熱々?
「ショウくん、退院おめでとう!」
「無理しちゃダメよ。まあ、可愛くて世話好きな彼女が居るから大丈夫か!」
にこやかな看護婦さん達に見送られ、俺は一週間の入院生活にピリオドを打った。
「ショウくん、今日はお祝いしようね!まどかさんが用意してくれてるの!」
まだちょっと痛い右足を引き摺る俺を支えているのは…
長かった髪をバッサリと肩までの長さに切ってしまった亜由美だ。
俺の世話をするのに邪魔だとかで、惜しげもなく切ってしまったそうだ。
その行為に涙を枯らすほど泣き濡れた男共が二ダースは居たとか…
そして、その俺達をぶすくれた顔で追うのは遥ちゃん…
ものすげぇ冷たい視線が俺と亜由美に突き刺さっている…
って、何度目だこの背筋の冷たさは。
くるっと振り返った亜由美が、
「遥ちゃんも絶対来てね!香奈ちゃんと沙里ちゃんもね!」
と遥に笑い掛ける。
「え、ええ、ありががとう!」
無理に微笑みながら答える遥。だが噛んでるぞ…
…すまん、我が恋人よ…
しかし、現在の亜由美の精神状態を考えると、突然
「実は俺、遥とラヴ。してるからお前とはラヴ。出来ないんだ。テヘッ」
なんて言おうモノならどうなっちまうか解らないしなあ…
その事自体は遥自身も理解していて、彼女自身も
「亜由美には私たちの事はしばらく内緒にしようね」と言ってるから問題は無いハズだが、
そういう事情が有ったとしても自分の彼氏が目の前で他の娘とイチャイチャしてるのを
ニコニコしながら見てるのは無理だろうな。常識的に考えて…
だが、退院すればバイトで忙しい俺の所へ
亜由美もそうそう遊びに来る訳には行かないし、
亜由美の家から俺の部屋までは結構距離有るしな。
そうしたら、思う存分遥とイチャ×ラヴ出来るってもんさ!ああ!そうだとも!
しかし、そんな俺の目論見が外れまくるのはお約束なんじゃないのか…?
いかん、ついマイナス思考に陥る癖が付いちまってる。
ポジティヴシンキングで行こうぜ!俺よ。
病院の外に出ると、亜由美の親父さんが車で待っていた。
「やあ、ショウくん、退院おめでとう!さあ、乗って乗って!」
助手席からまどかさんが降りてきて荷物をトランクに入れてくれる。
「うおっ!BMW…」
こんな高級車に乗るのは初めてだ。
俺んちで買った一番高価かった車は最後に乗ってたハイエースワゴンだったしな。
それまでは軽のハコバン専門だったし。
遥の家もセドリックだし…
亜由美の親父さんは某一流企業重役だからな…
「さ、みんな乗って!とりあえずショウくんの部屋に行こうか。
遥ちゃんのご家族は今日のお祝いに来てくれられるんだよね?」
親父さんが遥に聞いてくる。
「あ、はい、父は仕事なので無理ですが、私と妹達はお邪魔します」
「あら、お母さんは?」
まどかさんが聞く。
「あ、母は父の食事の支度とかが有るのでご遠慮させて頂くそうです」
「まあ、残念ね。でも、今日は私と亜由美ちゃんで腕によりを掛けたから期待してね」
「…はい、ありがとうございます」
う〜む、無理してるな、遥。
後でイイコイイコしてあげよう。
そうこうする内に俺の部屋へと到着する。
一週間ぶりの我が部屋、なんか物凄く久しぶりな気がするなあ…
亜由美に待っているように言い、カナサリを呼びに行く遥と二人で車を降りる。
「あ、遥!お前に借りてたCD返すからちょっと来てくれよ」
俺は亜由美にも聞こえる様に大声で言い、遥と部屋に入った。
すると、結構散らかっていた部屋の中がすっきりと片付いていて驚いた。
「掃除、しといたから…」遥がぼそっと呟く。
俺は突然振り向き、遥を抱き締めた。
「あん!もうバカ…」
アヒル口で文句を言いながらも俺の首に腕を回す遥。
俺達はぎゅっと抱き締め合った。
遥の胸が俺の胸に押し付けられて柔らかい感触が広がる。
遥が潤んだ瞳で俺を見詰めていたが、すっと瞳を閉じて
可愛らしいアヒル口を少し突き出した。
俺は自分の唇を遥のそれにそっと重ねた。
「ん…」
遥が軽く喘ぐ。
一度唇を離し、角度を変えて重ねる。
「あん…」
可愛い遥の喘ぎ声に、さっきから大きくなっている俺の一部が更に反応する。
しかし、遥はそっと俺の胸に手を当てて唇を離してしまった。
「あんまり長く掛かると、不自然でしょ…」
潤んだ瞳で俺を見詰める遥。
俺達はもう一度、ちゅっと軽くキスをした。
「ショウ、大好き…もうどうしていいかわかんない位大好き…」
遥がぎゅうっと抱きついてくる。
「俺もだよ、遥。もう絶対離さないからな」
言いながらぎゅっと抱き締める。
「ずっと、こうしてたいよ…」
遥が涙ぐんでいる。
「今夜、亜由美の家から帰ってきたらちょっと寄ってけよ」
俺の声に遥が首を振る。
「え?嫌なのか?」
焦る俺。なんか、下心でもある様に見えたのか…?
「んーん、ちょっとじゃイヤ。ゆっくりしてくもん」
遥が悪戯っぽく笑う。
泣いたり笑ったり忙しい娘だな、お前も。
そして、俺達はせーの、と声を掛けてバッと離れた。
適当なCDを遥に渡して、
「じゃあ、カナサリ呼んで来いよ」と声を掛ける。
「ん、ちょっと行ってくるね!」
元気に声を上げて遥が部屋を飛び出していく。
…今夜か。う〜ん理性が持つかな…