Episode01:日常風景1
時は午後0時、魔界には不釣り合いとも言える青い空に、丸い太陽が頂点まで登っていた。
魔王が現世界の気候を気に入っているためか、城下町と居住区街の空は青く、至って平和そうな見た目が広がっていた。
まぁ、その居住区街の外は荒れた大地と血のような空が広がっているわけだが……
現世界の春を思わせる風が、俺の頬をかすめる。大気には瘴気が含まれているが、魔王の手により比較的安全に加工されていた。
とりあえず、いつもどおりの昼だ。今日は仕事もそこまで詰まってないし、ゆっくりと起きることが出来た。つまりは、今起きたところなのである。
窓辺からは城下町の子どもたちの遊ぶ声が聞こえる。今日も魔界は平和のようだ。
俺はベッドに腰掛けていた体を起こし、デスクに向かった。机には重なった書類が風に吹かれ、さらさらと音を立てていた。しまった、仕事途中においてあった判子が乾いてしまっている。あとで治しておかなくちゃならないな。
「側近様、衛兵達の今日のスケジュールについて変更などはありますか?」
「特に無し、だ。今日も演習に励むようにと伝えろ」
扉をたたき、報告に来た衛兵団長が、切れの良い返事をして戻っていく。毎回人手不足の魔王城は、こうやって一部には仕事を掛け持ちしている者もいる。
そう、その一例がまさに俺だ。側近としての業務と財政管理、それから衛兵団の管理を担っている。まったく、労基待ったなしとでも言えるんじゃないだろうか。
え?労基がなんだって?現世界に行ったら分かることだ。