ケータイチェック 1
ヒロキとカオルの物語
--カオルside--
ヒロキの携帯電話が、鳴りやまない。
ヒロキは、生徒会のときは私用電話をしない。相手の子たちもわかっているから、下校時刻を過ぎると一斉に電話がかかってくる。
学校から地下鉄の駅まで歩いて15分、ヒロキの携帯は鳴りっぱなしだ。
「……うん。ああ、そうなんだ。大変だったね、大丈夫? ……そっか。……うん。……大丈夫だよ。心変わりは、してないと思うよ。……うん。……そしたら明日、ゆっくり話、聞こうか。……じゃぁ、お昼休みにね」
女の子の恋愛話か。
切ったそばから、すぐにヒロキの携帯が震える。
ヒロキはそれに出る。
「恭子ちゃん、どうしたの? ……うん。……ああ、決心ついたんだね。……いいと思うよ。あっちも、恭子ちゃんを好きだよ。……見てたら、わかるよ。大丈夫。がんばってね。いい報告待ってるよ。はーい」
今度は携帯のイルミネーションが点滅する。メールだ。
ヒロキはそれを見て、げっ、と呟く。
慌てて電話をかける。
「お前なにしてんの!? 浮気って、バカ!? クラスの子に見られたんでしょ? いくら手ぇ回したって、噂止められないよ。隠せるわけないじゃん。……そんなこと言われても、無理。……え、やりなおす気、あるの? はぁ、お前、この前も言ってたじゃん。もう諦めた方がいいよ。……無理。絶対、無理。隠せない。……あ、そう。じゃぁとにかく謝って。今からでもカノジョんち行って、玄関先で土下座だよ、土下座。携帯壊されるくらい覚悟しなよ。じゃぁね」
切った途端、次が来る。
そんな調子で、ヒロキは私と帰っていたってほとんど私と話さない。
話すのは、電波の入らない地下鉄に乗ってる間、10分くらい。
話す内容だって、生徒会のこととか、クラスのこととか、当たり障りのないことばかり。
地下鉄を降りて、家まで歩いて20分。その間も、ヒロキの携帯は鳴り続ける。
なんなんだ、こいつは。
恋愛の神様なんて言われて、ヒロキの番号とアドレスは学校中に広まっている。携帯の鳴り方は、中学の頃より、はるかに頻繁になった。
生徒会が終わったら、「カオル帰れる? 一緒帰ろ」ってヒロキは言うけど。
一緒に帰る意味、ないよね?
いっそひとりで帰った方が、ヒロキのあれこれを聞かなくて良くて、楽かも。
そう思ってるのに、ずるずるこのままだ。
いい加減、もうやめようかな。こんなチャラ男、見捨てようかな。
そんなことを思っていた矢先だ。
3年生の送り出し会で急遽空いた枠を、ヒロキが強引に話をつけて埋めた。
その見返りを要求されて、その答えが。
―――合コンでどう? 聖蘭の女子。……わかった、セッティングする。
ヒロキのさらりとした答えに愕然とする。
ヒロキの人脈って、聖蘭の女子までつながってるのか。
しかもセッティングって。聖蘭の女子、何人知ってるの。
合コンに行って、さらに連絡先が増えるわけ。
「ヒロキなんか、キライ」
思わず呟いた。
こっちがきちんと段取り踏んで送り出し会を成功させようとしてたのに、ヒロキが段取りをすっとばして強引に話をつけた。
そのやりかたが許せないのはもちろんだけど。
合コンの話にカッとなったのも確かだ。つい私情が入った。
「ヒロキなんか最低。大っ嫌い。許せない。帰る」
呼び止めるマコちゃんを無視して帰った。




