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急転回?

「で、何があったのかね?」

由香里先生が聞いてくるが、さて、俺にも一体何がなにやら…?

「一体、何があったんでしょうかね?」

「…キミ、私をおちょくっとるのかね?」

由香里先生が微笑みながら額に青筋を立てる。


…こ、怖ぇ…


「い、いえ、俺にも本当に解らないんですよ!」

「…いいから、キミが保健室に遥をお姫様抱っこで連れて来て、

 ベッドに寝かせて「ショウ、大好き」って言われてチュウするまでを

 客観的事実だけを時系列に話していきたまえ」

「わあっ!!チュウなんてして…ませ…んょ?」

「なんだその自信無さ気な自問自答は。ほれ、ちゃっちゃと喋る!

 喋るなら早くしろ?喋らないなら帰れ!…もちろん教室へな」

「誰の真似ですかセンセー…?」

「余計な突っ込みは入れんでいい。で?」

え〜と、まずは…

「そうですね、まず昼休みに遥が俺の教室にやって来て…」

俺は、昨日の夜からの一連の流れを先生に説明した。

ふむふむと聞いていた由香里先生は、俺が話し終わると

パン!と膝を叩き、「よし、解った!」とj声を上げた。


「え…?」

戸惑う俺に説明を始める由香里先生。

「まず、芳野が遥に対して取った行動は、キミへの嫉妬だ。ヤキモチだ」

「はあ?なんでそんな」

「まあ最後まで聞け。

 キミと遙は幼馴染という所を差し引いても、傍から見てると仲が良すぎる。

 もちろん、それはキミの人生事情による所が大きいが、

 そういう事は理解はしても納得は出来ないのが人間って言うものさ。

 特に、恋に恋するキミ達の世代じゃな」

「…はあ…」

「遙の事だから、芳野とデートしたり一緒に登下校してる時でも

 キミとの事を楽しそうに話しているだろう。

 芳野も解っているから堪えていたが、やはり納得行かなくなり、

 たまたま今日爆発したんだろう。まあ、間が悪かったんだな」

「…なるほど」

「だがしかし、最上級生にして剣道部主将としてはちょっと情けない行動だから、

 私が放課後ちょいと事情聴取と説教を行う。キミも来てくれると有難いが」

「はい、バイトは七時からだから大丈夫です。

 でも、遙はどうしますか?」

「そうだねぇ…」

考え込む由香里先生。

「あたしも、一緒に話させて下さい」

シャッとカーテンを開け、赤い目をした遙が姿を現した。

「大丈夫か?遙。もう気分は良いのか?」

「うん、大丈夫…ありがとうショウ」

「おう、復活したかね。もう平気だな?」

「はい、由香里先生もありがとうございました」

「じゃあ、放課後に一度職員室に集合してから、指導室かどっか

 空いてる部屋に移動して話をしようか」


「あっ!!」

その時、俺は西村との約束を思い出した。

「な、なによショウ!おどかさないでよ!」

「どうした少年、突然叫んで」

「…放課後、ちょっと遅れても良いですか…?」

「なんだ?何か用事でも有るのか?」

不振そうな表情をする二人。

「ええと、俗に言う野暮用ってヤツが…」

「野暮用だと?なんだねそれは?」

「ええと、う〜ん…」

どうしようか…でも、隠しておいて後で遥にバレるとマズいしな。

「実は、今日西村への返事をすることになっていて…」

「あ!」遥が声を上げる。

「西村?どのクラスの?何の返事だ?」

由香里先生は何のことだか解らず混乱している。

「一年の西村亜里沙って知ってますか?」

「おう、次期ミス我が公の第一候補の亜里沙嬢だな?」

…やっぱ、考える事は誰でも大体一緒なんだな…

「ショウが、亜里沙ちゃんからラヴレター貰ったんです。

 それで、返事するのが今日なのね?」

遥が話を引き継いで説明する。

「ああ、今日の放課後付き合うかどうかの返事をするんだ」

遥と先生が俺の顔をマジマジと見詰める。


「…そうか、解った。じゃあ職員室に来てもらうのは放課後、四時半で良いか?」

「はい、大丈夫です」

「あたしも大丈夫です。どうせ部活有るし」

「そうか、じゃあ芳野にもそう伝えておくから。

 …ところでな、イヤなら答えなくても良いんだが、西村亜里沙にはなんて返事するんだ?」

うっ!まだ全く考えていなかった…

「そうですね、どうしましょうか…?」

遥が俺の顔をじっと見詰めている。

「…まあいい、そう言う悩みは青春時代にしか出来ない贅沢な悩みだ。

 じっくりと考えるんだな。さて、遥、キミは何か言わなくて良いのか?」

「え!…だって、ショウの事だから私が何か言う資格なんて無いし…」

にやっとする由香里先生。

「ほう、じゃあ資格が有れば言いたい事は有る、と」

カーッと赤くなる遥。

「さて、次の授業まではまだ時間が有るし、放課後までもまだしばらく有る。

 二人でしっかりと話合ってみれば答えは出るかもしれないな。

 私は自習させてる連中の所に戻るから。ま、ごゆっくり」

由香里先生は色っぽいウインクを一つして出て行った。


取り残された俺達はチラチラとお互いを見詰め合う。

…いったい、どうすりゃ良いんだこの空気…

誰か、知恵、いや勇気を俺に貸してくれ!

いや、他人も神様もこういう時に当てにしちゃいけない。

俺自信が答えを出して行動しなければ行けないと言う事を

この一年でイヤと言うほど学んだはずだ。

ふと見ると遥の目から涙が溢れている。

「どうした、遥!どこか痛むのか?」

焦って問い掛ける俺。

「…ううん、体はどこも痛くない。

 でも、とても切ないの…なんでかな、ショウの顔見てると…

 ショウの事考えてると…胸が痛いの…」

遥は大粒の涙をポロポロと零している。


ガキの頃、遥とケンカして泣かした俺をぶっ飛ばしたオヤジがした説教を思い出す。

「いいか、男が絶対にしちゃならないのは、女の子を泣かす事だ!」

オヤジは遥を抱き上げてあやしながら俺を叱った。

「男は女を守る事が仕事だ。よく覚えておけ」

俺はオヤジを、心から尊敬していた…そう、オヤジがこの世を去った今も。


よし!男は度胸!


「遥!話が有る」

「…え?」

「遥、俺は、お前を!」





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