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こちらラスボス魔王城前「教会」  作者: 原雷火
シーズン8 ※Pルートは「神トーク」までの通常ルートを読み終えてからお読みください
342/366

ニーナがいなくて弱体化する大神官がいるとかいないとか

 消えた賢者を追うにも、転移魔法でどこに飛んだかわからない。


 捜査範囲は世界中だ。


 焦る気持ちを抑えて、俺は大神樹の芽を介し、ぴーちゃんを教会に呼び戻した。


「マーク2先輩にこのような仕打ちをするなんて、許せませんわね」


 聖堂に戻るなり、ロリメイドゴーレムは悔しげに下唇を噛む。


「それに飽き足らず、ニーナ様を誘拐などとは言語道断でしてよ。この教会の侵入に対する防備はいったいどうなっているのかしら?」


 ぴーちゃんは折れ曲がった案山子のマーク2から、本体とも言える記録水晶を取り外して、胸のあたりで両手で包むようにしながら俺を見据える。


「先代魔王により四重の結界に守られております。一度到達した者でない限り、この教会どころか島に上陸することさえままなりません」


 島にたどり着くために死の海を越える必要がある。万難を排し結界の守りを破らねばならない。


「この事、ステラ様には?」


「……まだお伝えできておりません」


「わたくしたちだけで対処するおつもりですの?」


「最近のステラさんはとても不安定な精神状態にあります。このことを知ればどうなるか。ベリアルさんに協力を要請しようかと思うのですが……」


「他に頼れる方はいらっしゃいませんの? アコ様やカノン様は?」


「お二人に説明すれば、ステラさんに伝わるのも時間の問題でしょう」


「ではいったいどうするつもりでして?」


「ニーナさんは先代の女王ですから、大神樹の芽を介して王国全土に目撃情報を募ることはできます」


「でしたら、ぼさーっとしている場合ではありませんわね」


「公開捜査に踏み切るには、クラウディア女王とヨハネ聖下、それに大神樹管理局の協力が不可欠です」


 ぴーちゃんは柳眉をあげた。


「先ほどから口ばかり動かしてなにもしていませんわね!? ニーナ様が誘拐されましたのよ!? どうしてそんなに冷静でいられるのかしら?」


「私とて内心では慌てふためいています。今はこうして冷静に見えるよう、必死で取り繕っているところです」


「無駄口はいりませんわ。今は行動あるのみでしてよ!」


 大神樹の芽を介してロリメイドゴーレムは自身をモノとして転送しようとした。


 行き先は世界中、どこの大神樹の芽も自由自在だ。一度、行ったことのない場所にも飛ぶことができる。


「お待ちください、ぴーちゃんさん」


「こうしている間にも、ニーナ様がお腹をすかせているかもしれませんわ。三時のおやつの時間はとっくに過ぎていましてよ!」


「普段の冷静な貴女に戻ってください。むやみに探しに飛び回るわけにはまいりません。可能な限り、絞り込みましょう」


「…………そう仰るからには、何か考えがありますのよね?」


 俺はゆっくり頷いた。


「まず、マーク2さんについてです。彼は犯行を目撃しました。私には彼を癒やすことはできませんが……ゴーレムの貴女なら、修復方法がわかるかと思い、こうしてお呼び立てしました」


「ボディは破損してしまいましたけれど、本体はかろうじて生きていると言えますわね。物理的な破損はしていますけれど、記録領域は保護されていましてよ」


「意識は残っていると?」


「ただ、休眠状態にありますわ。わたくしが調整槽で魔法力を充填し、システムチェックを行うように、マーク2様も修理が必要ですの」


「ぴーちゃんさんなら可能……ですか?」


「わたくしの身体をマーク2様にお貸しして、調整槽を回復モードにすれば元通りとはいかずとも……実証データはありませんけれど、理論上は復元が可能でしてよ。記録水晶というのは物質化するまでに圧縮した、大神樹の芽の魔法力ですもの」


 魔法力の物質化といえば、ステラの圧縮した黒魔法もそれだ。貫通力や破壊力を増しつつ、範囲を限定する使い方の時には、ステラは宝石のようなきらめきの魔法を放つ。


 アレの応用技術だったとは。記録水晶とは大神樹で実を結んだ果実のようなものに思えた。


「素体を貸している間、ぴーちゃんさんは動けなくなるということですよね」


「むき出しのコアで随伴するくらいはできますわ。意思疎通は発光信号になってしまいますけれど」


 ふと気づいた。つまり、ぴーちゃんの身体にマーク2の水晶をはめこめば、誘拐時の状況について証言を得られるということだ。


「早く奪還作戦の立案をなさい」


「わかりました。まず今回の襲撃が誘拐だったことについて。もし賢者の目的が魔王ステラへの攻撃だったとするならば、私が留守の間にステラさんが独り、聖堂にいるとこを狙うことができました。どうやっているかは見当もつきませんが、この教会は敵の監視下にあるのかもしれません」


「では、わたくしたちが奪還に動こうとしていることも筒抜けですの?」


 それどころか、すべて仕組まれていたとさえ言える。


 冒険者の魂の誤配送も、大神樹の管理をしている何者かの手によるものだ。


「ええ。ですからこちらの声を届けるのは容易かと」


「は、早くニーナ様を返してそのまま死んでくださいませ!」


 幼女ゴーレムは両腕をぐるぐる回して聖堂に声を響かせた。


 死ねという気持ち、わかります。


「ニーナさんを誘拐したということは、その先の要求などがあるはずです。誘拐犯には別の目的があって、それを実行ないし成すための手段としてニーナさんを誘拐したと考えられます」


 こんな言い方しかできない。死にたい。

今日は短めで

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