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交錯?

まだあまり人も居ない学校に着き、教室へ向かう。

教室にはまだ誰も居ない。一番乗りは初めてだな。

席に着き、大きな欠伸を一つしてから机に突っ伏して目を閉じる。

あっという間に意識が遠くなって行く。

なんだか、すげぇ疲れてるな…


「ショウ、起きろよ、ショウ!」

…ん?

目を覚ますと目の前に鈴木の姿。

ああ、もう授業か?

「客が来てんぞ」

俺が顔を上げると、鈴木は教室の入り口を指さして言う。

まだ寝惚けたままの頭でそちらを見ると、

そこには亜由美の姿が有った。

「サンキュ」

鈴木に礼を言って亜由美の元へと向かう。

「おはよ、ショウくん」

「ああ、おはよう亜由美。どうした?」

「…昨夜はごめんね。嫌な思いさせちゃって」

「ああ、気にしてないよ。俺こそ悪かったな、

 お前も気まずくなっちゃったろ?」

「ううん、大丈夫。もう会わないから」

「…そうか。それが良いかもな」

亜由美の顔が少し赤い。どうしたんだろ?

「ね、ショウくん、今日はお弁当持ってきてるの?」

「いや、持って来てないけど」

「じゃあ、これ食べて!私が作ったの…」

亜由美が可愛いバンダナに包まれた大きな弁当箱を差し出す。

「え?良いのか?」

「うん、昨日のお詫びも兼ねて。ショウくんの為に今朝一生懸命作ったんだよ」

「ありがとう。喜んで頂くよ」

「うん!食べ終わったら洗わなくても良いからね。放課後、私の下駄箱に入れておいて」

「ああ、解った。ありがとう」

亜由美はニコっと微笑み、

「じゃあまたね!あ、ショウくん、昔みたいに亜由美って呼んでくれるの嬉しいよ!」

と言ってタタっと廊下を掛けて行った。

そう言えば、昨夜の一件で昔を思い出してから亜由美、って呼ぶようになったな。

ふっと笑いながら振り向いた俺の目の前に、

クラスの殆どの男子が凄ぇ怖ぇ顔をして並んでいた。

「…な、なんだ?どうした?」奴らの発する負オーラにビビる俺。

「おい、お前、南亜由美とどう言う関係だ」

「まさか付き合ってるんじゃねぇだろうな?」

…なるほど、誤解したか。

「違うって。ちょっと亜由美の困ってた事を解決してやったから、

 お礼にこの弁当作ってくれただけだって」

冷や汗掻きながらとりあえずデマカセを言う。

「なぜ亜由美とか呼び捨てにしてるんだ…」

「亜由美と俺は小学校からの幼馴染なんだ!」

「そりゃ若宮の事じゃ無かったのか?」

「だから!遥も亜由美も幼馴染なんだって!!」

野郎共(ハイエナ)は何とか納得したらしく、席に戻っていく。

ああ、マジ怖かった。



ショウにお弁当渡さなきゃいけないのに、朝はショウの顔を見るのが怖くて渡しに行けなかった。

休み時間の度にお弁当を持って行ったり来たりしている。

今日の朝練は散々で、先生から休んでろって言われちゃうし…

いけない、こんなのあたしらしくない!

よ〜し、女は度胸!

両手で自分の頬を張り、気合を入れる。

うん、昼休みになったら速攻で行くわよ!!

「ファイトぉ!」

「何がだ?若宮…」

「え…?あっ!?」

目の前には、古文の佐々木先生がにっこりと微笑みながら立っている。

教室中が爆笑の渦に包まれた。

は、恥ぃ〜…

昼休みのチャイムが鳴り、授業が終ると同時にあたしは廊下に駆け出した。

「遥ちゃん、どうしたの?」

「ちょっとね!」

不思議そうに声を掛けてくる亜由美に言い捨てて廊下を走る。

この勢いで渡しちゃおう!ついでに一緒に食べながら昨日の事謝ちゃお…

ショウのクラスに辿り着く。ショウは、と、居た!

「お、若宮。ショウか?ちょっと待ってろ」

顔見知りの男子が気を利かしてショウを呼びに行く。

鼓動を抑えつつ気合を入れ直していると、突然後ろから声を掛けられた。

「遥、何やってるんだ?」

「!博隆。どうしたのこんな所で?」

「ああ、昨夜話したろ?今日はお袋が旅行で居ないから弁当無いんだ。

 これから学食行く所さ。って、なんで弁当二つ持ってんだ?もしかして俺の分か?」

博隆もショウの事は知ってるから、解って言ってるのよね。

「おう、遥、昨日は悪かったな…って、芳野先輩と一緒か。どうした?」

ショウは博隆に会釈してから全然普通に話しかけてきた。

良かった、怒ってないみたい…

「昨日って、何か有ったのか?」

博隆が聞いてくる。なんてタイミング悪いの!

「あ…ええと、俺が遥に貸してくれって頼まれたCDを忘れちゃったんですよ」

「お前には聞いてないよ。遥、本当か?」

え?何それ?私はビックリして博隆の顔を見る。

ショウもちょっとムッとしたみたい…

「え、ええ。本当だけど…」

「あっそう。さて、遥、早くメシ喰いに行こうぜ」

博隆が私の手を握り、無理やり引っ張る。

「ちょっと待ってよ。これは…」

「俺のだろ?当然。屋上ででも食おうぜ」

呆気に取られた様なショウを残して、私は連れて行かれてしまった。


…何だったんだ、今のは…?

芳野先輩に引っ張られて去った遥が俺を何とも言えない顔で見ていた。

その手には二つ、弁当が握られていた。

…もしかして一つは俺の為のだったのか?いや、あのタイミングなんだから

芳野先輩に作ってきたんだろうな。遥は何をしに来たんだろうか?

って、床に何か落ちてるぞ。

これは、遥の財布だ。引っ張られた時に落としたんだな。

遥たち、屋上に行くって言ってたな。


「博隆、ちょっと待ってよ!」

屋上の手前で我に返った私は博隆の手を振りほどいた。

「このお弁当、ショウにってママが作ってくれたの!

 だから、ショウに渡さなきゃ…」

「遥!いい加減にしろよ!」

いきなり怒鳴る博隆に驚き、呆気に取られる私。

「いつもショウ、ショウって、お前の彼氏は一体誰なんだ!」

「…なに怒ってるの?だって、ショウは一人ぼっちなんだし…」

「そんなのどうでも良いだろ?お前の親戚とかじゃ無いんだからほっとけよ!」

「…どうして、そんな事言うの?ショウはママの親友だったおばさんの子だし、幼馴染だし、

 何よりも大切な友達だもん、ほっとけないよ!」

「じゃあ、俺よりもあいつの方が大切って事か?」

「なんでそうなるのよ!そんなの比べられないよ!」

「じゃあ今決めろよ。俺と別れるか、あいつと縁を切るか!」

「…!どうしたの博隆!なんかおかしいよ!」

「うるさい!早く決めろよ!」博隆が私の肩を掴んで揺さぶる。

「痛い!やめてよ!」博隆の腕を振りほどく私。

その拍子にお弁当を落としてしまった。

「あっ!」

ショウの為のお弁当が床の上に散らばる。

私はペタン、と座り込んで必死でかき集める。でも、もう殆ど食べれないよこんなの…

思わず涙が流れ出す。「えっ、酷いよ、ふえっ、」

悲しくて悔しくて思わず泣き出してしまう。

「お前が悪いんだからな!」

捨て台詞を残して博隆は階段を駆け下りて行った。


屋上への階段を上っていると、なにやら言い争っている声が聞える。

…遥の声だな?

俺が急いで階段を駆け上がると、芳野先輩が駆け下りてきた。

俺の顔を見て、「お前のせいだ!」と一言吼えて掛けていく。

…意味不明だな…

その時、階段の上から遥の泣き声が聞こえてきた。



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