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愛してる!!

遥は泣きじゃくりながら告白を続けた。

「わた、私、ひっく、まだ、早い、うえ、って、思って、ひっく…」


先月末の事。

遥と芳野先輩はある映画のレイトショーを見に行った。

もちろん、両方の親の許可は取って、だ。

しかし、芳野先輩の勘違いでその日は観たい映画の公開一日前で、

観たくもない映画をお金出して見るのも何なので映画鑑賞は取り止めに。

これからどうしようか相談しながら公園を歩いている内に良い雰囲気となり、

ベンチに座ってキスしたりイチャイチャしているとチンピラっぽい五人組に絡まれ、

芳野先輩と遥で一人ずつぶっ飛ばしてその隙に逃げ出した。

追いかけてくるチンピラから逃げている内に、ラブホ街に迷い込み、

隠れるのと一休みする為に一軒のラブホに入ってしまったと。

そして、その後の事は…


「うえっ、ごめんね、ごめんねショウ、ひっく、あたし、ひっく、

 博隆に、えっ、ふえ、えーーーーーん!!」」


遥がペタンと床に座り込み、顔も隠さず大声を上げて泣き出した。

その時の俺は呆然としてしまい、泣きじゃくる遥をほけっと見ていた。

キスくらいは当然だと思っていた。

もしかすると、遥の魅力的な体は触れられているかもしれないとも思った。

しかし、まさか…!


その時、風呂のタイマーがカチっと止まった。

「遥、風呂沸いたぞ…」

なぜか俺の口からそんな言葉が出てしまった。

ピクっと震える遥


「ねえ、ひっく、ショウ、…ひっく、こんなあたし、ひっく嫌いになった…?」


そんな事ない!おまえはおまえだ!関係ないよ!

口をパクパクさせる俺。

しかし、肝心の言葉が出てこねえよっ!!

くそっ!!どうした俺!!

今こそ、俺の今までの生涯で一番大切な娘を抱き絞めろ!!


…しかし、俺の腕も、足も、口も…!!


なんで動かないんだ!どうしちまったんだよ俺!!

お前はその程度の男か!!

大好きな娘がばっくりと割れた傷を隠さずに見せてくれたのに、

その傷に怯んで動けなくなっちまう程度の小せえクズなのか!!


「やっぱり、ひっく、許してくれないんだね…ふえ、うえ〜ん!」

また泣きじゃくり始める遥。

ちくしょう!どうして動けないんだ!何で声が出ないんだ!!


ドン!ガシャーーン!!


「うわっ!!」

「きゃっ!?」


突然、隣の物置部屋から凄い物音がして俺と遥は飛び上がるほど驚いた。

「な、なんだ!?誰か居るのか!?遥、お前はここにいろ!」

俺は叫ぶと隣の部屋に向かってダッシュする。

物置のドアを開け、電気を付けると…!


「あっ…!!」


銀色の巨体が斜めになり、積んであった荷物を薙ぎ倒している。

そこには、スタンドが外れて倒れかけた親父の形見カタナが有った。

「親父…」

カタナのヘッドライトが俺を睨んでいる様に見える。

俺はカタナを起こし、スタンドを掛ける。

その時、親父の怒鳴り声が聴こえた気がした。


「ショウ!男の仕事はな、大好きな女の子を護る事だ!お前は遥が好きなんだろ?

 だったら、どんな事が有っても遥を護れ!解ったな!!」


小学生の頃、親父が俺に言った言葉。

今こそ、その時だ!

ありがとう、親父!

俺はカタナに向かってバッと頭を下げ、部屋に戻った。


「遥!」

俺が部屋に駆け込むと、遥が上半身裸で立っている。

「わっ!?どうした!遥!?」

思ったよりもずっと大きな遥の胸に目を引き付けられて戸惑う俺。


「…ショウよりも先に、触られたの!ショウよりも先に…!」

遥が胸を両手で覆い隠す。


「ねえ、ショウ!私を抱き締めて!もし、もう汚れちゃってる私で良ければ…

 抱き締めて!お願い!ショウ!!」

溢れ出る涙を隠そうともせずに遥が叫ぶ。

そうだ、あの涙を止めなきゃ!


動け!俺の体!俺の腕!!

親父カタナに叱られたばかりじゃないか!!


「うおらあっ!!」


俺は叫び様、遥をぎゅうっと抱き締めた。

「!!ショウ…」

俺の腕の中の遥が呟く。

「大丈夫だよ、俺はぜんぜん気にしてない。

 お前はその時、確かに芳野先輩の事を好きだったんだろ?

 だったら、そういう事が有っても当然だよ。

 これから、俺たちはずっと仲良くやってくんだろ。

 何も、問題なんかないさ」

「ショウ…ありがとう…」

遥が俺をぎゅっと抱き締める。

これから俺が、遥を守って行かなきゃな…

「ね、ショウ…」

遥が目を瞑り、口を少し突き出す。

俺はそっと唇を重ねた。

「ん……」

愛らしい喘ぎ声を上げながら、遥は俺の腰に廻し手にきゅうっと力を込めた。


俺は遥の柔らかい唇の感触を惜しみながらキスを終らせ、もう一度遥をぎゅっと抱き締める。

「遥、お前は汚れてなんかないよ。こんなに綺麗じゃないか。

 俺はお前が大好きだ、愛してるんだ。

 だから、もう二度とそんな悲しい顔をしないでくれ」

遥はぐすぐすと泣いていたが、その涙はもう悲しみの涙じゃ無くなっている。

「ショウ…私ね、ホントは昔、ショウのお嫁さんになるのが夢だったの。

 でも、成長する内に、いつの間にか忘れちゃってた…

 でも、でも、またその夢が戻ってきちゃったよぅ…」

涙で光る瞳を上目遣いにして、じっと俺を見詰める、俺の最愛の少女。


tって、お、お嫁さん!?


……ああ、いいだろ!俺だって、昔は遥をお嫁さんにするって思ってたんだしな。

よし、それなら!

「じゃあ遥、今すぐ、じゃないけど、将来俺がお前を養えるようになったら結婚してくれるか?」

バッと遥が顔を上げ、大きくてくるくる動く瞳が驚いた様に俺を見つめている。

そしてアヒル口がにゅうん、と丸まり、にぱっ!としたいつもの笑顔が戻ってきた。


「……仕方ないわね!ショウがそんなにあたしの事が大好きなら、

 大サービスでお嫁さんになってあげるわよ!!」


……ハァ?


「ってをい!!お前なあ!!なんだそりゃ!!!」

「バカショウ!あたしに感謝しなさいよね!

 あたし以外に本気であんたを好きになる子なんていないんだから!!」

両腕を腰にあて、ふん!とふんぞり返りながら偉そうに言い放つ遥。

俺はふう、と肩を落としながら溜息をついた。

ま、この方がコイツらしいぜ。あはは、ははは!!


「ショウ、何笑ってんのよ!さ、お風呂入るわよ!支度しなさいよ」

え?

「一緒に、入るのか?」

思わず聞いた俺の言葉に遥はちょっと赤くなったが、

「そ、そうよ!しっかり私を洗ってよね!今夜は、その、

 ……ショウと私の、初めての夜なんだから!」

とぷいっと目を逸らしながら頬を紅潮させた。


そうか、そうだよな。


「ようし、じゃあ気合入れて入ろうか!俺の可愛い遥ちゃん」

「もう、バカ!さっさとしなさいよ!

 ……私の、世界で一番大好きで大切なショウ……」



さて、そんなこんなで一段落。

まだまだ頭痛のタネは多いけど、なんとかかんとかやって行こうかね。

そう、俺と遥の二人でな。


さあ、明日も頑張るぞ!!






     それすらもただ平穏なる日々


         完

Ending image song : 硝子のキッス

Artist : Rika Himenogi


Special thanks to Naoki.M & Haruka.I & Sanae.O

And Very Thanks To All.


Presented by Shogo Hazawa



「それすらもただ平穏なる日々」

ご愛読頂きましてありがとうございました!

まだまだショウと遥のドタバタカップルの物語は続きますが、一先ず区切りとさせて頂きます。

長らくのご愛読、真にありがとうございました!

また、多くの評価と感想を頂きまして、こちらも本当にありがとうございました!


また、現在続編「それすらもまた、平穏なる日々」を連載しております。

こちらも併せてお読み頂ければ幸いです。


それでは、またお会いできる事を楽しみに…

作者より、全ての読者様に親愛の情と感謝の念を込めて…


2007/10/12 羽沢 将吾


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