知の試練
■問題:上級魔族の特徴を答えなさい。
「人間の姿に近いが肌の色が青みがかっていたり、瞳に魔法力が宿っている場合がある。そのほか、見分け方としては、角や尻尾に背中の羽などが生えている。人間が扱う事ができる限界の上級以上である、極大級の黒魔法を使うことができ、高い魔法力を持つ。また、変身能力を兼ね備える場合もある。人間とは世界の覇権を巡って対立しており、魔族の頂点には魔王が君臨しているのだが、時代によっては魔王の座を賭けて上級魔族同士が争い合うことも過去には幾度となくあった」
満点です。実に模範的な回答ですね。
「ニオイがキツイ」
実際に臭ったことがあるのでしょうか。必ずしもそうとは限らないので不正解です。たまに酒臭いのならいますけど。
「おにーちゃがね、ニーナはのーこめんとですって言うといいって」
あっ……はい。
■問題:マカロンが十個あります。三人で分けるならどうしますか?
「一人三個ずつで分けて、残る一つに関しても三分の一ずつに切り分けて平等に分配します」
最後の一つまで均等に分けるのは良いのですが、ケーキなどと違ってマカロンは小さいですからね。それでもマカロンなら良いのですが、これが税による富の再配布などの場合は……まあ、平等には分けられないものがあるということも、心の片隅において置いてください。
「全部マーゴさまのものだから、気に入ったやつには分けてやってもいいけど? だから靴を舐めろ。裏側だぞ」
知ってた。
「ニーナは十個も食べられないよぉ。ニーナに三つでしょ、ぴーちゃんに三つでしょ、リムリムちゃんに三つでしょ。残ったのはぁ……おねーちゃにあげていい?」
とても優しいですね。私はいいと思います。
■問題:甘い物ばかり食べているとどうなるでしょう?
「栄養が偏って太ってしまうかもしれません。糖分は大事ですが、適度な運動とバランスの良い食生活。そして上質なタンパク質を摂取することで、素晴らしい筋肉を得られます」
はい、ちょっと壊れてきていますが、食生活のバランスに着目できているのは良いでしょう。
「幸せだろ?」
ソーデスネ。
「しあわせ~!」
ニーナさんが言うとかわいい、ぜんぜんかわいい。
■問題:国王の人気を上げるアイディアを教えてください。
「人気を取るために何かをするのでは本末転倒です」
善政を敷くことで自ずと人心もついていくという考え方ですね。それを甘いと仰る方もいるかと思いますが、国主として民を想うのは悪い事ではないでしょう。
「そんなことしなくてもマーゴさまは人気者じゃん。マーゴさま最高って言えよオラァン!」
何もしないをするという意味ではクラウディアさんと同じなのに、中身がコレでは……。
「猫ちゃん……かなぁ」
ちょっとわかりません。あとで個人的に、もう少し詳しく教えていただけますか?
■問題:十年後の貴方がどうなっているか教えてください。
「今よりほんの少しだけ、前を向ける自分になっていたいです」
後ろ向き気味な前向きさですね。もっと自信をもってもよろしいのでは?
「今年王様なら、再来年あたりには神かな」
すぐに治療院に行きましょう。頭のですよ。
「すてきなレディーになりますからぁ」
ええ、きっとなれますとも。
■問題:三人寄れば賢者の知恵という言葉の意味は?
「普通の人間でも意見を寄せ合えば、賢者のようにすばらしいアイディアが浮かぶという意味です」
正解です。良い案が出ない時には、独りで背負い込まず、誰かに相談してみるのもまた良いのではないでしょうか。
「あ~アイツ? 嫌いなんだけど。ま、最近は顔も見せないし。いやふざけたお面つけてるから、顔も知らないんだけどさ。つーか、なんでパパはあんなのと仲良くしてたんだ?」
姉さん事件です。手遅れかもしれませんが緊急配備を。
「四人だとどうなるのかなぁ。あと猫ちゃんもいるといいかも」
四人と一匹の探求の旅が始まる。
王ディションのファーストラウンド――知の試練からいくつかの回答を抜粋。その場には立ち会えなかったのだが、ツッコミを入れずにはいられない内容である。
これらの口頭による設問の他、筆記による試験も行われた。
正解と不正解の曖昧な問題に関しては、中立の立場を取る大臣らの採点を基本とし、教会と貴族連合の代表者によってチェックが成されている。
不正は無かった。マーゴが率いる貴族連合の代表者も、自分たちが担いでいる神輿の頭の軽さは理解しているらしく、ゴリ押すような手段には出なかったのだ。
結果、クラウディアが90点。ニーナが20点。マーゴが5点となった。
クラウディアが圧勝したのである。
この点数自体は妥当だが、あくまで発表されるのは順位だった。マーゴ陣営最大の誤算と言えばニーナの方が頭が良かったことか。
これを受けて、点数や回答を公表すべきと教会側は訴えたのだが、機密扱いとして大臣はその申し出を却下した。裏で貴族連合の圧力がかかった可能性は否定できないものの、それを曝く手段と時間が足りない。
なにより問題なのは――
マーゴの父親である第一王子サンズに、賢者が接触していたという事実が発覚したことだ。
現状が賢者の介入によって生み出されたのかもしれないという疑念を拭いきれぬまま、王ディションの第一幕が下りた。
順位のみが公表され、クラウディアが一位だったことと、ニーナがマーゴよりも頭が良いという二つの事実が世界中に広まった。
支持率はマーゴ37%。クラウディア32%。ニーナ31%と、横並びというにはまだマーゴが一歩リードしているものの、クラウディアが大躍進したのだった。
ニーナに関しては、微減したものの大きく崩れなかったととることもできる。
こうして混迷する王ディションは、さらなる危険な領域へと突入しようとしていた。




