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お邪魔?

「遥、俺は!お前を!」

遥が俺の涙を浮かべたまま俺の瞳を正面から見詰める。

くそっ!中々口が動かねぇ!

行け!俺!!


「俺は!お前の事がす」


ガラッ!!

「田中先生!怪我人です!!!」

ドタドタドタドタ!!

「きゃあっ!」

「わああっ!!」

俺と遥は比喩ではなく本当に二十センチほど飛び上がった。

飛び込んできたのは体育教師と体操服の女子一団。

先頭の体育教師に抱かかえられた生徒の頭から血が流れている。

「あれ?田中先生は?」

体育教師が俺に尋ねる。

「あ…今職員室に行ってると思います」

「そうか、みんな、僕は職員室に行ってくるから佐藤の事を見ててくれ!」

体育教師はダッと保健室を出て行った。

何て間の悪さだ…っていうか、なんてお約束な展開だよ…

俺と遥は顔を見合わせて苦笑するしかない。

「あ!ショウ先輩!」

その時、可愛らしい声が俺を呼んだ。

「お?あ!西村か」

そこには、ツインテールの可愛い娘が驚いた様に立っていた。


途端に、「きゃー!」とか「え!あの人なの?」

と言った黄色い声が聞こえて来る。

「マジ?あの人がショウ先輩?」

でっかく目を開いて西村に詰め寄ってるのは頭から血ィ流している

佐藤何某だ。お前怪我人だろオイ…?

「どうしたんですか?先輩。具合でも悪いんですか?」

西村が俺に聞いてくる。

「い、いや、ちょっと遥が調子悪くてな…」

「え!あっ!若宮先輩!」

気付いてなかったのか西村…

ピピクぅっ!!

遥の額に青筋が立つ。

あわわ、ちょっとマズいですよこれは…

「…あら、あたしの事はアウトオブ眼中だったのかしら西村亜里沙さん?」

的を狙って弓を引き絞る時の顔になる遥。

凛々しくて好きな表情だが、このシチュエーションではメチャ怖ぇよ。

「え…ご、ごめんなさい、そんな事無いです…」

驚き、脅えた様に俯く西村。

「おい遥、そんな言い方は無いだろう。西村、気にすんなよ。

 遥は今ちょっと体調悪くてブルーなんだよ」

「はい、ごめんなさい…」

俺は遥を見て、ちょっと怖い顔をする。

遥はアヒル口になってちょっと拗ねた様な表情を見せたが、

「…いえ、あたしこそ言い過ぎたわ。ごめんね西村さん」

と素直に謝った。

「いえ!とんでもないです。私こそすみませんでした」」

慌ててお辞儀する西村。

ふう、焦ったぜ…それにしても良く遥が譲ってくれたな。

俺は思わず遥の頭を撫で撫でしてしまった。

「わああ…」「何か良い雰囲気よね…」

女子生徒から妙な呟きが漏れる。

「あなた達、そんな事より佐藤さんの手当てしなくていいの!?」

かあっと赤くなった遥が一喝する。

「あ!忘れてた!」「濡れタオル濡れタオル!」「愛子大丈夫!?」

「私もうダメかもしんない…」佐藤のボケっぷりに噴出す俺と遥。

そして、あたふたおろおろと騒ぎ出す女子一同。

仕方ねえな…


「遥」「ん。あたしは彼女の血を拭くから、アンタは包帯とか用意して」「りょーかい」

遥が洗面台でお湯を出して洗面器にため、タオルをお湯に付けて湿らす。

俺はその間に戸棚からガーゼと包帯、消毒薬等を取り出す。

「どの辺りから出血してるの…ん、ここね。もう殆ど止まってはいるわね。ちょっと我慢してね」

濡れタオルで傷口と流れた血を拭う遥。そろそろだな。

「遥。マキ○ン持って来たからちょっと退いてくれ。

 佐藤ちゃん、ちょっと染みるぞ」

「は〜い、ショウ先輩」

すっと退く遥と代わり、傷口周辺にタオルを当ててマ○キロンを吹き付ける。

「痛い!!」叫ぶ佐藤。

「え、そんなに染みたか?」

「違います、誰かが私の背中抓ったんです!」

佐藤が慌てて答える。

「は〜い、私見てましたぁ。抓ったのは亜里沙でぇす!」

ポニーテールの娘がしれっとチクる。

「西村、なんでそんな意地悪するんだ?」

「だって…愛子が…」しどろもどろになる亜里沙。

「愛子が、ショウ先輩に優しくしてもらってるからヤキモチ焼いたんでしょ?」

ポニーの娘がニヤニヤしながら答えた。

「ちょっと!止めてよ!」

亜里沙が真っ赤になりながら大声を上げる。

その時、体育教師に連れられて田中先生が帰ってきた。

いつの間にか佐藤の頭には綺麗に包帯が巻かれている。

「あら、ありがとう。誰がやってくれたの?」

「若宮先輩とショウ先輩です!」

佐藤が元気一杯に答える。

「そうか、二人ともありがとう」

体育教師が俺たちに礼を言い、

「ほら、みんな行くぞ!田中先生、佐藤をお願いします」

と言って保健室を出て行く。

亜里沙が保健室を出る時に振り返り、

「ショウ先輩、放課後、待ってますから」

と俺を熱の篭った目でじっと見ながら言った。


少ししてから俺と遥は田中先生に礼を言って保健室を出る。

まだ次の授業まで間が有るな…

「ねえ、ショウ。さっき何て言おうとしたの?」

遥が悪戯っぽい表情で聞いてくる。


…とてもじゃないが、今なんて言えねぇよ…


「ああ、また今度で良いや。ちゃんとしてからな」

「ふ〜ん、まあ良いわ」

ちょっと怒ったようになる遥。

「あ!今夜ってアンタバイト有るのよね?」

「ああ、ガススタのバイトだ」

「そうよね…明日はどう?」

「ああ、明日は大丈夫だけど」

ぱっと俺の前に回りこんで、

「ねえ、明日ウチにご飯食べに来なさいよ。

 ママが昨日の事を凄く気にして、お詫びしたいって」

「そんなの、気にしないでくれって言っといて。

 でも、せっかくだからご馳走になりに行くよ」

にぱっと笑う遥。

「じゃあ、私も何か作ってあげるから!リクエストは?」

「そうだな。じゃあ、シチューが良いな」

「ん、期待しなさいよ!じゃあ、あたし教室戻るから。放課後ね!」

くるっと振り返り駆けて行く遥。

さて、俺は西村になんて返事をするか考えないとな。


泣かせないようにするにはどうすりゃ良いかな…


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