。
勇者と女騎士二人はスカートの内側などに隠していた仮面をつける。
アコの仮面は(゜Д゜)でベリアルのそれは( ´_ゝ`)だ。
「変身ッ! であります!」
短杖を手に腕をピンと伸ばして風車のように回しながら、カノンも仮面――(0w0)を装着した。
俺はニーナを呼び寄せると、そっと(`・ω・´)の仮面をかぶせる。
「おにーちゃ? 前がよくみえないのです」
ニーナの仮面は、目の穴に“世界が金色きらきら綺麗”に見える特殊なレンズを装着した、幼女特別仕様だった。
「少しだけ我慢していてくださいね」
ここから先は十五歳未満には刺激が強い。ちなみにこのマスクに限らず、本日用意した全てのマスクには息苦しさを感じ無いよう、風の魔法と光の魔法で空気を清涼なものにする特許技術(教皇庁申請中)が用いられていた。
そして、俺はニーナの隣でそっと手を握り、最後の一人が仮面をかぶるのを待つ。
赤毛は怒りに揺れて、隠していた尻尾も怒髪ともどもスカートを突き破り天を衝く。
「ニーナは怒ってないけど、あたしは怒ってるのよ。理由は……言わないけどね!」
胸元のシークレットスペース(わりと広め)からステラは仮面を取り出し装着した。
怒りに燃える魔王ステラ――(*´∀`*)爆誕。
男たちがそこかしこにうずくまりうめき声を上げる甲板に、導かれし者たちが並びたった。
(・∀・)(゜Д゜)( ´_ゝ`)(*´∀`*)(`・ω・´)(´・ω・`)(0w0)(・A・)
ピッグミーがよろよろと立ち上がる。
「ふ、ふざけてるぷぎーかッ!?」
見た目はそうかもしれないが、わりと本気でこの日のために準備をしてきた。
ホワイトロックキャニオンで氷牙皇帝にいてかました俺たち特攻部隊は、勇者がポンコツとバレて身分を隠した。
しかし、辺境の教会でくすぶっている様な俺たちじゃあない。
ロリさえいれば寄付金次第で何でもやってのける命知らず。
不可能を修復不能にし、巨大な悪もろとも気分次第で正義にすら鉄槌を下す。
俺たち、お面戦隊デストロイヤーズ! 月に代わってお仕置きターイム!




