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懸想文?

ジリリリリリリリ……


目覚ましが鳴っている。うぜぇ。

昨夜寝たのは三時半、バイトの交代要員が休んだから俺が残業した為だ。

新聞配達が休みだったのが救いだぜ。


「ふうわああああああ…」


大あくびをしながら体を起こす。

やべぇ、頭痛ぇな。


「ショウ!起きなさいよ!!」

ドンドンドン!


(はるか)のヤツか……

普通はノックしてから声掛けるモンじゃないのか?

「バカショウ!遅刻するわよ!!」

「解ったって。先に行ってろよ」

「いいから開けなさい!開けないとドア開けるわよ!」

意味不明だこのバカ女。

ガチャ!

何ぃ!カギ開いたぁ!?


「何よこれ!汚ったないなあ!先月掃除したばかりなのに!」

「何でお前が俺の部屋の合鍵持ってんだ!?」

「先月掃除したげた時に作ったのっ!」

「おい、それ犯罪だぞお前」

「良いから!早く顔洗ってこれ食べなさいよね!」

可愛いハンカチに、大きなおにぎりが三つ。

「…サンキュ」

「早くしなさいよ!」

「って、よく見たらまだ六時半じゃんか!

 そういや目覚まし鳴って直ぐ起きたんだからまだ時間的には余裕の筈だぞおい!」

「あたしが部活に間に合わないじゃない!」

遥は弓道部だ。コイツの袴姿は忌々しいが素敵に凛々しい。

くっきりした目鼻立ちにサラッとしたロングヘア、均整の取れたプロポーション。

テストでは学年十位から外れた事無く、先生方からの覚えも目出度い。

男女問わず学校中から注目の的で、特に下級生女子からの人気が高い。

まあ俗に言う完全無欠の美少女ってやつだ。


俺に対して以外は、な。


「ほら!さっさと漕ぐ!」

俺の自転車の後ろできゃあきゃあ騒ぐ遥。

正直、鬱陶しい事この上ない。

俺達の通うとある地方都市の高校は約二十キロほど離れている。

普通の生徒は近場の駅から電車に乗るのだが、俺は節約の為に自転車で通っている。

まあたまに寝坊したときなんかは原付で学校の近くまで行く事も有るけどな。

しかし先月、珍しくとんでも無い風邪ひき込んで一週間学校休んで以来、

幼馴染の遥が毎朝起こしに来るようになっちまった。

遥の家と俺の家は元々お袋同士が親友で、親父達も仲良くなり、

俺達の住んでいた家の近くに持ち家を建てた遥達が引っ越してきた。

兄妹の様に幼い頃から遊んでた俺達も今は高校生。早いもんだ。

昨年の夏、悪友連とツーリングに出る俺を残して長野へ旅行に行った俺以外の家族が

居眠り運転のトラックに突っ込まれてで全滅しちまった事だけが変化点か。

住んでた家は借家だったから、俺一人じゃ勿体無いんで六畳と四畳半に

バストイレキッチンの現在(いま)の部屋に越した。

六畳は前の家からの荷物で一杯になってる、が。


ようやく学校の近くの駅前だ。遥はここで降りて、彼氏の到着を待つ。

アホ臭いったりゃありゃしねえ。

「ねえ、今夜ご飯食べに来れるの?」

「いや、今夜はガススタのバイトが有るから。

 おばさんによろしく言っといてくれ」

「ちゃんと何か食べなさいよ!」

俺はようやく静かになった事にほっとして学校へ向かう。

……まだHR(ホームルーム)まで一時間有るよ。

とりあえず教室で寝るか。

自転車を停めて校舎へ入る。

「よう、早いな」

野球部の深見(ふかみ)が声掛けてくる。

「おう、おはよ。朝練か?」

「ああ、お前は帰宅部なのに早いないつも」

「ムダだよな我ながら」

思わず苦笑する俺。

「お前もなんかやれば良いのに。つっても、二年の夏からじゃな」

「ま、俺は食い扶持稼ぐのに精一杯さ」

「……そうだな、頑張れよ」「ああ。サンキュ」

いいヤツだよな、アイツ。


ガラと戸を開けて教室に入る。

「うーす」「おはよー」

声を掛けてくるヤツらに適当に返しながら窓際一番裏手の俺の席に着く。

と、和泉(いずみ)がなんか声掛けてきた。

「ねえ、ショウくんってさあ、本当に遥と付き合ってないの?」

またそれかよ。

「俺は完全無欠にフリーだし、遥は彼氏居るじゃんか」

「でも、なんかいつも一緒だし〜」

「だーかーらー、俺のお袋とアイツのお袋が親友だったヨシミで俺が世話になってんの」

「ふ〜ん、そうなんだ」

「ああ、そうなんです」

ととと、と去って行く和泉。

多分アイツは遥の彼氏の三年B組剣道部主将の芳野さんに片思いしてんだろうな。

んで、俺と遥がいつも一緒に居るのをネタにしてなんとかしようと考えてるんじゃないのか?

しかし今時貴重なあの和風カップルの牙城を崩すのは大変だぞ和泉よ。


って、なんか俺の思考回路が汚れて来てる気がするわ…

とりあえず寝るか。


……………。


うおお、もう昼か。

授業は何受けたっけな?ま、気にしない気にしない。

さて、パン買いに行くべ。

「ショウ!居る?」

ん?誰かと思えば遥だよ。

「ほらこれ。」

お、弁当。

「なあ遥、おばさんに悪いから良いって言っといてくれよ」

「なに遠慮してんのよ。それにそれはあたしのだからね!」

「あ、そりゃ失礼。って、お前はどうすんだよ?」

「私は芳野先輩と学食で食べるの」

「じゃあ、金払うよ」

「バカねぇ。それじゃ節約の意味ないでしょ。良いから食べなさいよ」

「ああ、じゃあありがたく頂くわ。サンキュ」

って、もう居ねえや。


っと放課後か。バイトは七時からだから帰ってちょっと休めるな。

とっとと帰るかな。

下駄箱から靴出して、と。

ん?なんだ?なんか落ちてきたぞ。

ってなんだこの手紙は?

「なになに、愛しのショウ様へ、って、ラヴレターじゃんこれ!!」

「をいっ!なんで(おまえ)がここに居て俺の下駄箱からヒラっと落ちた手紙を

 俺より先に拾ってタイトル音読してんだよっ!?」

「誰に状況説明してんのよ。って、マジこれ!?早く開けなさいよバカショウ!!」

「だあっ!!なんでお前の前で読まなにゃならんのだ!とっとと部活行け!」

「なによ〜照れちゃって〜。ショウに惚れるなんてドコの物好きかしらぁ?」

「あ、芳野先輩」

「え!どこどこ!?」

ダッシュ!!

「ねえどこ?三年は今日進路相談って、バカショウ逃げたわねぇっ!!」

遥の喚き声が遠くなる。俺は自転車置き場まで辿り着いてから封を開けた。


「愛しのショウ様へ

 いきなりこんな手紙を出してごめんなさい。

 私は一年A組のの西村 亜里沙と申します……」


西村亜里沙、か……ん〜、誰だっしょ?

俺の記憶には無いなあ…?しかし、これまた古風なラヴレターだね。

明日の放課後、美術部室でお待ちしてます、ねえ?

……誰かの仕込みか?

それとも生意気な俺を三年が〆る積りか?

いや、もうこの時期にそれは無いな。内申が気になるシーズンだからな。


悩んでも仕方ないな、何はともあれ明日の放課後、現場で判断だ。



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