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現況認識?

昨夜の事を思い出すと、遥の言葉の意味がなおさら解らなくなる。

一体、遥は何を待っていたと言うのだろう。

いくら考えても解らない。


う〜ん…


コンコン


誰か来たな。

「ショウくん、入るわよ」

遥のおばさんか。

「おはよう、ショウくん。良く眠れた?」

「うん、なんとか。」

「怪我の方はどうなの?」

心配そうな顔をするおばさん。

「うん、大丈夫だと思う。まだちょっと痛むけどね」

その時、半泣きの亜由美が入ってきた。

「ショウくん…ごめんね、私のせいで…」

亜由美はポロポロと涙を零している。

「ああ、大丈夫だから気にすんなよ」

俺の言葉は本当だ。

俺がもっと亜由美の気持ちを考えて喋れば、

亜由美だってあんなに取り乱したりしなかったはずだ。

「パパはまだ警察に居るから、後でまた謝りに来るわ。

 代わりに、パパの奥さんが来てるんだけど入れても良い?」


…なんだ?パパの奥さんって。お母さんって事だろ?

「あのね、亜由美ちゃんのお父様は昨年再婚なさったの。

 だから、今日は亜由美ちゃんのお義母様がいらっしゃってるの」

「止めておばさん!私のお義母さんじゃなくて、パパの奥さんだからっ!」

亜由美が叫ぶ。


そうか、最近の亜由美の様子がおかしかったのは、お父さんの再婚のせいか。


「亜由美、せっかくお見舞いに来てくれたんなら入ってもらってよ」

俺は亜由美に優しく言う。

「…じゃあ、呼ぶからちょっと待ってね」

亜由美はそう言うと、部屋を出て行った。


「おばさん、遥は?」

「亜由美ちゃんのお義母さんと一緒に待合室で待ってる。

 ショウくん、遥と何か有ったの?

 昨夜は、ショウくんの為にシチュー作るんだってとても張り切っていたのよ」

「…俺にもよく解らないんだけど、昨晩の事件が原因だとは思うんだ」

おばさんはちょっと首を傾げ、

「そうね、まあ多分ヤキモチでしょうけど」と言って苦笑した。

「ヤキモチ?」何が?誰に?…って、ああ!

「やっと解ったのね?そう、あなたと亜由美ちゃんによ。

 ここだけの話だけど、遥はショウくんの事好きなのよ。

 だけど、芳野くんと成り行きみたいな感じで付き合いだしたから

 ショウくんへの恋心は自分でも知らない内に封印してたんでしょうね。

 だけど、ショウくんが一年生の娘に告白されたり、

 一昨日、芳野くんが来てショウくんの事忘れてしまった時の後悔の念なんかで

 自分の気持ちにやっと気付いたんでしょう」

…まあ、俺も似たようなタイミングで自分の気持ちに気付いたんだけど。

「そのタイミングで昨晩の事件が起こって、遥は自分でも何が何だか解らない位

 大混乱しているんだと思うわ。だから、遥の事許してやってね」


なるほど…あっ!!

「解ったぁ!!」

俺は大声で叫んだ。

「きゃっ!?どうしたのショウくん?」

突然叫んだ俺におばさんが驚いている。

「あ、ごめんなさい。何でもないです」

おばさんに謝る俺。

…そうか!遥が待っていた「言葉」ってのは、俺からの告白だ!

あの時、保健室で言おうとした言葉…!

邪魔が入って先延ばしになったけど、きっとあの言葉を待っていたんだろう。

だから、俺と亜由美との事を誤解してあんな事を口走ったんだろう。

「何が解ったんだ?少年」

突然響いた声に驚いて部屋の入り口を見ると、花を持った由香里先生と

俺の担任の浅井先生、そして遥に亜由美に見知らぬ女性が入ってきた所だった。


「おはよう、ショウ、怪我の具合はどうだい?」

由香里先生がのほほんとした声で挨拶する。

「災難だったようだな。大体の事情は聞いてる」

担任の浅井先生も心配そうに聞いて来る。

「はい、ご心配掛けて住みませんでした、」

俺は二人の先生にお辞儀する。

「ほれ、亜由美、ショウにお義母さんを紹介したまえ」

由香里先生に促され、亜由美がしぶしぶといった感じで紹介を始めた。

「…ショウくん、この女性(ひと)はパパの新しい奥さんのまどかさん」

ウェーブの掛かった長い黒髪の美女が深々とお辞儀をした。

「はじめまして、私は南の家内のまどかです。

 この度は主人がとんでもない事をしていまいまして真に申し訳有りませんでした…」

心の篭ったお詫びに、俺はちょっと慌ててた。

「いえ、まあ大した事…は有りましたが、お気になさらない様にして下さい」

まどかさんが頭を上げる。

かなり若い女性だ。おそらく、まだ二十台か、少なくとも三十台前半だろう。

「主人も早まった事をしてしまったと大変後悔し、反省しております。

 また後ほど三人でお邪魔しますので、よろしくお願いいたします」

もう一度深々と頭を下げる。

「ええ、お待ちしてます」

「もうお詫びは済んだんでしょ。じゃあ帰って下さい」

亜由美が冷たく言い放つ。

「ええ、亜由美ちゃんは…」

「私の事は放っておいて下さい。構わないで!」

「…じゃあ、私は警察に行きます。気をつけて帰ってきてね」

出て行くまどかさんに返事もせずに亜由美はそっぽを向いた。

「…さて、複雑な家庭の事情を目の当たりにした所でなんだが、

 とりあえずショウくん、何故キミが入院するハメになったか理解出来てるかね?」

「なんとなく、ですけどね。幾つもの誤解とバッドタイミングが

 最悪の方向へ働いたってトコでしょうか?」

くくく、っと笑う由香里先生。

「さすが、苦労しているだけあって既に高校生とは思えないほど大人びているなキミは。

 そう、その通りだ。まあ、ここにいる関係者の理解を深める為にも

 私が聞き込んだ状況推測結果を披露しましょうか」


…俺が亜由美を家まで送り、再び亜由美と一緒に家を出た時、

家にはまだ亜由美のお父さんは帰ってきておらずまどかさんしか居なかった。

まどかさんに行き先を聞かれた亜由美は「ほっといて!」と怒鳴り飛び出す。

それを追ったまどかさんは俺の自転車に乗って去って行く亜由美を見た。

そして亜由美は俺の部屋で食事を作って俺を待ち、帰ってきてから一緒に食べ、

その後に俺の不用意な発言により大胆な行動に出てしまった。

その頃、帰宅した亜由美のお父さんはまどかさんから経緯を聞き、

とりあえず亜由美を待ってみたが十一時を過ぎても帰って来ない。

余りにも遅い帰りに心配が高じて心当たりの友達としてまず遥に連絡し事情を話した。

遥は亜由美を自転車に乗せて去った少年の事を聞き、もしかしてショウではないかと思い

遥の家にやってきた亜由美の父さんと俺の部屋へ来て、

俺がテーブルに蹴躓いて立てた音に驚いて合鍵で入ると

そこには半裸の亜由美に伸し掛かっている俺が居た、と。

亜由美の父はあられもない姿の愛娘を押し倒している俺に激怒し、

すったもんだの末左手と頭部に大型のマグライトを振り下ろし、

左腕の骨にヒビを入れ、脳挫傷一歩手前の怪我を負わせた…


「で、なぜ亜由美が半裸でショウに押し倒されていたかは亜由美本人から説明有り、と。

 以上でショウくん殺害未遂事件のあらすじは終了だが、何か質問の有る人は?」

もちろん、誰も手を挙げない。

と、おずおずと手を挙げたのはこの俺自信だった。

「え〜と、さっき亜由美のお父さんが警察に居るって言ってましたが、

 なんで未だに警察に居るんですか?」

「うん、それはだな」浅井先生が答える。

「いくら誤解やら何やらが有ったとは言え、アメリカでは持ち運びに規制すら有る様な、

 またアメリカンポリスが正式に警棒として採用している様な大きなマグライトで

 未成年の腕にヒビを入れ、更に頭部挫傷まで負わせてしまったからな。

 これでは間違いなく傷害だし、縁起でも無いが、もしショウが死にでもしたら

 過失ではない殺人だからな。 警察も放って置く訳には行かんさ」

「なるほど…」

まあ確かに痛かったからな。腕も頭も…そして心も。

「ショウくん、治療代とかは南さん持ちになるって事だからね」

おばさんが優しく言ってくれる。


確かに俺は、治療費を払えるだろうかってのが懸念だったから安心する。

「当然です!ちゃんと慰謝料も払わせるから安心してねショウくん」

亜由美がいつの間にか俺のベッドに腰掛けながら俺をじっと見ている。


遥は入ってきてから一言も口を利かずに窓の外を眺めている。


それにしても、これからどうするかね…





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