表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/15

宵の口

 だいぶ薄暗くなってきた宵の口。


「ようやく変態さんの住処から脱出できます」

 リビングに戻ってくるなり、制服姿の夜瑠が愚痴る。


 どうしてこんなに遅い時間になってしまったかというと、借りたジャージも洗濯しないといけませんね、と夜瑠が言ってきたからだ。

 再び口論になることが予想されたため、もう二つ返事で俺は了承し、たった今洗濯が終わったところだった。わざわざ洗濯が終わるまで待つ必要はない気がしたが、余程俺が信じられないのか、完了するまで帰る気は夜瑠にはなかった。


「……ああ、そうだな」

 疲労や鈍痛からか、俺にはもう言い返す気力がない。


「覇気がありませんね。そんなにわたしの大切なところを見たかったですか。変態さんですね。気持ち悪です」

 完全に否定できない分、反論しづらい。

 しかし疲れていようが、何か言い返す必要があるだろう。俺の尊厳とかのために。


「……そ、そんなわけないだろ。おまえみたいなつるぺた女の裸なんて」

「わたし、着痩せするタイプなので、そんな嫌味通用しませんよ」

 声にわずかな怒りがはらむ。

 通用してるじゃねぇか。


「……では、これでもう二度と会うことはありませんね。さようなら」

 軽く一礼した夜瑠。


「……もしかしたら、警察署で会うかもな」

 俺は咄嗟に自虐的な皮肉を言っていた。


「いえ、それはないと思いますよ。警察に事情を聞かれても、変態さんの名前は出しませんし、きちんと誤解だったと伝えますから」

「……一体、どういう風の吹き回しだ」

 歩く悪態つきの夜瑠さんの言葉とは思えない。


「今の言葉は絶対に守ります。警察沙汰になると本当に厄介だと思いますので、これですべての借りを返したということで、いいですよね? いえ、むしろ、わたしが貸しているくらいになっているかもしれませんね」

「相変わらず、口が達者だな」

「そうですか? では、最後に……わたしは寛容です。借りなど返していただかなくても結構です。さようなら、変態さん。次は来世で会いましょう」


 ドアを開け、夜瑠は出て行った。

 リビングからも、そしてこの家からも。


 随分久しぶりに騒がしかった我が家は、火が消えたようにシーンと静まり返り、残された俺は独り小さく息を吐く。

「……五十棲夜瑠、か……」


 ――結局最後まで、夜瑠は俺の名前を呼ばなかったな。



 本当に最後にしていいのか? 俺……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ